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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第50話 最後の一つ。

補助変電設備へと向かい始めて、既に三ヶ所の電源を入れることに成功した。残すは――あと一ヶ所となり、その場所はこの一本道を抜けた先にある。


だが、問題なのはこの一本道だ。


道の途中途中には小さくはあるが地上と繋がる階段があり、外からもゾンビが入ってくることが出来るし、その道には数百というゾンビが立ち塞がっている。


今までは脇道にそれたりとか、バレないようにと工夫をして進むことが出来たが、こうもゾンビをかわせる道がないとなると、正面から進むことを余儀なくされる。必然的にゾンビを排除する必要がある。


戦闘をすると、音で外にいるゾンビにもバレるし、なによりも囲まれる可能性も出てくる。


「なら、取る選択は一つしかない。どれだけ音を立てないように動いてもバレることが決まっているなら、敢えて爆音の音を出して、一瞬で目的地まで行ってやる。」


そう言って、空間からバイクを取り出した。


そう。俺はバイクでこの一本道を駆け抜けるつもりでいる。どうせ戦っても全ては排除できないのなら、戦わず一瞬で駆け抜ける方が速いし、効率的だ。


――ブルルルルッ!!


エンジンを掛けた瞬間、地下通路に低く唸るような振動音が響き渡った。静まり返っていた地下の空気が一瞬で震え、その音に反応するように、暗闇の奥や階段の影からゾンビたちがぞろぞろと姿を現し始める。


腐った肉を揺らしながら、足を引きずり、呻き声を上げながら、音のする方へと集まってくる。俺はわざとエンジンをさらに吹かした。


――ブォォォォンッ!!


轟音が地下通路に反響し、コンクリートの壁に何度も跳ね返る。その音に引き寄せられ、ゾンビたちが一斉にこちらへと向きを変え、のろのろと歩き出した。


もっとだ。まだ足りない。


さらにアクセルを煽り、エンジン音を響かせる。すると通路の奥だけではなく、途中の階段からも次々とゾンビが降りてきて、まるで黒い濁流のようにこちらへと集まり始めた。


だが、それでいい。


ゾンビがこちらに集まれば集まるほど、その背後には空間が生まれる。俺はアクセルを握ったまま、ゾンビの動きをじっと見極めた。


もっと引き寄せろ。

もっと近づけ。


そして――十分な空間が出来た瞬間。


「今ッ!!」


アクセルを一気に回す。


――ドンッ!!


爆発するような加速と共にバイクが前へ飛び出した。タイヤがコンクリートを蹴り、地下通路を弾丸のような速度で駆け抜けていく。


ゾンビたちは突然の速度に反応出来ず、目の前を走り抜けるバイクをただ追うことしか出来ない。だが、進めば進むほどゾンビの数は増え、通路はどんどん狭くなっていく。


左右から伸びてくる腐った腕。足を引きずりながら飛び出してくる影。ぶつかれば終わりだ。俺はハンドルを大きく切り、迫ってくるゾンビの隙間を縫うようにして走り抜けていく。


右へ、左へ、ギリギリで回避しながら、まるでスラロームのようにゾンビの群れを突っ切る。


その時だった。


「うぇぇぇ」


ゾンビの手が急に前に出て来た。


俺は避けることが出来ずに滑るようにして倒れた。それなりの速度が出ている状態で滑ったので、地面とバイクと足が挟まれたせいか、右足に激しい痛みを感じるが、こんなところで止まっているわけにもいかないので、バイクを無理やり退かして前へと進む。


ぐっ‥‥目的地はもうすぐだ。痛みは忘れろ!!


足を引きずりながら前へと進むが、最後の壁と言わんばかりに三体のゾンビが行く手を阻んできたが、魔銃の散弾モードにして吹っ飛ばした。


そして退路を断つようにして壁を錬成して、最後の補助変電設備へと到着した。


「はぁ‥‥はぁ‥‥きつかったが。何とか着いた。これで最後の電源だ。」


マイマイくんを接続して、その電力を復旧させた。


「‥‥これで任務完了だ。さて、問題はこのあとだな。」


現状の俺は完全に袋のネズミ状態にあった。退路を壁で閉じて、こんな小さい部屋に立て籠もる形になっている。そして、逃げる為のバイクも失い‥‥逃げる手をなくしていた。


足の怪我はポーションで回復できるから、どうにでもなる。だが、問題なのは脱出方法だ。今も壁には大量のゾンビが俺を狙ってバシバシと叩いている。そして、その音に引き寄せられてゾンビの数は増える一方だ。


「‥‥あはは。これは少し厳しいかもな」


――と俺の自嘲めいた言葉が空へと消えた。

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