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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第45話 袋のネズミ。

「こっちだ!!クソゾンビ野郎!!」


盾を構えた男がゾンビを挑発すると、腐った腕が飛びかかるのと同時に盾を出して、ゾンビを突き飛ばす。そして、横にいたもう一人の男が‥‥。


「おらッ!!死ね!!仲間の仇だ!!」


と槍を突き出してゾンビの頭蓋を貫いた。ぐしゃり、と嫌な音を立ててゾンビが崩れ落ちる。


バスの窓から外を見ていた女が叫ぶ。


「みんな!!限界まで引き付ける!!まだよ‥‥まだ‥‥」


ゾンビが車の目前まで迫る。


「今よ!!」


次の瞬間、バスの窓から一斉に鉄槍が突き出され、迫ってきたゾンビの頭を貫いた。


車列の後方では銃声が響く。


「俺は右を抑える!!お前は左だ!!」


「任せろ!!」


パンッ!!パンッ!!


乾いた銃声と共にゾンビの頭が弾け飛び、道路に崩れ落ちた。


前も、後ろも、右も、左も全方向で激しい戦闘が起きている。全員の力を合わせて一体、また一体とゾンビを倒すが、地下から出てくるゾンビの数は倒す数よりも多く、押し切られるのは時間の問題であった。


もちろんそんなことは俺も分かっている。分かってはいるが、現状を打開できる案はない。前方は道路の崩壊によって進むことは出来ないし、かと言って後方に戻ったところで何の解決にもならない。


俺の頭の中では“撤退”の二文字が浮かぶが、俺は頭を振ってかき消す。


撤退なんてあり得ない。ここで撤退を選択すれば、人は二度と行動できなくなる。今日の日のことを思い出して足が動かなくなり、二度と前に進めなくなる。人は成功の記憶より失敗の記憶を強く覚えるからだ。


だからこそ、この一回で決めきる必要があるんだ!!何か‥‥何か‥‥何かないか?この現状を全て打開出来る方法はないか!?


と必死で考えている時だった。


隣から「リーヴァ!!そろそろヤバいぞ!!」という堂島さんの声でハッとさせられた。


「分かっている!!今、必死で考えている!!もう少しだけ‥‥耐えてくれ!!」


「考えているだと?現状を見ろよ!!既に前からゾンビが来てるんだぞ?みんな限界だ。このまま続けていたら誰かが死ぬぞ!!今は、撤退しかないだろ!!」


「ダメだ!!撤退はダメだ!!何があっても後ろに下がるなんてことはしない!!今の俺たちには、もう撤退なんていう案は残っていない!!」


「リーヴァ。お、お前‥‥周りをよく見ろ!!あのゾンビの数が見えないのか!?この状況で撤退しないなら、お前は、あの中に突っ込めとでも言うつもりかぁ!?」


「‥‥‥」


そうだ。そうだ。そうだよッ!!何も道路だけが前に進む道じゃない!!


この道路の下には地下鉄が走っている。


前に進む道として道路よりも、もっといい物が残っているじゃないか!!あぁ、何で今までこの発想を思いつかなかったんだ?本当に、本当に‥‥俺はバカだッ!!


「そうだ。地下に突っ込むぞ。」


「はぁ?お前‥‥今、なんて言った?」


「だから、突っ込むと言ったのだ。」


「正気か!?あの、大量のゾンビの中に突っ込む気なのか?」


「だから、そうだと言っている。このまま撤退を選択すれば、人は二度と前に進むことが出来なくなる。人っていうのは成功よりも失敗を強く覚えてしまうから、その失敗と恐怖で動けなくなるだろう。だからこそ、この一回ですべてを決める必要がある。」


「だとしてもだ。撤退が出来ないからって無暗な突撃はないだろう!!みんな必死で!!生きる為に戦っているんだ!!それをお前は‥‥俺達に突っ込んで死ねと言うのか?」


「そんなことを言うつもりはない。よく考えろ。地下には車よりも速い電車がある。俺が電車に手を出さなかったのは、その移動が徒歩になるからだ。でも、ここからなら違う。電車までの長い道を徒歩ではなく車で進むことが出来る。


そして、電車にまでたどり着けば後は耐えているだけでいい。電力については俺とリタで何とかする。」


「運転は?電車の運転なんてしたことがないぞ。」


「一人いただろ?堂島さんからもらった名簿に元電車の運転士がいたはずだ。確か――名前は、」


「神崎さんだ。」


「そうだ、その人だ。この作戦であれば無意味な突撃ではなく、目的を達する為に一番成功率が高い行動になるはずだ。どうする?それでも撤退するか?」


「‥‥分かった。その作戦で行こう。」

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