第114話 使節団集結①
隊長から農務交流使節団参加の辞令を受けてから一週間が立った。平和な時間ほど早く過ぎ去るというのはまさにこの事なのだろう。この間、農場での作業をものすごく真面目にこなしていたのだが、数日前の事がなんだかとても懐かしく感じてしまう。
――トントントン……。
「失礼します!」
隊長執務室のドアを開けるとすでに数人の参加者がソファーに腰掛けていた。
「あれ、まだ集合時間より三十分も早いのにもう来てたんですか」
「フフッ……。俺達はは気が早くてね。とりあえず少し早い自己紹介といこう。私がこの使節団団長のゼブレムだ。以後よろしく頼む」
俺の顔を見たなり、ソファーに腰掛けていた男性がムクッと立ち上がってきてそう言ってきた。見たところ年齢は三十代後半くらいだろうか。オシャレな眼鏡がとても印象的な男性だ。その長身と相まって第一印象はとてもスマートな印象をいだかせている。
「初めまして理事官。私が今回の使節団に同行するユキオスと言います」
「キミの活躍は聞いている。私は普段、魔王府首都警察総本部庁広域警戒課に勤めていてね。キミほどの人材なら今すぐにでもうちで勤務してもらいたいくらいだよ」
優しく微笑みながらゼブレム理事官はそう言った。しかし、警察からもこの使節団に参加するということは――。これはただ事ではないのかもしれない。
「ちなみに私の横にいるのは同じく今回の使節団に参加するゼガニカ君だ。彼は機械工学のスペシャリストでね。その経歴が買われて今回の使節団に参加することになった」
「ゼガニカです。よろしく」
理事官の紹介に促されるようになりながらゼガニカと名乗る男がそう言った。彼は如何にも油断できないような男だ。彼の鋭い視線を見るだけでその技量の高さが分かる。
「農場代表のユキオスです。よろしくお願いします」
「さて、残すはあと二人だが――。来るのはもう少し後になるだろう。それまでここで情報交換といこうではないか。幸いにも隊長がコーヒーを用意してくれている」
理事官はにこやかな笑みを浮かべながらそう言った。そう言えば今のところ隊長の姿が見えない。その事が少し気になった。
「理事官、ゴルヌス隊長はどこに行ったのですか――。ここは隊長執務室なのに隊長の姿が見えないような……」
「隊長は今、武器庫に行っている。どうやらキミに渡したいものがあるそうだ」
「そうですか……」
隊長が俺に渡したいものがとても気になるが今はとりあえず待つしかない。そう考え直すと俺は理事官らに向かい合うようにしてソファーの上に腰掛けた。