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農場外伝 就職試験~マルティネスさんの視点編~

「ここか……」

 町衣紋の意思を受け継いだと話す男から農場幹部スタッフ採用試験の詳細を聞いてから早四日。俺は今、魔界大根農場宿舎の入り口に立っている。正直、今のハートはドキドキでいっぱいである。ユキオスと名乗る男が言うには筆記試験などはなく隊長面接試験だけだというが――。


「こんにちは……!」

 正面玄関を開けて中へと入る。面接会場である隊長執務室に案内する人がいると思っていたのだが、意外にもそこには誰もいなかった。


「誰かいませんか……」


「あんた誰だい!?」

 不意に後ろから女の人の声が聞こえる。とても意思の強さを感じさせる声だ。まるで闇夜に燦然と輝く懐中電灯のような。

 振り向くとそこにはたくさんのネギをもった中年の女性がいた。


「あっ――。今日、隊長面接を受けに来たマルティネスと言います。隊長執務室がどこにあるかを教えてもらいたいのですが……」


「マルティネス……。あぁ、ユキオスからあんたの事は聞いてるよ。私は農場総務部統括のゴー・レムだ。もうあんたは正規採用みたいなもんだから肩に力を抜いて踏ん張ってきな!」


「それは嬉しいですね。ありがとうございます」

 一見すると強面のおばさんなのだが、話してみるとそうでもないようだ。そんな新しい発見を胸に秘めて俺はゴー・レムさんに教えられた場所へと向かった。


 ***


 ――トントントン……。


「入れ」


「失礼します!」

 古びたドアノブをガチャリと開けて中へと入る。室内に入った途端、芳醇な珈琲の薫りが俺の五感と第六感を刺激する。ソバスゴズ座の運命の元に生まれた俺にとってこの芳醇な薫りはとても刺激的なものがあった。


「キミがマルティネス君だね?」


「そうです。町衣紋さんの推薦で貴社の採用試験を受けに来ました。よろしくお願いします」

 そう言った後、俺はペコリと頭を下げた。隊長の第一印象を一言で表現すると『仕事の出来るナイスガイ』といったところか。どこか軽い男を気取ってはいるが実際はかなりの上級者なのだろう。


「まずは座りたまえ。話を聞く準備はいいかな――。私がこの農場の全てを統括しているゴルヌスだ。皆からは隊長と呼ばれている。ここが魔王軍の直轄農場だということは知ってるかな?」


「はい、知っています」


「なら、話は早い。うちで採用されるというのは魔王軍の一員になるということだ。だから状況によっては農場以外の仕事にもついてもらうかもしれん。それでもいいかな?」


「はい、竹槍や竹を使った道具の扱いには自信があります。この特技を生かして、幹部スタッフとして十分活躍できると思います」


「魔界大根のことは知ってかな?」


「もちろんです。あれほどおいしいものはありません!」


「よし、キミもう採用ね。服のサイズを測ろうか!」


「――!?」

 えっもう採用なの……。もっといろいろと聞いてよ、こっちは一晩中模擬面接の練習をしたんだぜと心の奥で叫んだのだが、採用なのはこちらとしてもとても嬉しいが――。


「よ、よろしいのですか?」


「キミが魔界伝書鳩で送ってきた履歴書と職務経歴書はしっかり読ませてもらった。そして、こうして会った瞬間、キミの活躍を確信したのだよ。ものすごく期待してるぞ!」


「嬉しいお言葉ありがとうございます――。しっかり職務に励みます! ソバスゴズ座の運命に賭けて!」


「ん……。ソバスゴズ座とは何かな?」


「あっ――。気にしないで下さい。こちらの設定です」


 そして、この日から俺の新たなる戦いは始まった。


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