一つの約束
ついに恐れていた事態になってしまった。
僕は一枚の紙を見つめてプルプル震えていた。今僕が持っている紙には、『二年一組、椎名緋音 身長161.8cm』と黒々と印字されている。おかしい。これは何かの陰謀か? それとも計測器がおかしかったのか? いや、先生のミスではないのだろうか。そうだ、きっとそうに違いない。
そう自分を納得させて僕はいったん深呼吸をしようとしたその時、後ろから肩をぽんっと叩かれた。
「あははっ、ついに私がたっくんを抜いたよっ!」
振り返ると、そこには僕の検査結果用紙をひらひらと振りながら立ってる幼馴染がいた。
その用紙には、『二年一組、杉下卓也 身長161.6cm』と印字されている。
「ヘッヘー。この勝負、私の勝ちだね」
そう、この頃僕が伸び悩んでいるせいで僕らの身長は近づいてきた。そしたら緋音が、「今度の身体検査、身長で勝った方が負けた方に一つだけ何でもお願いできるって勝負しない?」と持ち掛けてきた。
そして今日、みんなが帰った後、僕らは担任から渡された検査結果が印字されている用紙を見せあいっこした。その結果、ついに僕は身長を緋音に抜かされてしまった。
「しょうがないなぁ。僕の負けだよ」
「うんうん。潔いことは美徳だよ」
相変わらずニコニコと太陽のような笑顔をしている。なんだかいつもより三割増しぐらいなのはおいておこう。
「それで? 願い事って何?」
すると緋音は、瞬時に顔を赤らめた。そして、僕の目を見て言った。
「あのね、私、たっくんのことが好き。つ……付き合ってくださいっ!」
窓の外には、ちょうど緋音から僕へと向かう方向へと飛行機雲が伸びていた。
Fin
二人とも高校生って設定なんですが、ちょっと卓也君小さかったですかね。