第54話 迫り来る群れ。
「堂島さん!!急いで中に入ってください!!そして中に入ったらリタと同じぐらいの背丈をした、名前はリルに俺が呼んでいると伝えてください。絶対に外には出ないでください。」
「いきなりそんなことを言いだして、何があった?」
「説明している時間がないんです!!いいから早く行ってください!!」
「あぁ‥‥分かった。呼んでいると伝える。」
と堂島さんは門の中へと入って行った。
‥‥どうする?どうやって対処する?あの数のゾンビをどうやって排除する?いや、ここは戦わず音を立てずにやり過ごすか?無理だ。あいつら、電車の音につられてここまでやってきた。音が消えた今、奴らはここで止まる。
ある程度なら過ぎ去ってくれるかも知れないが、拠点がここにある以上は戦闘は避けられない。なら、第一に考えるべきはここの防衛だ。
「リタ!!これを使え!!」
リタに渡したのは”高純度の魔石”だ。ホムンクルスは高純度の魔石を使うことで自身の動力を何倍にも引き上げることができるのだが、もちろんデメリットも存在する。
それは、その出力の高さゆえに核へのダメージが大きいことだ。使い続ければ一日も持たずしてリタの核は壊れてしまう。
だから、今までは絶対に使ってこなかったが‥‥今、躊躇している場合ではない。使える物は何でも使う。それでリタの核が壊れたとしても、また直して復活させればいいだけだ。
「‥‥分かりました。前線は私が止めます。その間にマスターは対抗策を考えてください!!」
リタは魔石を体へと押し当てて核へとその魔力を流し込んだ。すると、リタの体は淡い青い光を放つと、その光を身にまとった。
そして――
「行きます!!」
とゾンビへと駆け出した。
頼む。リルが来るまで出来る限り抑えてくれ!!
◇
《――拠点視点。》
正人が連れて来た人達を誘導していたのは、子供たちと祈であった。事前に正人から来る人の人数と性別は共有されていたので、特に誘導の問題もなくスムーズに行われていた。そして、最後の人が拠点へとやってきて、残り正人とリタだけとなったときだった。
拠点の扉が勢いよく開かれて――
「リルという人はいるか!?」
と一人の男が大声を出していた。
リルは多少の警戒をしながら男の元へと近づいた。
「どうしましたか?私に何か用ですか?」
と尋ねると
「本当にそっくりだ。」
と訳の分からない言葉が返ってきた。
「はい?」
「すまない。実は、リーヴァから君を呼んでくるように言われてきたんだ。リーヴァはかなり焦っている様子だったから、きっと問題が起きたに違いない。」
「ッ!!」
その話を聞いたリルは拠点を飛び出した。もちろん向かう先はリーヴァのところだ。
リルは事の緊急性を理解していた。マスターが私たちホムンクルスでも自分の言葉でもなく他の人を使って事を知らせるということは、自分もリタも手が離せる状態にないことを示している。そして、祈さんではなく私を呼んだということは、その問題は戦闘が起きているということ。
ということまでリルは一瞬で理解したのだ。
なら、リルのすることは一つだ。マスターのところへ向かい手を貸すのはもちろんだが、この場所の防衛と祈の安全を任されているということは、この戦闘に祈さんを巻き込んではいけない。
それがリルの使命である。
「すいません。祈さん。」
リルはガチッ!!と誰も出られないように門に鍵をして封鎖した。これで出ることはもちろん、入ることも出来ない。
これで私たちが負けたとしても中の人は守られる。とリルは急いでマスターのところへと向かうのであった。




