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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第49話 危機は当然に。

《――正人視点。》


地下にある補助変電設備が四ヶ所あり、一つでも二つでも足りない。四つ全てを動かして、あの電車は走る。


つまり、俺は今から、このゾンビだらけの地下を一人で回り、四ヶ所の補助変電設備を起動させなければならない。


神崎の説明によると、補助変電設備は地下駅の設備区画に設置されているらしく、普段は保守員しか立ち入らない場所となっており、電車の運行を支える為の裏方の施設。


だが、今となってはそんな事情は関係ない。地下はすでにゾンビの巣窟になっている。何処を見てもゾンビゾンビとまともな人の姿はない。


こんなゾンビ世界になる前であれば、この駅も人で溢れ賑わっていたというのに、今、聞こえてくるものはゾンビの気持ち悪い呻き声と鼻がもげそうになるぐらい腐臭と血の匂いだけだ。


はぁ‥‥本当に嫌になる。この匂いを嗅ぐと戦争の光景が思い返される。それら全ては忘れたい過去なんだけど無理な話か。俺の手は死によって汚れているのだから。


「‥‥もう苦しむ必要はない。」


そう呟いて、俺は地面に手を触れた――錬成。


次の瞬間、地下通路の床が唸るように隆起し、鋭い石槍が無数に突き上がり、ゾンビの身体を貫いた。腐った肉が裂け、血が通路に飛び散った。


串刺しになったゾンビが崩れ落ち、通路は一瞬で死体の山に変わった。


これが錬金術の本当の力だ。物質に触るだけでどんな物質も簡単に変形させることが出来てしまう。ゾンビは何百体いようと関係ない。この地下は錬金術師にとって無限の資源がある場所だから。


「さて、行くか。」


ゾンビたちの死体の山を越えて、目的地へと向かう。


《――リタ視点。》


マスターと離れて私はホームにいるゾンビを必死に倒していた。


「ここにいる人を守ってくれ。」という命令を守る為に、私が出来ることはゾンビを倒すことだった。


マスターから与えられたその言葉は、私にとって絶対の命令。だからこそ私は剣を振るい、この場所にいる人々へゾンビを一歩たりとも近づかせない。


ここにいる誰一人として死なせない為に。そして、マスターが守ろうとした人たちを一人たりとも傷つけさせない。その思いが胸の奥で燃え続けている限り、私の体は止まらない。


ゾンビを狩る、その姿はゾンビたちにとっては悪魔だと言っていいだろう。どれだけ束になって襲って来ても、リタに触れることすら出来ない。だからといって奴らには撤退などという思考はなく、ただただ呻き声を上げて、前へ前へと人を食う為に進んでくる。


もちろん戦っているのはリタだけではない。


この日の為に必死に訓練をした者たちも戦っている。リーヴァが教えたバディでの戦いをしっかりとこなせているし、銃の扱いも完璧とまでは言えないが、それなりの命中精度を保てているのでしっかりとゾンビの排除に役立っている。


そして、戦えない者たちは車に残っている物資を電車に運んだり、戦闘で疲労している者たちに水やタオルなどを持って行き労っていた。


ここにいる全員は誰一人としてサボっている者などいない。皆が今、出来ることを必死にやっていた。それは出発前にリーヴァが言っていた。


『自分一人でどうにかする必要はない。恐怖を抱いている者同士が手を取り合って、少しの安心感と勇気を持てばいい。そうした小さな物が人を伝って大きな物になるんだ。』


――その言葉を皆が体現していた。


そう。一人で勝つ必要はない。一人で全てを熟す必要はない。皆が皆で少しの分担をすれば、どんな辛い戦いであっても、必ず乗り越えることが出来る。


この事実は何処の世界であっても変わらない事実だ。

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