第46話 生存の道をこじ開ける。
無謀な突撃と感じるかもしれないが、この作戦こそが成功率が高く、死者をゼロにできる可能性がある唯一の作戦だ。この作戦は多くのリターンがあるが、その反面かなりのリスクがある。
そのリスクとは”電車の状態”を確認できていないということだ。
動く状態にあるのか?走る線路は大丈夫なのか?その全てが未確認であり、現物を見ないことにはその判断は下せない。全ては行ってみて初めて分かる。
で、無理だった場合はみんな仲良く死ぬことになる。それは、運命として受け入れてもらうしかない。全ては運が悪かったと思って死んでもらう。
◇
「全員聞け!!このままここで戦闘をして俺たちが生き残る道はない!!そして、撤退して病院に戻れる保証もない!!だから、俺たちは”前に進む”ことにする!!」
ゾンビの頭を撃ち抜きながら叫ぶ。
「今から爆弾で瓦礫を吹き飛ばす!!そして、爆発と同時に突っ込む!!」
銃声とゾンビの唸り声が入り乱れる中、全員がこちらに意識を向ける。
「――地下に入ったあとは、電車を目指す。神崎はいるか!?」
「は、はい!!ここです!!」
すぐ近くから焦った声が返ってきた。神崎は銃を撃ちながら必死に叫び返している。
「電車の運転はお前に任せる!!」
「じ、自分ですか!?」
「そうだ!!この中で電車を運転できる人間はお前しかいない!!お前がやるんだ!!」
神崎はゾンビを撃ち倒しながら声を張り上げる。
「わ、分かりました!!」
「そう怖がるな!!お前の身はここにいる全員で守って、最後まで届けてやる!!お前は運転のことだけを考えておけばいい!!出来るな!?」
「‥‥は、はい!!だ、だいじょう‥‥です!!やれます!!」
「よし!!なら、全員突撃に備えろ!!何があっても車から手を放すな!!落ちれば終わりだ!!」
迫ってくるゾンビを撃ち倒しながら叫ぶ。
「リタ!!お前に爆破のタイミングは任せる!!」
「了解です。兄さん。」
リタはすでに起爆装置を握っていた。
その間も俺たちはゾンビを殺して、殺して、殺して、殺しまくる。
撃って、斬って、蹴り飛ばして、群れを押し返す。
そして――リタの親指が起爆スイッチの上で止まる。その一瞬、全員が息を呑んだ。
「行きます!!」
ドカーーン!!
凄まじい爆発音と共に瓦礫が吹き飛び、地下へ続く入口が一気に開いた。土煙と破片が宙に舞い上がり、衝撃が空気を叩きつける。
「突っ込め!!」
地下に入る車列の順番は先頭がリタで、その後ろに神崎と堂島さん達の銃隊。その後に生存者を運ぶバスが二台と、近接戦隊の車が三台続き――最後に俺となる。
本来であれば生存者のバスを守るのと、全ての状況が把握できるバスの位置にいたのだが、今回は別の目的の為に最後尾へと回った。
そして車列は特に乱れることなく地下へと突入した。
もちろん最後に入るのは俺だ。
俺は誰にも見られていないことを確認して、錬金術を使い空いた穴を塞ぐ。
そう。これが別の目的だ。
今回の作戦において電車以外での失敗の要因になるのが、外からの大量のゾンビによる攻撃だ。爆破によって相当な音を出した。外のゾンビたちはこの音に釣られてたくさん寄ってきて、穴の中へと入ってくるだろう。
だから、穴を塞ぐ必要があり、こればかりは錬金術を使う必要があった。だが、これだけの人がいるなかで錬金術を使う暇などないし、この能力だけはバレるわけにはいかないので、全員の視線を外す必要があった。
そして全員の視線が外れるタイミングが一箇所だけある。それは地下に入る瞬間だ。この瞬間だけはみんな後ろではなく前に注目する。だからこそ、誰にも見られずに錬金術を使うことが出来る。
そうして穴は完璧に塞ぐことに成功した。
後は‥‥電車が無事なことを祈るだけだ。




