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番外編置き場  作者: かなん
死霊術士の殺人鬼
5/15

5 頂き物イラスト

やえ様よりイラストを頂きました。

読んでいる上でのイメージもあると思いますので、挿絵のON/OFFにて見る/見ない等の判断をお願いします。

以下イラスト+小咄となります。








挿絵(By みてみん)


<ミチカと呪いの箱2 箱の中にて>



 四角い空間に、殺人鬼と二人で閉じ込められている。

 しかし二度目ともなると落ち着いたものだ。

 目が覚めるまですることもないので、私はリパー・エンドに話しかけた。

「しみじみ思うのよ」

「何が? ミチカ」

 彼は軽い調子で返事をした。史上最悪の殺人鬼と呼ばれている彼は、黒髪に赤い目、黒い服装をしたどこにでもいそうでいて、どこにもいないくらい凶悪な存在だ。

「なんであんた、学園で私の召喚に応じたの?」

「んー」

 リパー・エンドは問われて首を傾げた。その右手の小さなナイフをくるりと回すと、小さく笑う。

「別に誰でもよかったんだけどね。呼ばれたから応じただけで」

「……」

 恐らく彼は私じゃない別の誰か、学園の誰であっても召喚されただろう。そうしたら私はただの一学園生。身を守る術もなくそのままリパー・エンドに殺されて人生を終えていたに違いない。

「……良かったんだか悪かったんだか」

 その代わり様々な事件に巻き込まれ、殺されかけ、しかも何か今は呪われた箱に取り憑かれている。げんなりした気分で私がため息をつくと、彼はくくっと笑う。

「僕は良かったと思ってるけど。だからまたミチカに召喚してほしいんだよ?」

「……」

 それは有り難がれということなのだろうか。全く嬉しくない。押し売り反対である。

「……絶対この箱、全力で遠投してやるから」

 私の言葉に、リパー・エンドはけらけらと笑いながら「あっはは、頑張ってね」と応援するのであった。イラっとした。起きたらまず箱を全力で投げようと思う。



挿絵(By みてみん)


<学園からカトールへの道すがら>




「何であんたは人を巻き込んで落ちるのよ!」

「近くに刺客がいたからさ、ミチカだけ置いてくわけにいかないでしょ?」

 崖上から突き落とされた(途中で抱きとめられたけれど)ミチカは、震える体を擦るようにしてリパー・エンドのつけた焚き火の傍にあたった。

 しかし季節は秋。普通に空気が肌寒く、濡れた服が体温を奪う。

「……で、何であんたはさっさと服を脱ぐのよ……!」

 恨めしげなミチカの声に、黒く長い上着を脱いだリパー・エンドは笑う。しっかりと筋肉はついてはいるが、太くはないすらりとした上半身を晒した彼は、焚き火の傍に自分の服をかけた。

「ミチカも脱げば? 寒いでしょ」

「死ね!」

 反射的に返事をしてから、ミチカは身を震わせた。寒い。だが間違ってもこいつの前で服は脱ぎたくない。貞操の危険を感じる訳ではないが、無反応というのもまた腹が立つのである。

 妥協として上着を脱ぎ、彼が服をかけた木のとなりに置く。焚き火に当たるために彼の隣に戻ると、その体に埋めこまれた精霊石が炎の揺らぎを映している。真ん中の大きな石が、彼女と契約した精霊石である。

「……」

 閉じ込められてたまるか、とミチカは心を新にした。頑張って、いつかきっとこいつを。

 ミチカをちらりと見たリパー・エンドは、平然と言う。

「ミチカ」

「……何よ」

「ちょっと太った?」

「……」

 いつかきっと、こいつを土塊に変えてやる、とミチカは誓った。





挿絵(By みてみん)


<服装>




 某日、深夜。カトールにて。

「あんたって黒い服しか着ないのね」

「ん?」

 自室で学園からの荷物を片付けていると、いくつかリパー・エンド用の黒い服が出てきた。特に服装にこだわりが無い様子のリパー・エンドは、大体が黒いシャツやズボンに、軽くコートを羽織っている。

 彼は入り口の扉から外へ出ようとしていたところだったが、私の問いかけに立ち止まるとあっさりと答えた。

「まぁ返り血が目立たないからね?」

 こいつは別に返り血が目立とうが目立たなかろうが気にしないような気がするが。

「ミチカも黒い服のほうがいいんじゃない?」

 ……人が血塗れになることを前提の助言はやめて頂きたい。

「あんたが私を巻き込まなければ、黒い服も、服の着替えも必要ないんだからね!」

 死霊術士の服装であるコートとケープは三着ずつ持っているが、こいつのせいで一着が既に駄目になっている。特に知りたくも無かったのに、血の染みが落ちにくいことを知ったのだった。

 私の噛みつくような声に、リパー・エンドはやれやれと肩をすくめると部屋を出て行った。闇夜に溶けるように、彼の黒いコートが翻る。

 私は片付けを終えると、そろそろ寝ようと燭台の明かりを吹き消した。




 月明かりが全く差し込まない、真っ黒な闇の夜だった。



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