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第130話 やるときは努力するさ

 勢いに任せて操舵室へと続く階段を上る。もちろんあの海軍将校に俺の想いをぶつけるためだ。農務交流に向かう俺達とこの船の事情なんて関係ない。だからこそこれからやるべきことは一つだ。


「失礼します!」

 ドアを開けて大声でそう叫ぶ。室内には相変わらずさっきいた戦闘員がいるが肝心の海軍将校はいない。いるのは一ヵ所に集められている船員達と睨みをきかしている戦闘員達だけである。


「カルイス少佐殿はどちらに?」


「少佐殿は船長を連れて貨物エリアへ向かったが……。それよりもなぜ貴様は自由に動き回ってるんだ!」

 魔式ライフル銃を俺に向けて戦闘員は威嚇してくる。しかし、覚悟を決めた俺にはそんなものは通用しない。


「俺はこう見えて一応魔王府の超上級外交官だ。これ以上の挑発は外交問題に発展する可能性があるぞ!」


「な、なに!?」

 半分ハッタリなのだが、話している戦闘員はどうやら俺の言い分を信じたらしくてビクビクしている。ここからが俺の本領発揮だ。


「俺はこう見えて顔が広い。もちろんパルメクルにもだ。この件を君の上司に言って問題にすることもできる!」


「い、いや――。そ、それは……。俺達給料も安くて――」

 困り果てた表情で戦闘員はそう言う。俺達のやりとりを見ていた他の戦闘員達もどうやら緊張しているらしく彼らの唇が震えていた。よし、ここで畳み掛けてみよう。自称、得意の話術を駆使して。


「君はモンジ・ポンジ・遵字左武郎じゅんじさぶろうを知ってるか?」


「モンジ・ポンジ・遵字左武郎……。ハッ!?」


「えっ、いるの?」

 その名前を知った瞬間、戦闘員の顔が青ざめてくる。いや、実は適当に言ったのにまさかそんな名前の人がパルメクルにいるなんて――。驚きの的中率である。むしろこっちの方が驚きである。


「じ、遵字左武郎さんのお知り合いなのですか?」


「ああぁ、広い意味で地元の先輩的なマブダチだ」


「それは失礼しました。これまでのご無礼を御許し下さい。遵字さんには戦闘員養成所で大変お世話になりました。ここにいる皆もみな一様に同じ気持ちです。うちの上司と比べるとそれはもう……」

 悲しげな表情を浮かべながら戦闘員はそう言う。おそらく彼らは彼らでいろんな悩みを抱えているのだろう。その気持ちは痛いくらいに理解できる。


「現場のもんはいつだってそうです。だからこそお互い守るべき者のために努力していきましょう」


「えぇ、そうですね。あなたに会えて良かった。ぜひ少佐殿と船長の元へ向かって下さい!」


「ありがとうございます。では――」

 得意の話術を駆使して操舵室を占拠している戦闘員と仲良くなった後、俺は貨物エリアへと向かった。


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