第112話 三者会合
俺がこの隊長執務室に来てからどのくらいの時がたったのだろうか。とりあえずラ・ハルヤパスに向かってからここに帰ってくるまでに起きたことは事細かく二人に話したつもりではある。
「じゃあその廃アパートメントに残されていた木箱の中に何が入ってるのかは不明なんだな?」
「はい、隊長。現時点では確認のしようがありません。しかし学長の手の者に解析を依頼しているので今後恐らく何らかの報告がこの農場に上がると思われます」
「うむ……」
そう呟いた後、隊長は三杯目のコーヒーを美味しく召し上がった。その目はどこか遠くを睨んでいる。
「しっかし隊長、ユキオスの活躍でニコライズを拘束することができたんだ。これはかなりの戦果だろう!」
ボギャニダニエフさんは相変わらずの大声で俺達にそう言う。その大声はある意味さすがである。
「うむ……。それはユキオスの大殊勲だが――。しかし町衣紋が当分の間入院というのはかなり痛いな」
「えぇ、それは間違いないです」
この時期に農場大幹部の一人がいないというのは正直とても辛い。やはりここは町衣紋さんが言ってた事を隊長に提案するしかないか……!
「隊長、町衣紋さんが入院する前に同窓会の場にてある人物をリクルートしたそうです。名はマルティネスと言いその者はなんと竹槍の名手だそうです。彼を農場スタッフとして正規採用してはどうでしょうか?」
「それは名案だな。ここは一つその者に連絡を取る必要があるな」
「はい、連絡先は把握しているのでこちらからオファーをしてみます」
「うむ、頼むぞ。今は一人でもいいから新しい人材がほしい。それと先ほどではあるがドミルセーエフ市のパトリキウスよりパルメクルに関する新情報が入ってきてな。どうやら大統領府内で何らかの政変があったらしい」
「政変――。ですか?」
「あぁ、そうだ。まだ詳細は判明してはないが、どうやら大統領府内の穏健派が一斉に逮捕されたらしい。パルメクル及びロバートは今後何か軍事的行動に出るかもしれんぞ」
隊長はそう言った後、コーヒーをガブリと飲んだ。相変わらずその瞳はどこか遠くを睨んでいる。
「隊長、我々から何か行動を起こすことはできないのでしょうか。このまま奴等の出方を指をこまねいて見ているわけには――!」
「今は堪えるのだユキオス。それに実は俺に良い考えがある」
「良い考えですか……!」
「そうだ。今から一週間後、我が魔王府の農務交流使節団がパルメクルに農業視察に向かう。ユキオス君ならこの視察の真意が分かるはずだ……!」
「隊長……。それってまさか――!」
「そうだ、そのまさかだ。キミの出番だ!」
この瞬間、隊長は不適な笑みを浮かべた。