第131話 貨物エリアへと行くその前に
いくつもの階段を降りながら下へ下へと向かう。セニス船長とカルイス少佐は最下層にある貨物エリアにいるらしいが――。とりあえずこの場を取り仕切っている少佐に俺達の目的を説明して説得させる。そして一刻も早くルルコニスタイン港に行かないといけない旨を説明して使節団メンバーを解放してもらおう。もちろんそのために代わりの船が必要になるかもしれない。その事もあの海軍将校に直談判してみよう。そう素早く頭の中で段取りした俺は貨物エリアへと急いだ。
下へ降りる度になんだか暗くなっていくような気がする。貨物エリアには一回しか行ってはないが、体が覚えているらしくスラスラと目的地へと向かうことができた。早歩きで向かったために少々疲れたが。
「ふぅ――」
鉄製の大扉を開ける前に深呼吸。この扉の先にきっとあの海軍将校がいる。よし、アイツにハッキリと言ってやるぞと思った時だった。
「ユキオスさん待ってくれ」
どこかで聞いた声に俺は呼び止められる。おや、と思い後ろを振り向くとそこにはゼガニカさんがいた。
「ゼガニカさんどうしたんですか?」
「実は車が気になりまして。一応、港湾税関を通してはいるんだけど没収されたら困るものでね」
「そう言うことなら……。一緒に行きますか?」
「もちろんです。どうせユキオスさんもあの中に用事があるんでしょう」
そう言いながらゼガニカさんはニヤリと笑った。
***
――ギギギギ……。
大扉をかなり慎重にゆっくりと開けたつもりが予想以上に大きな音が出てしまい辺り一面に鳴り響く。
この音があの二人にも聞こえたのではと思ったのだが、広い貨物エリアということが幸いしてかどうやら聞こえてはないようだ。
「ユキオスさん――。あれを見てください」
ゼガニカさんは貨物エリア内に入るなりある一点を指差しながら俺にそう言った。そしてその先には俺が会わなければならないあの海軍将校がセニス船長と何やら深々と話し込んでいた。
「ユキオスさん、あなたの農場スタッフとしての力をあの将校に見せてやってください。私は陰ながら応援してます」
「えっ……。あぁ、了解。任せといて」
ゼガニカさんが言った農場スタッフの件はイマイチよく分からなかったが、とりあえず俺は話をつけるためにあの二人の元へと向かった。