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混沌的な存在と化け物‐町の盛場から転移場に

 

 

 町と呼ばれる場所、それ以外の呼称を知らない、もしかしたらただ単純に無いのかもしれない。

 そこが今の私の住処、根拠地だ。


 盛場のような一軒の店に入る。

 古びた扉は普通に開けると酷い音を奏でるが、ソイツを良く知り労わった開け方を心掛けるとそういう音はしない。

 だが、私は気にせず盛大に擬音を奏でて開けるの趣味なのでそうした、ただそれだけ、動機はストレスが溜まったからやった、じゃ、駄目かな?


 当然だが、毅然と傲慢、尊大とも受け取りようによっては取れる私の態度に、店内に居た人物達は憤るのだろう。

 でも気にしない、ここに居る奴は全員弱い、だから気にする必要性が皆無、好きにやっていいのだ。

 私は満足の微笑を振りまきながら、周囲の弱者に笑みかけながら一人の男の席の前に着く。


「やあ」


「また、秩序的な存在を殺したのか」


「あれ? 駄目だったかな?」


「別にいいがな、俺が気に食わないだけだ」


「うっふっふ、だったらなぜ、君は混沌に所属しているのかな?」


 この目の前の、殺伐とした雰囲気が似合う黒髪の少年は、まあ私の上司?いや最近はもう同僚くらいかな?の人だ。


「俺は俺であるために、それが必要だから所属しているだけだ」


「ふーん、まあそれもそれでいいんじゃないの」


 適当に受け答えして、適当に飲み物を注文した。


 暇なので、目の前の男を凝視するように観察する。

 相手も特に何もせず、店内の上辺で回転するプロペラを眺めて、まるで虚空に映る何かを鑑賞しているようだと思った。

 自分を見る私に今気づいたように、ツイと視線をこちらに向けた。


「なんだ?」


「別に、見てただけ」


「そうか」


 そう言ってからは、向こうも私を一点に凝視して、睨めっこみたいになった。

 私はその状況も気にしないで、相手の瞳を見つめる。

 その中に映る私を見て、その私の瞳も見て、合わせ鏡に吸い込まれるような錯覚を認識して、なんか満足した心地を得られた。


 飲み物がついて一心地ついた後、彼は語りだした。


「本題だが、ハートの女王が、近々動きをみせる、そういう話がある」


「へえ、それで?」


「俺達は、そいつをどうにかしろ、最大限の全力で、と、命令された、ただそれだけだ」


「へえ、面倒くさいね」


「まあな、だがやらなければいけない、ポーズでもな」


「本当にポーズだけでいいの?」


「そんな訳はない、ポーズはバレルのだからな、アノお方には」


「だったら、やっぱり馬車馬の如く、動くしかないんじゃないか」


 私はうんざりした様な態度と供に、席を立つ。


「はーあ、一気に肩身が狭くなった感じ、いやになるよぉ」


「俺だってそうだ」


 彼も席を立って、私の隣に並ぶ。


「それで、まずは何処いくの? ルナルティアで張るの?」


「それもいいが、まずはエクスラシャペルに行く」


「まあ、万が一、だね」


「そうだ、あのプライドの高い女王が、誰かの下に着くとは思えないが、ありえないわけじゃないからな」


 一応代金を払い、行きと同様の手法で扉を開けて閉める。

 外の景色を見つつ背伸びして、欠伸をしながら続ける。


「それじゃ、今から?」


「ああ、今から動く、問題はあるか?」


「ないよ、着のみ気のままに生きてるからね、君の方こそ大丈夫?」


「ほお、気遣うのか」


「意外そうにしすぎ、私をどれだけ見誤ってるのさ」


「普段の行いが悪すぎるのさ」


「しょうがないよ、そういうしないと、楽しくないんだモノ」


「お前は、そのなんだかな、刺激に飢え過ぎている気があるな」


「そりゃそうだよ、刺激が無いと、死にたくなる。

 死にたくなくなりたいから、私は最大限、自分が楽しいと思えることを、ありとあらゆる手段を持ってする、悪い?」


「どうだかな」


「答えになってないよ」


「答えが出ない、出しにくいからな、状況や環境によっても変わる」


「ふーん、それで、今の私は悪いの?」


「ああ、悪いな」


「否定された」


「まあいいじゃないか、お前の事はきらいじゃない」


「否定するのに?」


「そうだ」


「意味がわからないよ」


「考えれば分かる、が、説明はしないぞ、長くなるし冗長だ」


「して、ちゃんと理解したいから」


「また、後でな」


 徒然と話している間に着いた、町外れの、ちょっと森に入った空き地。

 そこに蓋された穴が、数個ある。


「確か、この穴だったな、一応確認するが、あってるよな?」


 一つの穴の蓋を横にずらし、マンホール大の穴を指差しながら言われた。


「そうだよ、確実にあってる、記憶違いを気にしてるの?」


「ああそうだ」


 堂々とした声色が、なんだ可笑しくて微笑してしまう。

 そんな私に何も感じないように、ただ立っている、ちょっと何か言うか。


「この穴って、どうやって出来たか、知ってる?」


「ああ、知ってる」


「どうやって?」


「知りたいのか?」


「うん」


「そうだな、簡単に言えば、長い年月無意味に掘り続けて、その結果生まれたモノだ」


「はぁー、意味がわからないよ」


「まあな、つまり、願いを込め続けて、労力を積み重ねれば、奇跡は起きるって事だ」


「ますます意味が分からない」


「世界はそういう風に出来てるんだ、諦めて認めるべきだ」


「嫌だよ、そんなふざけた話が現実に起きる、こんな世界は嫌だよ」


「だったら、世界を変えないとな」


「誰が?」


「自分で、あるいは変えてくれる人を応援するんだな」


「はぁー、まあいいや、この穴の原理も理屈もブラックボックスでいいよ、この穴のようにね」


 穴の底を覗き込みながら言う。

 どこまでも続く深遠は暗く、全てを、世界すら飲み込みそうだ。


「さて、無駄話もここら辺にして、行くぞ」


「そうだね」


 レディーファーストなのか、彼は穴の傍に立ち、私が行くのを待つようにしている。

 なら先に行くかと、私は穴に身体を放った。


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