第108話 ニコライズを追って
消えたニコライズを追って俺はアパートメントの階段を激しく降りる。恐らく奴はまだ遠くには行ってないはずだ。ロバートさんの右腕であるニコライズをここで倒さなければ……。奴等が何を考えこれから何をするのかはまだ正確には判明していない。でも、だからこそここで決着を着けなければならなかった。
廃アパートメントの正面エントランスを勢いよく開けて外へと躍り出る。そこは月明かりのみが微かに光る世界。さっきまであったニコライズの気配はなくなっていた。
「はぁ……。はぁ……。どこだニコライズ!」
息切れして乱れた呼吸の中、俺はそう叫ぶ。しかし応答はもちろんない。またしても奴を取り逃がしてしまったのか。そんな言葉が脳裏を過る。
――ガサッ……。ガサッ……!
その時、正面エントランスから見て左側の雑木林に動きがある。この気配は――。まさか……!
「誰だ!?」
そう言いながら俺は強化型懐中電灯の光を雑木林に向ける。そこには――。
「――。なんだ鳥か……」
恐らくカラスだろう。黒く光るその鳥はこちらをギロリと睨み付けてきた後、バサバサと飛び去って行った。
「なんだよ、驚かせやがって……」
そう愚痴を言った後、再び歩き出そうとした時だった。
トットットッ……。
急に物陰から飛び出してきた影が俺に襲い掛かってきた。月明かりに照らされたその手には大型ナイフを持っている。そのナイフを使った一太刀を俺は強化型懐中電灯を使って受け流した。
この攻撃方法。間違いない、ニコライズだ……!
「ハッハッハッ――。腕を上げたなユキオス。ダークユキオスを倒せただけのことはある!」
「何を今さら……。逃がしはしないぞニコライズ。お前らの企みがどんなものかは知らない。でも、俺はそれを阻止しなければならない!」
「その言葉、ロバート殿が聞いたら泣くぞ。しかしもう計画は動き出している。もうすぐ新兵器も開発するしな……!」
「新兵器だと――。そうはさせん!」
その瞬間、俺は奴がもつ大型ナイフを強化型懐中電灯を使ってはらい落とし、気合いを込めた頭突きをニコライズの腹めがけて食らわす。
「ぐぅぅぅ……。見事……!」
その瞬間、ニコライズはその場に倒れ伏した。