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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第42話 審判の日。

――出発当日。


俺の目の前には、全ての生存者が集まっている――そう、時は来たのだ。


「みんな、昨晩はよく眠れたか?俺はよく眠れた。さて、いよいよになるが、やっぱりみんなは恐怖を感じているか?外にいるゾンビを見れば足がすくむか?その恐怖も当然のものだ。自分だけじゃない。周りを見れば自分と同じように恐怖を抱いている者がいる。


だから、その恐怖を自分一人でどうにかする必要はない。恐怖を抱いている者同士が手を取り合って、少しの安心感と勇気を持てばいい。そうした小さな物が人を伝って大きな物になるんだ。


きっと、ここにいるみんなならやり遂げることが出来ると俺は信じている。だから、最後のテストをしたいと思っている。」


テストと伝えると周りは一気にざわつくが、全てを無視してリタを呼んだ。横からリタがゆっくりとやってきたが、みんなの目はリタではなく、その手に捕まえられている田中に向いた。


「昨晩だ。みんなが寝ている間に、みんなが必死に作った車の燃料タンクに穴を空けようとしているところを、俺とリタで捕まえた。この男だけは‥‥みんなが必死にやるなかで一人だけ変わろうともせず、あまつさえ邪魔をしようとしていた。


俺は、そんな人間を許すことはできない。みんなもそうだろ?」


「あぁ!!」

「そうだ!!」

「ふざけるな!!」


俺の言葉を聞き、あちこちから罵詈雑言が田中に向かって飛んできた。


「ふ、ふざけるな!!俺は‥‥この病院長の息子だぞ!!ここで一番偉いのは俺だ!!今まで散々住まわせてやったのに、用がなくなれば出て行くなど‥‥許されないぞ!!それにだ!!こんなわけも分からない仮面を着けた奴の言うことを信じるのか!?奴は嘘つきだ!!きっと、軍の連中だって死んでない!!きっと明日でも助けは来る!!」


田中は少しでも味方を増やすために必死に叫ぶが、その言葉はここにいる者に届くことはなかった。最後は同じ病院で勤めていた神崎さんが出てきて「もういいわ」と、その言葉を止めた。


「‥‥ぐううう!!か、神崎!!お前‥‥病院の恩を忘れたのか!?今までお前にしてやったことを忘れたのか!!!!答えろ!!神崎!!」


「忘れてなどいません。この病院ではたくさんのことを学ばせていただきましたし、今もこの病院には感謝をしています。


ですが!!その感謝は病院と院長にであって‥‥あなたに対してではありません。この病院で務めている者は全員‥‥あなたのことを嫌っています!!


偉そうで、父の名前と権力を使って若いナースにも手を出して、やりたい放題する。そして、みんなで協力して頑張ろうとしている時に、あなたは‥‥それすらも邪魔をする。そんな人の言葉を聞く人などここにはいません。」


「か、かっ‥‥神崎!!!!!!!――うぐっ!!放せっ‥‥このガキぃぃ」


「あんたは変わらないな。さて、神崎さん。今の言葉がここにいる全員の言葉ってことでいいんだよな?」


「はい、そうです。」


「そうか。でもな、今の世界は言葉だけで済むほど甘くないんだ。言葉は本当のことも言えるが、嘘も言えてしまう。だからこそ、その言葉が真実であるかどうかを示すには――リタッ!!」


「はい。」


リタは田中の頭を掴み上げて両膝で立たせた。その姿は死刑執行の時の罪人そのものだった。そして、俺は腰から銃を取り出して神崎さんへと渡した。


「‥‥行動しかない。分かるな?」


「‥‥はい。」


これはリーダーである神崎さんの仕事だ。神崎さんは良い人だ。優しく人を思いやれる心を持っているが、それは、この世界では欠点にもなる。悪人を悪人として認識して甘えなき罰を与えることができるのか?この世界に順応出来ているのか‥‥最後のテストだ。


神崎さんは田中に向けて銃を向ける。当然、田中は逃げようとするが、リタからは逃げることはできない。なら、出来ることは必死に“乞う”ことだ。


「わ、分かった‥‥すまなかった。神崎、俺はこれから変わる!!みんなの為に何だってする!!た、頼む‥‥殺さないでくれ!!俺が‥‥悪かった。」


「そうです。あなたは‥‥変わるべきだったのです。このような世界になる前に変わっていれば、きっとあなたにも仲間がいたはずなのに、あなたは変わらず‥‥怠惰な日々を過ごし続けた。全ては―――あなたの選択です!!」


神崎さんは引き金に指を乗せた。


「や、やめろ!!神崎‥‥お前‥‥お前は‥‥医者だろ!!」


「――!!バンッ!!」


引き金は引かれた。だが、その弾は田中には当たらず、その横に着弾していた。


「田中 秀逸をこのグループから追放します。今後、私たちに近づくことは許しません!!この病院に残りたいなら好きにするといいです!!」


と言ってその場を離れて銃を渡してきた。そして小さく「すいません。私は――医者なので。」と謝って行った。


「そうか。分かった。」


銃を受け取った。そしてリタの方を見るとリタは“どうしますか?”とこっちを見ていたので、思念伝達で「まぁ、合格かな」と言っておいた。


「よし。なら田中の処罰は神崎さんが言った通りにして、他の者は全員配置に着け!!出発するぞ!!」


二度と振り返る者はいなかった。解放された田中は何かを叫んでいるが、その言葉は誰の耳にも入っていなかった。生きているのに死んでいる者として認識された。その対応は死より辛いことだろうが、誰も同情などしない。


――全ては自業自得なのだから。


そうして全ての車は病院を出発した。目的地は、桜ノ宮駅だ。

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