Love letter.
ここがどこかは問題じゃないらしい。
己にとって、如何なるが唯一で有るか。
「颯稀ちゃあん」
「……殴って良い?」
「や、それは駄目」
殴りたいのはわかってる。颯稀はマジでする。
けど俺が嫌と言えばやらない。やさしいから。
捻てても歪みまくっていても、颯稀はやさしい。
俺とは違う。
「さーつきっ」
「んー?」
俺の家まで来た颯稀は、誰にも構わず俺にも構わず、課題らしいナントカの本を読み耽っている。
……俺に“何か”無いんですか?
「何が?」
「え、」
「呼んでたから返したんだけど、何?」
あう。ついトリップしちゃったよ。
「颯稀ちゃんはおモテになりますね、って」
「は?」
「それ、その栞」
課題の小説に挟まっていたのは、今時らしい透明素材を用いた空柄の栞。紫と青のグラデーションが淡い色合いで、英語で何か書いてある。
「ああ。これ、ね……」
それが誰から貰ったのかくらいは知ってる。持ち前の人当たりの良さ────いわゆる外面の良さ────で後腐れ無くフった後。
これだけでも、と渡され、颯稀は嫌な顔を────繰り返すが外面なので────せず笑顔で爽やかに受け取ったのも。
受け取ったからには颯稀は捨てない。ちゃんと義理も筋も通すんだ。
「それさー」
「ああ?」
「手書きじゃね? 英文」
黒で小さく書かれた文章。英語のソレは、軽く覗き込む俺からは小さくて更に解読を困難にさせる。
「かもな」
「どーでも良いんかい」
「うん」
やさしい颯稀は、やさしいがゆえに関わった間はひどく扱いが丁寧だ。
しかし、離れたら扱いは途端に変わる。
無関心だから、興味が薄ければ忘れてしまうんだろう。
“来る者拒まず去る者追わず”
俺も基本はそうだけれど、颯稀のソレは俺と違うから。
ちびっと憧れる。
「颯稀」
「んー?」
「多分ね、それラブレターよ」
「知ってる」
やっぱりか、この腐れ文学部。
「何か呪われそーね」
「良いんじゃね? 別に」
淡泊質野郎。
颯稀は常に無関心。だから、俺は放すまいと思った。
それは[恋]より重いのか。
……。重症だな。
軽く診断を下し一言。
「俺も恋文書いちゃうか。
颯稀に」
「ど阿呆」
【Fin】




