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第123話 会話

 自室を出て船内通路を進んだ先に俺達が目指しているティーラウンジがある。ここを一言でいえば船に乗り合わせた人達の憩いの場といったところか。ラウンジ内にはバーカウンターとイス、そして二つのソファーが置かれておりそれらがくつろぎの空間を演出していた。


「あら、誰もいないのね。それにここはセルフサービスかぁ。あなたはコーヒーでいいかしら?」


「えぇ、よろしくお願いします」

 イスに座って一呼吸ついた後、俺はそう言った。今思うと今日は移動ばかりで本当に疲れた。明日からはもっと疲れるのだろうと思うとなんだかとても気が重くなってくるが……。


「やはり大型船ともなると揺れが気にならないわね。意外と快適で私ビックリしちゃったわ」


「ナナセさんはあまり船に乗ったことがないんですか?」


「今日で五回目よ。と言っても過去の四回はまだ私が小さすぎて覚えてないわ」

 彼女はコーヒーを俺の元に置きながらそう言う。あまり音を立てないコーヒーカップの置き方から分かるのはナナセさんの思いやりのハートだ。その然り気無い優しさが俺の身に染みてくる。


「ところで……。船長は夕食はみんなで食べようって言ってたけどこの船そんなに人が乗ってないのかしら?」


「そう言えば――。使節団以外の乗船客を見てないような気がしますね」


「なんか怪しくないかしら?」


「えっ!?」

 彼女にそう言われてハッとなる。たしかにそうだ。いくら目的地がパルメクル領内だと言ってもそこに行く人が俺達だけということがあるのだろうか。


「それにこの船、変なものを積んでたわよね。あなた見たかしら?」


「変なもの――。いや、俺は見てないです」


「そう、なら教えてあげる。黒い目隠しをされてたけどあの特徴的な形は恐らく新型のムルニシコジス式多角運行システムのマッチングポッチング式連結補充用部品よ……」


「ムルニシコジス――。マッチングポッチング式連結補充用部品――。はい、それはなんですかそれ?」

 謎の専門用語のオンパレードに首を傾げる俺。いったいそれはなんなんだ……。


「簡単に言うと飛翔筒ロケット発射に使える部品よ。本来は民生用の部品なんだけど軍事転用が容易なの」


「えっ――。そんなものをパルメクルに輸出してもいいんですか!?」

 飲み干したコーヒーを二度見するくらいの緊張が俺に走る。これは危険な匂いがするぞ……!


「一応、民生品だから問題ないけど……。ちなみにこの船の目的地のルルコヌススタイン港にはパルメクル軍の物流拠点があるからその部品はそこに運ばれるのかも知れないわね」


「そ、そのあとは……」


「最終的にどこに運ばれるのかまではわからないわ。そう言えばこれから行く海域には謎の島があるみたいだし――」


「謎の島にこの船の積み荷ですか。なんか想像するだけで怖くなってきますね……」


「まぁ私達には関係ないわ。今話したことは農務交流使節団とは無関係ですもの。ねぇもっと明るい話をしましょうよ!」

 さっきまでとはガラリと変わって優しげな微笑みを俺に見せるナナセさん。そんな彼女の顔を見てると彼女のことが好きになってしまいそうな俺がここにいた。


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