第9話 農業にて②~シリアスな雰囲気編~
「ユキオス君。ラストグレードサンダーデーモンの件ご苦労であったな。あとラブレター出してくれてありがとうな」
しみじみとした口調で隊長はそう言った。テーブルを見ると空のボトルが二本。どうやら一人で晩酌をしていたようだ。あれ、俺少しお邪魔だったかな?
「へい! ユキオス。B定食持ってきたよ。さっさと食べな!」
そう言いながら優しいゴーレムさんが定食を持ってきた。テーブルには大盛りのご飯と炒飯……。くそ、炭水化物しかねぇ……。あぁ、見てるだけでお腹いっぱいになってきた。
「ユキオス君食べながらでいいから私の話をきいてくれ。君は今、私に聞きたいことがあるだろう。どうだ? 違うか?」
「えっ……」
隊長の核心をついた問いかけに俺はぎょっとなった。もしかして隊長は魔界大根横流し疑惑の件を知ってるのではないのか? よし、聞いてみよう。それが一番手っ取り早い」
俺は心の中でそう素早く段取りをした。
「さすが隊長。よくわかってますね。実は魔界大根の出荷現場を調査したいのです。これにはラストグレードサンダーデーモンの反乱も関係してます」
「魔界大根の出荷状況を?」
「はい、隊長。実は魔界大根が横流しされてるかもしれないのです」
「横流しか。もしそれが本当ならそれは由々しき事態だな。司法局にでも知られたら一大事だ」
隊長はもう一本ボトルを開けながらつぶやいた。そしてハードボイルドな雰囲気で虚空を見つめた。その時、俺は隊長が抱えているものの大きさを感じた。
「ユキオス君。私は君にとても期待している。しかしこの件の黒幕は大きいぞ。出荷作業は我々の管轄ではなく魔王軍第109輸送大隊の管理下にある。もし彼らが何か不正をしているとすればそれは我々魔王軍の威信に関わってくる。ことは慎重を要する。それでもやるのか?」
「もちろんです! 私にやらせてください! きっとこの件を解決してみせましょう!」
その時、俺は張り切りながらそう言った。テーブルの上に置かれた大盛りのご飯と炒飯はいつの間にか冷たくなっていた。