他人の噂も
目の前に。
「何やねん、自分っ。ちょお、しつこいで!?」
「うるさい! 颯稀に寄るな触るな近付くな」
「最初と最後は同じ意味じゃボケェ」
「だっれがボケだ!!」
変人が二人。いただけない。実にいただけない。
そもそも、俺が損するように出来ているらしい。いい加減にしやがれ、と、どこにいるかもわからない、実際存在するかも疑わしい神様に、宗教信者に謝りながら吐き捨てつつ。
「───颯稀、あんなのに近寄っちゃ駄目だからな!」
「いや、別に用は無いし、アレに」
『問屋』こと仄束八好が去った後、遠矢はまるで我が子に“変質者からは離れないといけません”などと言い含める親に似た感じで、俺に訴える。俺はと言えば、完全にどうでも良かった。さよなら、遠矢。
「消えてませんから」
「……あれ? 聞こえてた?」
呟きとして、かなり役不足な部類の、ぶっちゃけ溜め息のほうがしっくり来るそれを、遠矢は聞き取っていた。
「ふっふっふ。颯稀ちゃん、甘いよきみ。僕ぁとぅっても耳が良いんだよ? それはそれはね。たとえばだね、颯稀くん。教授のあの講堂からこの校舎まで入ってくる時の足音とか────」
「敬称は統一しろな」
よくわからない“呪文”を垂れ流す遠矢を遮ったのは澱みを知らないような一言。遠矢はのた打ち回る。
「……颯稀はぁー、愛情がぁー、足らんのです」
「無いモノを“足らない”と訴えられても」
再度、のた回る遠矢。うるさいかも。
「俺帰るわ」
「帰るな!」
がしっと掴まれ裾が伸びるのを考え止まる。
「あのなぁ、」
「────あの“二人”って変だよね」
耳に入ってきた、女子の声。“二人”……?
「遠矢くんは元からだけどぉ」
「良いじゃん、格好良いもん」
「だけど颯稀くんもだよぉ」
「美形だから」
「ええーっ。でも絶対……だって! だって、
学校内であんな派手にイチャついてるんだよぉ」
女子が悪いんじゃない。ああ、そうだ。彼女は正しい。
俺はくつくつ喉を鳴らし笑う遠矢の、脇腹を蹴った。
【Fin.】




