表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: ren
1/4

桜×恋愛

 チャイムが鳴り終わると共に始まる、ランチタイム。今日も今日とて、私たちはカラフルなお弁当包みを手に陽子の席に集まった。


「「「いただきまーす!」」」


 外見に負けないぐらい色とりどりのお弁当を並べ、私たちは一斉に手を合わせた。四月の初め、新しい学年も始まったばかりだと言うのに私たち三人の息はぴったりだ。


 それもそのはず、陽子、春菜、そして私、舞の三人は中学からの親友だからだ。共に同じ高校に入学し、一年の時は違うクラスに別れ別れとなったが再びここで集合となったわけだ。


「どんな後輩が来るかなー」


「可愛い子が良いな!」


「それよりもイケメンの後輩っしょ」


 三人で他愛も無い話をしているこの時は、私に取って一番落ち着く時間だった。クラブも帰る方向も、趣味も何もかもが違うのに仲が良い。それは気楽に何でも話せるからこそ、成り立つ関係なのかもしれなかった。


 いつもの様に食後のおやつタイム――今日は私が持って来たポッキッキーを皆で食べていると、そこへ丁度通りかかった男子の手がにゅーっと伸びてきた。


「南野、一本くれよ」


「はいはい」


 またお前か、といった態度で私はその男子――宮本に袋を差し出した。すると彼は、遠慮なくそこから一本抜き去ってサンキューと言いながらいずこかへと去って行った。


「はー。 本当に仲良いよね、そこ」


「よくやるわー」


 陽子と春菜の微妙に白けた視線を交わしつつ、私は餌付けだよ餌付けと言って誤魔化した。宮本と私は、小学校から共に今まで同じ学校に進んだ腐れ縁だった。名前の順が近いこともあってか、何かと一緒になる事も多かったので何となく仲良くなったという……それだけのことだ。


「いやー。 でもさ、宮本に彼女出来るなんてびっくりだよね」


「うーん……そう言われて見れば、最近カッコよくなった気もする?」


 ――……え?


 私は、陽子と春菜の声に静かに違和感を感じた。


「まあ、先輩ウケする感じではあるよね」


「あー。 それ分かるわー」


 ――彼女……?


「舞はどんな人か知ってる? 彼女さん」


「いやー。 宮本とか、興味ないわ」


「そっかー」


「舞も知らないんじゃねー」


 咄嗟に話を合わせた私の言葉に、二人はあっさりと納得してくれた。そしてそのまま、いつもの様にすぐに別の話を移行していった。


 私もそれについて行こうとして、行けなかった。二人の話に適当に相槌を打ちつつ、実のところ何も耳に入っていなかったのだ。何故なら私の頭の中は、一つの事でいっぱいだったからなのである。


 ――宮本に、彼女が出来たの……?




「宮本に彼女かー……」


 結局私は、その日ずっとそのことから頭を切り替えることが出来ずにいた。いつも通り午後の授業を受け、クラブに行き、とぼとぼと家に向かっている今でさえ気づけば宮本のことを考えている自分がいるのだ。


 ――なーんで私、こんなに宮本のことばっかり考えてるんだろう……。


 気付けば私は一人、自宅近くの公園のベンチに座っていた。春とはいえ、まだまだ夕暮れになると肌寒いこの時期。暮れかかっているそこで遊んでいる子供もおらず、一人で思考の海を漂うには絶好の場所ではあるのだが。


 しかし考えても考えても、結論など出るはずも無かった。どうして自分がこんなにもショックを受けているのかも分からないまま、とりとめのないことを思い、考え、振り出しに戻る。ただただそのサイクルを繰り返すことしか、私には出来なかった。


「てか、寒っ」


 はっと気づくと、辺りはすでに真っ暗になっていた。


 ――やばっ! ……帰らなきゃ。


 頭ではそう思うのに、体は動かない。冷たい風に当たっていたせいか頭は重く、身体全体がだるく感じた。


 ――……もうなんか、やだな。


 溜め息をつき、私はついに両手に顔を埋めた。


「――あーあ。 せっかく開きかけていたのにね」


「……え?」


 私は突然聞こえた声に、はっと顔を上げた。


「君も、そう思うだろう?」


「……」


 声を掛けてきたのは、見知らぬ男だった。全身黒づくめで……不審者か中二病かの判断には苦しむがとりあえずここから去った方が良さそうだと思うまで、一秒もかからなかった。


「ご、ごめんなさい。 帰ります、私」


 鞄を引っ掴み、私は急に覚醒した様に立ち上がった。


「ははっ。 何も謝ることはないじゃないか」


「そ、そうですか」


 私はもう、ほとんど走り出していた。男の声は、私の背後から迫って来ていた。


「ねえ君――」


「さようなら!」


 公園を出るや否や、私は後ろも振り返らずにダッシュした。だから、男が私の方に手を伸ばしたまま佇んでいたのを見ることは無かった。


「……携帯、忘れてるって言ってるのにな」


 男は携帯を持った腕を下げ、ふうっと溜め息を吐いた。そして適当にボタンを押して待ち受けを確認したのち……ジーンズのポケットに仕舞った。


「まあ良いか。 また会った時に渡せば」


 男はそう言ってふっと笑うと、一本の木を見つめながら呟いた。


「大丈夫。 大丈夫だよ、きっと」


 そうしてふっと、夜の闇に溶け込んだのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ