第6話 召喚された他の勇者達 《後編》
勇者達が出発して、既に一ヶ月が経っていた。その間はとても静かで、毎朝聞こえていた訓練の声がなくなり、何処か寂しさを感じていた。
いつも聞いていた声がなくなるだけで、こうも寂しくなるのか。最初は犬猿の仲で、互いをいない者として扱っていたのに、魔王という共通の敵が現れたことで、互いを理解し合える関係になれた。
そういう意味では、魔王が現れたことは俺達勇者にとってはプラスだったのかもな。いや、そんなわけないか――さて、勉強の続きをしよう。
そうして俺は勉強に励んでいる時だった―――勇者の勝利を告ぐ速報が届いた。
すると、すぐさまその速報は国中に轟き、勝利を掴んだ勇者達を出迎えたのは”大歓声”だった。全国民が勇者の帰国に歓喜していた。
俺は、そんな勇者達に「お疲れ様。」と短い言葉を残して、国を去った。
◇
俺が国を去った理由は三つある。
まず一つが、20年かかると言われた錬金術を、5年でマスターしてしまったこと。そして二つ目、錬金術をマスターしたことで、王からは約束通り異世界の技術を求められていたこと。
最後の三つ目は、魔族という人族の共通の敵がいなくなった以上、今度は人族同士で争うことになると分かったからだ。
城の連中は、勇者達や国民にはバレないように、魔族戦争終結後は勇者を使って色々と悪巧みをしていることを、俺は偶然にも知ってしまったのだ。
本当なら、この事実を他の勇者にも伝えたかったが、俺がその事実を知っていることがバレてしまった。
これは俺のミスだ。最後まで隠し通すつもりだったが、バレてしまった以上、国に残ることは不可能だった。
だから、俺は国を去った。自分の作った発明品が人同士の戦争に使われるなんて‥‥あり得ない。俺の発明は戦争の為ではなく、”人が楽をして暮らす為”に作った物だからだ!!戦争に使われるぐらいなら‥‥全て破壊する!!
そんなわけで、せっかく仲良くなれて、魔王討伐をちゃんと祝いたかった。一緒にテーブルを囲んで、旅の話や同郷の話をしたかった。俺達はもっと早くにぶつかり合って、腹の中にある物を吐き出し合うべきだったんだ。
――すまん。さようならだ。
◇
こうして俺は帝都”ナヴォリ”を去った。そして白石正人だと分かる可能性があるものは全て隠し、新たな名前として「リーヴァ」と名乗り、小さな街でしがない「ポーション屋」をオープンさせた。




