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第103話 ドアを開けたなら

 誰もいないアパートメント内は闇夜が支配している。その暗闇の中を俺達三人は進む。こういう状況を察してか町衣紋さんが魔式懐中電灯Ⅱ型を持ってきていたのがとてもありがたい。


「町衣紋さん流石さすがですね。まさか懐中電灯を持ってきてたなんて。それどこで買ったんですか?」


「あぁ、これか。これは農場の備品だよ。夜は暗いからな」

 町衣紋さんは苦笑いをしながらそう言った。それにしてもその先を予見する知識は流石である。俺も学ばねばならない。


「この廃アパートメント、まるで迷路のようですね……」


「うむ、部屋ごとに確認していくのはなかなか難儀なんぎじゃの」

 空気を味方にしている学長がそう言うようになかなか時間が掛かる作業である。ニコライズはどこにいるのだろうか……。そんなことを考えながらある一室のドアを開けようとした時だった。


「ユキオスよ待て!」

 学長の緊迫した声が飛ぶ。


「ど、どうしたんですか学長?」


「空気が振るえとる。それもビンビンにな。内部に何かいるぞ!」


「な、なにっ――」

 途端に身構える俺達。言われてみれば確かに中から『何か』の気配を感じる。いや、厳密にいえばかすかに中から金属音がするような……。


「ユキオスよ物は試しだ。とりあえず突入してみろ!」


「えっ俺がですか!?」

 学長の無茶ぶりに驚く俺。こういう時は経験豊かな人が突入するべきではないだろうか……。


「町衣紋さん最初に中に入ってもらえませんか?」


「いや、俺は君の実力を評価している。それにこのドアは君に開けられるのを待ってるんじゃないのかな?」


「それ本当ですか……」

 しかし、誰かがこのドアを開けて中を確認しなければならない。意を決した俺は思いきってドアを開けた。


 ギギギギッッ――。

 錆び付いたような鈍い音が周囲に鳴り響く。俺はその中を懐中電灯で照らした。


「――!?」

 何かがいる。銀色に光る何かが。あれはまさか……。


「ユキオス、あれはなんだ――。兵器か?」


「はい、恐らく旧式の突撃槍機動兵器ハドチヌクスⅢの簡易生産ユニットだとは思いますが……。壊れてるのか動きませんね」


「俺達を驚かすためにニコライズが置いたのだろう。奴は心理戦のエキスパートだからな」

 町衣紋さんがそう言った時だった。


 ――ガチャーン……!

 通路の窓ガラスが割れそれと共に投げ入れられた石が町衣紋さんの腰に当たった。


「痛たたたたっ――」

 腰を押さえながら町衣紋さんはそう呟く。どうやら腰にクリーンヒットしたらしい。


「だ、大丈夫ですか!?」


「あぁ――。油断していた。ハドチヌクスⅢに皆の注意がいった途端の奇襲攻撃……。敵ながらアッパレだな」


「腰の具合はどうかの。これはただの石ではあるまい」


「えぇ、これは西部一堅いヌゴジ・ゴ・ジ・ソゴヌの石だ。あとこれを見てくれ」

 そう言いながら町衣紋さんは上着をめくった。


「そ、それは!?」

 驚きで目が点になる。なんと町衣紋さんが腰に巻いていた強化型チョッキにヒビが入っていたのだ!


「ニコライズは俺達の存在を知っている。俺達は奴のワナが張り巡らされた場所にまんまとおびき寄せられたのだ」

 その瞬間、俺達三人に戦慄が走る。これは長い夜になりそうだ……。


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