第7話 扉渡り。
国を去って既に10年が経ち、俺は「白石正人」ではなく「リーヴァ」として全てを一新して、この小さな街の「ポーション屋の店主」として生活していた。
俺が暮らすこの街は、帝都のような賑やかさと華やかさはないが、人との繋がりはより強く感じることが出来るし、めんどくさい人間関係というか政治もないので、俺としては帝都で暮らしていた頃よりも、今の方が楽しく過ごせている。
すると、カランカランと入店を知らせるベルが鳴った。
「いらっしゃい。」
「リーヴァ。いつものを頼めるか?」
「はい、分かりました。準備するんで待ってくださいね。」
「いつもスマンなぁ。」
俺の店にやって来たのは、この街では一番の冒険者パーティーのリーダーであるシンジさんで、俺の店で必ずポーションを買ってくれる常連さんだ。
シンジさんとの出会いは、この街に来たばかりで右も左も分からなかった俺を助けてくれて、その後もちょくちょく目をかけてくれるなど‥‥シンジさんは、俺にとっては恩人だ。
「はい。じゃあ、いつもの回復のポーションが5つと、状態異常回復のポーションが2つですね。じゃあ、常連割引で銀貨5枚でいいですよ。」
「流石はリーヴァだ!!いつも助かる。」
シンジさんからお金を受け取り見送ると、看板を裏返して店を閉めた。
さてと、今日の営業はこれぐらいでいいな。
時間的には、まだまだ日が昇っているので、待っていれば客は来る可能性はあるが、俺はいつもシンジさんが来た後に店を閉めている。
店を閉めた俺は、店の裏手へと繋がる扉に手を掛けた。本来なら、時計回りにドアノブを回すことで扉が開くのだが、俺はその逆の反時計回りにドアノブを回した。
するとガチャ!!と、扉の右上についている店のロゴが赤色へと切り替わった。そして、扉を開けると、そこは実験室だった。
ポーション屋の裏手は、本来なら倉庫になっていて、色々な品物をしまっている。じゃあ、なぜその扉が実験室へとなっているかというと。
この技術は、大人気映画〇ブリの〇○○の動く城の序盤あたりに出てくる扉が元になっていて、その扉は色んな場所に繋がっていた。映画では言葉で扉が反応していたんだけど、そこの再現は無理だった。
だから、大枠の「扉を開けたら別の部屋に繋がる」という部分だけは再現できた。
ちなみに、原理は空間作成が元になっている。あれの最初の失敗は、空間に部屋という枠を用意することが出来ず、空間の波に飲み込まれたことが原因だった。
だから、解決策として一室をまるまる空間に閉じ込めることで、空間の枠が出来て、波に飲み込まれることはなくなった。だけど、部屋を用意しても、そこまでに行く手間が掛かるでしょ?
そこで俺は考えたの。切り取った一室の空間を部屋に設置するのではなく、”シルバニアファミリー”のような小さい部屋をいくつも用意して、扉の前に設置して色付けする。
あとは、この扉と、その対応する色を合わせてドアノブを回して、必要な時に必要な部屋を呼び出すだけなのだが、このまま呼び出しても部屋が小さいままなので、呼び出された部屋だけが自動で大きくなる機能を入れておいた。
その結果‥‥この「扉渡り」が実現した。
あ、それと今、この扉渡りに設定している色は全部で5色で、赤は「実験室」、青は「寝室」、緑は「店の裏手」、白は「緊急脱出部屋」、そして最後は黒だが‥‥黒の中身は秘密だ。
もう少ししたら‥‥分かるよ。
そうして扉渡りで、赤色の実験室へと入った。




