永遠に続く夜明け前、黄昏の神話世界
「たく、めんどくせぇ」
目の前に躍り出てくる、沢山と表現できる数頭の、筋骨隆々の肉達磨を一気に細切れ分解する。
広大な洞穴空間で、銀の糸を旋風させて、囲まれる前に全力で退避する。
「はぁ、町から出ると、直ぐにこれだ」
俺は溜息を付きながら、洞穴空間に存在する町の門を潜った、死線を何度も超えた修羅場の後の事だ。
「また、死に掛けたみたいね」
どこからか、降ってくる、黒髪の少女。
「漆黒の女王」
「そう、わたしは漆黒の女王、とも、呼ばれているわね、でも気に入らないから、やめなさい」
「そうだったな、レイル」
「それで? 調子はどう?」
「どうもこうもない、どうにもならないを現在進行形だ」
俺は最近の話だが、特異点領域に挑戦している。
其処は一言で言えば、いろいろと破綻している空間を意味する。
この洞穴空間が永遠に続く次元領域が、それであるのだ。
一応、この次元の拠点である町だけは、絶対の守護下にあるが、一歩外に出ると、そこは無法の破綻が支配する領域となる。
だが、仮初の法則性はあるらしく、其処では”精神の続く限りは、奇跡が連続して死なない”、のだ。
つまり、諦めなければ、死ぬことはない。
しかし、存在を殺す為だけに存在する敵がいる、特異点の領域は、意思ある自我を許さない、神のみを認める領域という特性を持つ。
でも先述の此処の特性により、その敵に対しても、諦めなければ無限に勝利することが出来る。
だからか、此処は鍛錬者が集う、修練の次元として割と一部の巷では有名だったのだ。
さて、そしてだ、俺は、力をただただ求道し、最強や無敵、観測者の領域、今よりも上位の、超上位の世界や存在を目指す、そんなような存在奴なのだ。
そういう人種、根っこの部分が破綻して崩壊した、破滅的な生き方を地で行くやつの、最後の到着点が、ここだったのかもしれないな。
自らの望みの叶う、最小単位の僅かばかりの可能性が、眠り在るかも知れない領域、特異点の次元世界、のことだ。
「それで、だけど、貴方、混沌に来るつもりは無い?」
「無い、何度も言ってるだろう、俺はそういう勢力争いに、まったく興味が無い」
「私も、それは知ってる、でも、私達に付けば、いろいろ貴方の望みを叶える為のサポートが、してあげられるかもしれないわよ?」
「いらん、他人の、自分以外の全ての助けなんて、俺は最初から当てにしないを絶対の信条にしてるんだ」
「難儀な生き方ね、ほんと」
彼女は、最近の話だが、度々こういう事を言ってくる。
”混沌”とは、普通に全次元的に見て、大国とかに例えられる勢力の一つを顕す。
他にも”秩序”や”幻夢想”や”絶対”や”矛盾”や”虚無”とかも、似たような意味で、纏めて六大国と言われたりしている。
ちなみに、此処は混沌の支配するマイナス領域に位置している。
だから、そこの全てという全ては、絶対存在の絶対管理下にある。
だけど例外があり、俺や、特異点の次元領域等々は、その管理下に無い。
支配とかのしようもない、全く一切の手の負えない、底なしの特異点の存在だから。
彼女は、恐らくは混沌の勢力所属の存在であろう。
自由意志を持つ、本来”矛盾”に所属する俺を、自陣営に引き込めないか、今は動いていると予測している。
「そうなのだろう、なにしろ矛盾存在だ、無限に葛藤し続けないと、息さえ出来ないような有様なのだから」
同じような奴が、もう一人いる。
「ファス、お前は違うのか?」
「もちろんだ、俺は混沌に染まってるからな、楽しみの為なら、掛け値なしに何でもする、外道だぜ」
銀髪赤眼の麗人が、いつの間にか町の門の上に腰掛けて、俺達二人の立つ傍で会話を拝聴していたらしい。
「おいレイル、また迷宮に、挑戦しないか?」
スタッと、一直線に降りて、レイルと向き合い様にそう言うファス。
「いや、あそこは、当分のあいだは懲り懲りよ」
彼女は隣の麗人に向けて、心底から顰めた顔を向け、嫌悪の漂う声色を発する。
「そうか、なら、クロム、一緒に行くか?」
奴は血の、というより鮮血に燃え滾るような瞳で、俺に向けて提案してきた。
「断るよ、俺は一人で何事も成すのが、好みでね」
「はっは、残念だな、まあいい、期待はしていなかったからな」
だったら最初から提案すなっと、言いたかった。
俺は俺の信仰する神にアクセスする。
自我亡き絶対神”トランプの女王と聖女達”だ。
とある次元領域を拠点として、大きく信仰される神像群だ。
先程の銀の嵐は、”スペードのクイーン・銀の妖精”の能力を引き出し利用したものである。
神術に値する、この異能力は、日々の信仰が割りと大事だ、疎かにしてはいけない。
だから、偶に力の代償に困らされる時がある。
いきなり”彼女を最大限で、楽しませよ”、神からのお告げが合った、直感でそう思えたのだ。
目の前には、俺のイメージに忠実に存在する、銀の妖精が現れていた。
「私はミリア、よろしく」
ハッキリと面倒ごとを抱え込む羽目になったが、無視は出来ない、信仰に背けば、俺は重要な力の一端を失うのだからな。
「ああよろしく、俺はクロムだ」
「クロム、そお、しばらくの間、よろしく頼むことになると思いますが、よろしいのでしょうか?」
「もちろんですよ、なんなりと、なんでも」
素直に従う、仮にも神の依頼だ、全力で果たす以外に、選択肢は今のところありえないだろう。
「イデア系統の力ね、貴方って、召還術もこなせたの?」
一部始終を間近で観察していた、レイルが尋ねてきた。
「力の系統は、、、、知らん、あと召還した訳でもない、神からの依頼だ」
「その子、可愛いね、浚いたいくらいだ」
「駄目だ」
「神ね、、、結構に高次元なレベルだね、まあ、貴方が信仰してるわけだから、当然だわよね」
「そうなのか? 良く分からないが」
二人が俺とミリアから少し離れ、何事か喋っている。
「まあいい、俺は消えるから」
俺がその場から離れると、銀の妖精も付いてくる。
寝床、典型的な安宿である。
ミリアが、そこら辺をうろうろしていて、何か落ち着かないが、まあいいかと全て諦める。
「ねえねえ、ここに、ここら辺に置いてある、怪しい本って、読んでいい?」
「まあ、ご勝手にどうぞ、うぃマドモアゼル」
「??? え?」
滑ったやりとりをしつつ、ミリアが適当に床に置いてある無数の本の一つを手に取る。
「この”宵闇の私の楽園は、玉虫色で何もない”って、面白い?」
「際物だけど、まあ面白いだろうよ、小難しいのが好きなら、中々に楽しめるはず」
適当に寝転がり、文庫本を開く。
「これって、シリーズなの?」
「ああ」
「何巻モノ?」
「まあ、だいたい三桁くらいじゃないのか?」
「、、、どういう意味?」
「別次元に存在する本、その情報を文庫本に写した、練成本だから、まだ十巻くらいしか作ってないぜ」
「ふーん、まあいいか、とりあえず暇つぶしにコレ読む」
「うん、読んだら感想聞かせて」
二人して本を読んでいた、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。




