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マティルダとピクモンをする話

 

 

 ピクモンと言うゲームがある。

 不思議生物を使役して、墜落した未開惑星から脱出するゲームと聞いた。


「よっし、一匹も殺さないように行こうねぇ」


 マティルダ、略してマティが2コンを構えて、こちらにニコリとする。

 帰宅したら、彼女が待ち構えていた。

 学校での事を話され、ひと段落してゲームをしようと持ちかけられた。 

 そして俺は、いまそのゲームをしている。


「今日、学校で”一番優しい人”って褒められたんだぁ」


 溢れるくらい純粋無垢、天衣無縫みたいな笑顔でうれしげに言うマティ。


「私、何の取り得もないから、だから、もっと優しくなろうと思うの」


「それで、不殺の縛りプレイをしたいのか?」


 前後の会話から、そう推察すると、少女はこくりと頷いた。


 うーむ、クラスの女子から調子に乗っていると、勘違いだが思われた彼女。

 それで、悪質に過ぎる苛めっ子グループから、変質者を嗾けられて、これとは。

 俺は、少女を無上の愛を込めて、しげしげと眺めた。

 ああ、ちなみに、その苛めっ子グループに変質者扱いされていたのは、この俺だ。

 最近の子は、ただ黒服でウロついているだけで、そういう目で見るらしい。

 まあ、怪しい人間で、怪しい仕事をしている、それは事実だったりする。

 から、そう見られるのは詮方ないと思った。 


「最初の面は、ピクモンの数を増やすの、頑張ろぉ」


 赤色の生物が、携帯食のようなペレットをせっせと運んでいる。

 原生林のような場所で、そのような光景は酷く非現実的にみえる。


「イツキお兄ちゃん、面白い?」


 俺の顔色を伺ったのか、少女は少々不安げ聞いてくる。


「ああ、神ゲーだな、超面白いぞ」


「あっは、なら良かったぁ」


 素直な少女らしく、一切の疑問なく穢れない笑顔。

 まあ、顔には出さないが、割と楽しんでいるのは事実だ。


「あ、夜になってきたから、そろそろ本拠に戻らないと」


「マティは、このゲームやり慣れてるのか?」


「ううん、イツキお兄ちゃんと一緒にやりたかったから、初めて」


 それにしては手馴れていると思って質問。

 どうやら昨日の夜に、説明書を丸暗記できるレベルで熟読していたようだ。


「マメな性格だな」


「へへ、褒めてくれてありがとお」


 次のステージにて。 


「あっ」


 少女の不殺プレイをを尊重し、慎重に進めていたのだが。


「ああ、沢山食べられちゃった、、」


「すまん」


「ううん、大丈夫だよ! むしろ、これでフッきれたからぁ」


 俺がすまなそうにすると、慌ててフォローしてきた。

 さらに、その直ぐ後。

 少女はリスクを省みない豪快なプレイをして、沢山の戦果と犠牲を創出した。


「マティは、明日休みか?」


「うん、土曜日だけど、学校はないの」


「羨ましいな、俺は明日仕事だ」


 話しながらやっていたら、プレイをミスった。

 攻撃力の低い青ピクモンで攻勢に出たら、攻撃力不足を招いたのだ。


「部隊の六割が食われた、全滅判定だな」


「え? う、うん、そうだね」


「悪い、意味分からなかったな」


「そんなことないよぉ。

 それより、イツキお兄ちゃん、連打するとき持ち方、こうした方がいいかも」


 少女は近寄って、俺の手取りでレクチャーをする。

 なるほど、この可動式リモコンは扱いが不慣れで、今まで変な持ち方をしていたらしい。


「速く連打できれば、さっきの青ピクモンでも、遅れをとりませんよ」


「ありがとう」


 何か顔色を変えて、少女は近づいた距離を、なぜか一向に離れない。

 肩が触れ合うか合わないか、ぴとっと寄っているのだ。


「さて、ボス戦に備えて、ピクモンを補充しませんか?」


「おう、そうだな。

 さっきだいぶ減ったから、84匹じゃ、苦戦するな」


 攻略中に、ステージに散らばり、はぐれたピクモンを回収しつつ言う。


「よし、行きましょう」


「いく」


 鳥のような形態の、巨大な敵の待ち構える場所だ。

 こいつの体内に、クリア条件に必要な宝があると言うのだ。


「頭部が、弱点、かもしれません」


 乱戦になり、めちゃくちゃな感じの画面。

 俺は言われたとおり、弱点っぽい頭部めがけてピクモンを投げる。

 時にプレイヤー本人、身を盾にして戦い続けた結果、割と速戦で倒せた。


「今日は、この辺にしますか?」


「そうだな、夜も遅くなりそうだ」


 セーブをして、ゲームをリセット。


「それじゃ、また明日、じゃなくて、遊んでくれますか?」


「ああ、またな」


 俺は何か言いたげな少女を見る。

 なんとなく頭を撫でてやってから、その場を辞した。

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