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二回目のメリークリスマス。

 



 洋楽やら邦楽やら定番の曲が取っ換え引っ換え溢れ出す頃。俺は並木道を行く。十二号のホールケーキを持って向かう先は、家ではなく遠矢宅。

 遠矢とは二回目のクリスマスになる訳だが、何が哀しくて悪友と二回もこの日を迎えにゃならんのだ。そう毒付きながら見えて来たマンションのエントランスを潜り、窓口から覗く管理人に挨拶した。エレベータホールに着きボタンを押す。


 上がるたび押さえ付けられる感覚に身を委ね、音が知らせると共にその戒めから解放される。

 扉が開き通路に出る。極力ケーキの入った箱を揺らさないよう歩く。奥の角部屋に行き当たり、足を止める。

 インターホンに手を伸ばした───と同時に部屋のドアが開いた。


「お早うございまーす」

 無邪気な笑顔、俺より高い背。チラ付く金髪。

 目の前に突き付ける、箱。若干揺れたが、まぁ良い。


「ケーキ?」

「買って来いって言ったろ? 十二号、苺と生クリーム」

「サンキュっ」

 遠矢は俺から箱を受け取って、箱に口付けた。……何かうれしそうだな……。

 こんな遠矢は気持ち悪いだけなんだが…。晴夜なら何か微笑ましい気はする。遠矢じゃあるまいし、しないだろうけど。


「いやー、良かった良かった。スポンジ焦がしちゃってぇ。もう炭になっちゃって作る気喪失だったのぉ。良かったぁ」


 ところどころのお姉口調はやめれや。


 遠矢はさっさと中に戻りキッチンへ向かって、俺も入り玄関先でマフラーを外す。すぐ後ろでドアが閉まったのを感じた。


「────。何だ、“コレ”」


 俺が言うのも無理は無い。目の前を見よ。何だ、何なんだ。


「そっ。それの飾り付け昨日から掛かっちゃって。やっと今料理だよー」


 嬉々として答える、エプロン着用の長身の男。…シャツがクリスマスなアイテムをブチまけたような柄なのは突っ込むべきか?


「颯稀は嫌いなモンは無いから良いねぇー」

 アスパラに肉を巻いて串に刺す。手際は良い。


「……」

 裏面はサンタが袋持って踊ってんかよ。

 いつも座る二人掛けソファ、テーブル、一人用のソファ。その、傍らに。


「にしても、でけぇなぁ、おい」


 天井スレスレな大きさの、木。


 樅の、木。


「一昨日業者さんに運んでもらったんだぁ」

「そらお疲れさんだな」

「うぅん、もう本当に疲れたぁ」

「いや、お前じゃねぇ」

 業者がだよ。


 この部屋にどうやって入れたのか不思議なくらい、枝が伸び伸びしている木だ。そんな自由な様は部屋の主そのものに見える。

 これをさっき通って来た、今は背後に道を伸ばす廊下を通して置いたと言うのか。思わず振り返った。


 無理だろ、面積。


 その巨木(この部屋からすればだが)は運ばれた当時は飾り気が無かったのだろうが、今は白いエプロンと赤地にクリスマス詰め込み柄のシャツの男によって玩具みたいにカスタマイズされていた。

 それは可愛いを通り越して、最早ウザい。


 こいつの趣味は疑うべきだ。服から何からまったく以てセンスが悪い。

 部屋の家具類はむしろ良いくらいなのに。溜め息を吐きながら、いつものように二人掛けソファに座る。寝そべっている訳ではないのに枝がここまで来て何やら鬱陶しい。


 仕方なく、木から真正面に位置する一人用に移る。一人用とは言いつつも、ゆったり寛げる広さが在る。改めて本を広げ落ち着いた。


 途端に、静まった部屋に周りの音が主張し始めたように感じた。

 実際は、俺の注意が逸れたことで周囲に配る余裕が出来ただけだろうが。




 この時期になれば流れる曲。

 莫迦みたいにでかく、なのに玩具箱が引っ繰り返ったかのような樅の木。よく見れば、空なのかプレゼントの箱も幾つかその下に転がっている。


 遠矢がテーブルに料理を置き並べている音も耳に届く。


 来年も、こんななのだろうか。


 大学は四回期として。


 順調に行ってもあと二回…。




 来年……。




 この樅の木、どうすんだ…?







   【Fin.】

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