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第138話 マゴと名乗るその男②

 マゴ外務委員は俺達二人に対して一方的に話を進める。時には情緒的に、時には大袈裟に。つまるところ彼が言いたいのは『農務交流・視察中止』ということだけなのだが、なかなか話が終わらない。


「マゴ外務委員さん、ちょっと質問をしてもいいかしら?」

 業を煮やしたナナセさんが彼の話の流れを止めた。


「――。なんですかな、ナナセさん?」


「農務交流や視察が中止になる件は了解したわ。とりあえず団長とゴバルドーさんに会わせてもらえないかしら?」


「あぁ、そうですね……。少し話し込んでしまいました。ちょっとここで待っててくださいね。お二人の様子を見てきますので――」

 あれだけ捲し立てるように話していたマゴ外務委員はいきなり一言そう言うとそそくさと部屋を出ていった。


 ***


「何よあのマゴとかいう男――。一方的に話続けたのかと思うといきなり表情を変えて飛び出しちゃって。ねぇ、ユキオス君本当にあの男は団長とゴバルドーさんを連れてくると思う?」

 二人っきりになった途端、ナナセさんは勢いよく俺に向かって話しかけてくる。おそらく話したくてもマゴ外務委員の剣幕に打ち勝つ勇気がなかったのだろう。その気持ちはよくわかる。


「とりあえずこの部屋で待つしかないですね。俺は理事官(団長)とゴバルドーさんがなんだかとても心配です」


「どうして?」


「だっていきなり風呂に入るっておかしくないですか――。ただでさえここは独裁国家パルメクル。さすがに油断しすぎでしょう」


「理事官とゴバルドーさんは案外ノリがいいから……。風呂にどうぞどうぞといわれてついつい入りに行ったんじゃないのかな」

 そうナナセさんが言った時だった。


 ――ガチャ。ガチャ。

 ドアノブがリズミカルに動きどこかで見たことがあるような男が入ってきた。

 か、彼はまさか……。


「もももももしかてしてあなたはコフブさん!?」


「えぇ、ユキオスさんお久しぶりです。あとあまり声を大きくしないでください。奴らに気づかれます。それと落ち着いて喋ってください」

 そう言うなりコフブさんは部屋のカギをゆっくりと閉めた。


 ***


 コフブさん。彼と最後に会ったのはドミルセーエフ市を去る間際である。パルメクルについて調べてると言ってたがまさか潜入までしてるとは――。驚きすぎて食べたものが胃から出てきそうだ。


「ドミルセーエフ市以来ですね。まさか潜入調査をしているとは……」


「そのことはここでは内緒にしといてください。ここでの身分はルルコニスタイン交流館二級交流員ですから。名前はコフーブという設定です」

 コフブもコフーブも同じような――。まぁ、そのことは口に出すまい。


「お二人は知り合い?」


「えぇ、ナナセさん。これまでの経緯を話せば長くなりますが……」


「ユキオスさん聞いてください。マゴ外務委員は何か企んでます。おそらく良からぬことを。とりあえずあなた方より先に交流館に着いた二人の身に何かが起きたことは間違いないです」

 真剣な顔でそう言うコフーブさん。パルメクル北部で勃発した兵乱へいらんといいこれは一筋縄ではいかそうだぞ。果たして俺達は無事に魔界国家に帰ることができるのだろうか。


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