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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第48話 主と従者。

「マスター!!ちょっと待ってください!!何で、私とマスターが別行動なんですか!?マスター!!」


背後から必死な声が飛んできた。俺は足を止めた。そして短く一言だけ――


「それが最善だからだ。」


と答えるが、リタが納得するはずもない。


リタたちホムンクルスにとってマスターという存在は、自分たちの命よりも重い。何を犠牲にしても守らなければならない存在だ。例え主の命令であっても、主の危機になるのなら命令すら無視するほどだ。


「ダメです!!絶対に行かせません!!」


リタは俺の前に回り込み、行く手を塞いだ。


その表情は必死そのものだった。普段の冷静さは微塵もなく、まるで子供のように必死に俺を止めようとしている。


このまま押し問答を続けても何の意味もない。時間を掛ければ掛けるほど状況は悪くなる。だったら――ここは無視するより、しっかり納得してもらう方が早い。


「リタ。」


俺はリタを真っ直ぐ見た。


「お前は何に納得できないんだ?俺が一人で行動することか?それとも俺が危険になることか?どっちだ?」


「その両方です。」


リタは迷いなく答えた。


「私たちホムンクルスにとってマスターという存在は、他のどんなことよりも優先されます。ホムンクルスはマスターに危険な道へ行ってほしくないと思っています。でも、私たちが止めてもマスターは止まりません。」


リタの手が、ぎゅっと握り締められる。


「だから、せめて私たちの手が届く範囲に居てほしいのです!!」


声が震えていた。


「それが、私たちの存在意義なんです!!マスター!!お願いです!!私を傍においてください!!」


「‥‥お前の言い分は分かった。だが、無理だ。今回は別々だ。これは決定事項だ。」


そう言って横を通り抜けようとするが、リタは諦めなかった。俺の手を掴み、必死に止めてくる。その手は強く、離すつもりなど最初からないようだった。


俺はその手を引き剥がそうとするが、指は食い込むように握られている。離れない。その必死さにイライラだけが募った。


「‥‥いいのですか?」


リタの声が低くなる。


「マスターがもし、ここで死ねば‥‥もう、二度と祈さんとは会えないのですよ?」


その言葉を聞いた瞬間――俺の中で、何かが爆発した。


「じゃあ!!」


気付けば怒鳴っていた。


「お前は‥‥亡くなった人へ責任が取れるのか!?」


リタの肩がびくりと震える。


「お前はホムンクルスだから壊れることはあっても死ぬことはない!!俺も錬金術があれば大抵のことはどうにか出来る!!


だけど、だけど――人の命だけは戻すことは出来ないんだ!!」


声が自然と強くなった。


「今、俺たちが選択を間違えたら、ここにいる人達はみんな死ぬんだ!!」


俺はリタを睨んだ。


「お前は‥‥その責任を取れるのか!?」


「‥‥それは‥‥」


言葉が詰まり俯いた。死者への責任など誰も取れるわけがない。人の命はみな一つで、これを失ったら全てが終わりで、死んだ者には最大の礼として祈ることしか出来ない。


「なぁ?無理だろ!!」


俺は吐き捨てるように言う。


「だから、俺たちが守って導く必要があるんだ!!」


すると――リタが顔を上げた。


「なら、私が行きますよ!!マスターはここにいる人たちを守ってあげてください!!これならマスターの身に掛かる危険は減ります!!」


必死な声だったが、俺の答えは――


「ダメだ。」


と即答した。


「お前には知能がない。」


リタの目が見開かれる。


「お前はリルとは違って、感情と戦闘に能力を割り振ってある。だからお前には機械を扱うだけの知能がない。だから俺がやらないとダメなんだ。」


そして俺は、静かに続けた。


「リタが持つ戦闘能力は俺を優に超えている。だから、ここに残って、この場所を守ってほしいんだ。」


俺はリタの目を見る。


「俺を見ろ。」


と言って少しだけ笑う。


「俺がこんなところで死ぬと思うのか?俺はお前たちホムンクルスの主だぞ?ゾンビ如きに負けると思っているのか?お前たちの主はそんなに弱いのか?」


「‥‥弱く‥‥」


リタの肩が震える。


「弱くないですッ!!」


涙を堪えるような声だった。


「私たちのマスターは‥‥ゾンビなんかに‥‥負けるわけないです!!」


リタは強く言い切った。


「マスターは強くて、カッコよくて、何だってしてくれる‥‥最高の最強のマスターです!!」


「もう心配はいらないな?俺は絶対にここに戻ってくる。そして皆で家に帰ろう。やれるな?リタ。」


と言って最後の確認を取ると、リタは強く頷き、まっすぐな瞳でこっちを見てきた。


「はい!!任せてください!!マスターが帰ってくるまでは‥‥ここは絶対に落とさせません!!私がみんなを守って見せます!!」


「なら安心だ。行ってくる。」


そう言うと、リタはゆっくりと手を離した。俺はその手を振り切るようにして、一人で”補助変電設備”へと向かうのであった。

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