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-同一階層観測端末存在

 

 

「貴方は、ナルディアに助けられたことある?」


 彼女、シャルは、俺と同程度の存在だ。

 同程度とは、少し立場的に上っぽい存在らしいからだ。

 ただの一観測端末ではなく、観測端末長、あるいは、統合観測端末群とか言われる存在だ。


「ある、回数は覚えてないけど、三桁は下回らないな。

 心臓麻痺で死んだり、自殺したり、乗り物に轢かれたり、した時にな、他にもいろいろあるが。

 ってより、シャル、なんでナルディアさん呼び捨てぇ?」


「うん? だって、わたしの方が偉いもの」


「はあ? 偉い?」


「うん、だって幾らでも嘘の情報かもしれないからね」


「さっきから、うんうん言ってるけど、まるで喘いでるみたいで、無駄に興奮するからやめてくれないか?」


「発想がキモイから死ね」


「はなし戻すな。

 もちろん、植え付けられた記憶かもしれない、そういう可能性はあるが、俺が絶対の忠誠と愛情を感じているのに他ならないな」


「知らないわよ、わたしと貴方は違う存在でしょ、まったく近似性、相似性のない、混じりッ気なしの異質別個存在でしょ」


「そこなんでそんなっ、、、強調しすぎだろ」


 溜息をつく、彼女は常に飄々としている。

 俺では付いていけない高みの領域で、常に生きているかのよう。

 ただの人間に止まらない、何か大いなる余裕がある感じの、そんな一個の存在だ。


「うそ、私もナルディアさんの事、大好きよ、凄く凄くね」


「はあ、なんかさっきのがあるから、うそ臭いな」


「嘘じゃないわよ。

 私を観測者なんて、特別な存在で在らせてくれてるし、それだけじゃなく、いろいろな特権も使わせてくれるし」


 特権、俗に観測者特権と呼ばれるそれか。


「私が幸せになる為に、役に立ってくれてるし。

 加えて、他人も、本当は幾ら不幸でも気にしないし、どうでもいいけどね、幸せにするのに役立つし」


「いいや、シャルは他人の幸せを、自分の幸せより優先するタイプでしょ?」


「はぁ? 馬鹿?

 私は自己愛に絶対的に溺れた存在よ、貴方くらいよ、自分の命よりも大切なのはね」


「そう、俺は俺以外の全てが不幸でも、ぜんぜん気にしないけど」


「私が不幸になっても、いいって言うの?」


「いいよ、不幸なら不幸で、シャルが苦しんでるところ楽しいし」


「貴方、死ねばいいと思う、最低ね。

 わたしは、貴方が不幸になったら、自分が痛いのと同じくらい共感できる自信が確信の域であるのに」


「そうなんだ、ありがとう。

 それでも俺はシャルのことなんて、どうでもいいけど」


「もうそれで、別にいいわ、それに関しては気にしない。

 貴方がそういう価値観でも、わたしの価値観は揺るがないってだけだし」


「ふーん、理解できないな、相手が自分を助けてくれないのに、相手を助けるの?」


「助けるわよ、だって、貴方って私の事、好きでしょ?」


「うん、観測してて楽しいから、好きだよ」


「私は、好きな人は絶対に助ける、そういう主義主張、信念で生きてる、そういうこと」


「あっはっは、シャルは本当に愉快な人だね」


 自分にない、というより、絶対に近く矛盾して持てない、そういう性質を、彼女という存在は持っている。

 自分一人では知覚も再現もできない、そのような自分の外にしかありえない、存在の在り方なのだ。


「私って頭いいから、今貴方の考えてる事も、だいたい読心できるのよね」


「突然、どうしたの?」


「私ってね、私が唯一無二で、絶対的に大好きなの。

 それで、他人も私が大概で好き、なぜなら、私ってそれなり以上に魅力的で、価値があるから。

 でも貴方は、どんな存在も好かない、ぎりぎりで、ナルディアだけは好き。

 いや、それもどうかしら、ただ絶対の忠誠を捧げるだけで、存在としては好いてるのかどうか。

 そういう貴方の、深みっていうの? 底の読めないところが、私は好きかな」


「考えすぎだね。

 でも、そういう妄想癖なところ、面白いね」


 彼女の意図を感じる。

 自己の存在を賭してでも、俺に好かれようとしているのだ。 

 自己犠牲でなく、自己満足の為に、自己を犠牲にする。

 そのような攻めの姿勢、彼女はまったく素晴らしいほど、費用対効果の限界な限りは、絶対に守りに入らない。

 痛いほど真剣に本気な様、俺がまだまだ突き詰め見極め見限り、梃入れしてないレベルで、持ってないソレ。

 尊敬に値するほど必死で常時ある、その在り方を、彼女は常に感じさせてくれる貴重に過ぎる一個存在だ。


「貴方には、それだけの価値があるのよ」


「話が飛び飛び、ってか、遠く酷く跳躍しすぎて、なに言ってるか掴み難いよ」


「ふっふ、それくらい曖昧で言う方が、恥ずかしくないから」

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