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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第55話 その不在に気付いた時。

《――祈視点。》


私は今日をずっーーと待っていた。ようやく正人が帰ってくる。しかも、大勢の人を連れて戻るという連絡もあったから、私たちもそれに備えなければならない。


きっと移動は簡単には行かない。きっと何かしらの問題が起きて満身創痍な状態で戻ってくることが予想される。なら、みんなが安心して眠れるようにしておく必要があった。


部屋の掃除、布団の確保、人の誘導、医療品、食料と私たちに出来るものと手段で迎える準備を整えた。その結果、準備の甲斐もあって人の受け入れは驚くほどスムーズだった。


そして、何よりも驚いたのが役所で別れた”友達”との再会を果たせたことだった。


「‥‥え!?まさか‥‥祈??本当に祈なの!?」


と、そこには学校で一番仲が良かった親友の『結』の姿があった。


「‥‥え!?結なの?本当に結なの?」


もう二度と会うことは出来ないと思っていた親友がそこにはいた。私たちは互いに走り、全力で抱きしめ合い涙を流していた。


「う"うう‥‥祈!!ごめんね。祈だけ置いて行って!!何度も何度も探そうとしたの!!でも、私たち‥‥怖くて‥‥出来なかった。親友として‥‥ごめん!!」


「いいの。私が同じ立場だったら‥‥きっと同じことをしたと思うし。また、こうして出会えたんだから、良かったのよ。それで、他の人は?」


「それなら、あそこに。」


結が指を向けた先には、みんながいた。


同じ生徒会で一緒に活動していた「清水(しみず)紗衣(さえ)」ちゃんに、初めてクラスで結と共に同じクラスになって仲良くなった「松田(まつだ)春乃(はるの)」ちゃん。


そして結と同じ小学生の頃から付き合いのある幼馴染の「錦戸(にしきど)亮太(りょうた)」くんと、その友達の「大道(おおみち)尚弘(なおひろ)」くんの姿があった。


みんな、あの役所でバラバラになった私の友達だ。


「‥‥みんな。無事だったんだ。本当に良かった。もう、二度と会えないと思っていたから。本当に良かった。」


「それは‥‥俺もだ。もう二度と会えないと思っていた。だけど、こうして出会えてよかった。でも、ごめん。幼馴染の俺が‥‥探しにいくべきだった。」


亮太が私に頭を下げると、他のみんなも「ごめん。」と言って謝罪をした。


「みんな止めてよ。こうして全員無事に出会えたんだからいいんだよ。それで、みんながここにいるってことは‥‥みんな『リーヴァ』に連れて来られてたの?」


「そうだよ。みんなあの人に連れられてここにいる。あの人が言っていた女の子って祈のことだったんだね。」


「うん。私はだいぶ前に助けてもらってここにいる。」


友達との再会に夢中になっていて、周りの状況なんて全く目に入っていなかった。


笑って、泣いて、言葉を交わして――失ったと思っていた時間を取り戻すように、その場の温もりに身を委ねていた。


――だからこそ、気付くのが遅れた。


既に人の案内は終わっている。誰もが一息ついている空気の中で、本来そこにいるはずの人の姿がない。


正人がいない。リタちゃんもいない。そして――リルちゃんの姿も、どこにも見当たらなかった。


さっきまであったはずの安心感が、音もなく崩れていく。胸の奥に、冷たいものがゆっくりと流れ込んでくるような感覚。


――嫌な予感がする。


ただの思い過ごしであってほしいと願うのに、その感覚だけは、はっきりと輪郭を持っていた。今まで何度も見てきた。正人の周りで起きる“何か”。それはいつも、予想よりも悪くて、そして一瞬で状況を変える。


だから分かる。


これは――何かが起きている。しかも、良くない方向で。


「‥‥みんなちょっとごめんね」


自分でも驚くほど声が落ち着いていた。でも、足はもう止まらない。考えるより先に、体が動いていた。


きっと、大丈夫。少し遅れているだけだ。二人を迎えに行かないと、と出口の門を開けようとするが、ガチャ!!と反対から”何か”で門の扉は固く固定されていた。


間違いなく、リルちゃんの仕業だ。


それが示すことは何かとんでもない問題が起きたということだ。そして、その問題に私を巻き込まないようにリルちゃんが門を閉じたんだ。


「‥‥ん!!‥‥開いて!!」


必死に力を込めて門を押すが開かない。


私は行かないといけないの!!正人に守られるだけの弱い人じゃないの!!横に立って一緒に戦うことが出来るって証明しないとダメなのよ。だって、私と正人は対等な”契約関係”なんだから、一方に全てを押し付けることなんて出来ないし、したくない!!


「‥‥お願いだから‥‥開いてよ!!」


そんな切実な願いは届かなかった。扉は祈一人の力では絶対に開くことはない。だが、それが一人ではないのなら話は変わる。


「俺も手伝うぞ。」


という声が後ろから聞こえてきた。その人は、役所のゾンビを全て倒して私たちを守ってくれた人だった。ここでもまた一つの出会いが起きていた。


「あなたは‥‥あの時の。」


「あぁ、そのことは今はいい。君は、リーヴァの元に行きたいんだろ?」


「はい。」


「なら、手伝う。俺もあいつに助けられたからな。ここで恩の一つも返しておかないと気が済まない。」


と一人、また一人と祈の元に人が集まった。そして、みんなで門を押すとガチャと人一人分の隙間が生まれた。


「行くんだ!!」


という声と共に祈は門を出て、リーヴァの元へと向かう。

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