第40話 正人がいない日々。
普通の日々‥‥それは、当たり前で退屈な毎日だと思っていた。
毎日決まった時間に起きて、同じ通学路を歩いて通う学校。一限から六限の授業が終わると、生徒会の仕事を熟し、家に帰れば宿題をやり、晩御飯を食べて‥‥また、明日を迎える。
そんな生活は私の中では何処か”退屈”を感じていた。だけど、そんな当たり前の生活の”有難み”は今になって分かる。
朝起きたら家族からの”おはよう”が、どれだけ尊いことだったのかが分かる。家族みんなで平和に過ごせていたことがどれだけ素晴らしいことだったのかが、分かる。
だから、もう二度と”退屈”などと思うことはない。家族とはバラバラになってしまったけど、きっとまた何処かで出会えると信じて、今のこの生活を頑張る。
◇
正人が遠征に出て行って三日が経過した。
その間、特に問題はなかったけど‥‥夜、部屋で一人で眠る時に寂しさを感じる。ベッドに入り、ふと隣を見るといつも正人がいてくれたけど、今は一人。
「二人用のベッドは‥‥私一人には広すぎるよ。」
寂しさを紛らわす為に布団を深く被って、忘れるように眠りについた。
翌朝になり、今日から近くのマンションの物資の回収と、住めるように綺麗にすることになった。これはリルちゃんからの提案であった。
『マスターが帰ってくる前に他のマンションも使えるようにしておいた方が良いと思います。』
その提案の理由として、昨晩の正人との定時連絡に「300人ぐらい連れて帰る予定だから、泊まる場所を頼む」とあったからだ。
本当に急な話だと思ったけど、よくよく考えれば正人は遠征に出る前に、マンション周りのゾンビの排除を徹底して行っていたことを考えると‥‥多分、こうなることを見越していたんだと思う。
それでも、一言あってもいいとは思う。本当に、大事なことは何も伝えないのは「正人の悪い」ところだと思う。
というわけで、マンション掃除を行うメンバーは私とリルちゃん。池田くん、高橋くん、神谷くん、森下くんの男メンバーには物資の運搬を、小坂さんと西園寺さんには物資を運び出した部屋の掃除をしてもらうことにした。
「池田くんと高橋くんは201からで、神谷くんと森下くんは206からお願い。で、全部の部屋の物資を出し終わったら、今度は4階の偶数部屋をやって欲しい。私とリルちゃんで3・5階の奇数部屋を担当する。ゾンビのチェックは全て終わっているから、そこは安心して。」
「了解です。」
「うぃーす。」
「じゃあ、リルちゃん。行こう。」
「はい、祈さん。」
子供たちとは別れてリルちゃんと共に上の階へと上がる。
「やっぱりエレベーターっていいよね。物を運びながら階段を降りるのは本当に辛かったから、こうしてエレベーターを使えるようになって本当に助かってるよ。全部、リルちゃんのお陰だね。」
「いえ、マスターが残していってくれた本のお陰です。元となる情報がなければ私の知能は機能しませんから、全てはマスターのお陰です。」
「確かにそうかも知れないけど、知識を自分の物にしているのはリルちゃんなんだよ?結局、元の知識があっても物を理解する頭がなかったら無駄になるでしょ?だから、両方大事ってこと。ありがとね。」
「そう‥‥ですね。祈さんが正しいです。」
「言葉が固いよ。私はリルちゃんのマスターじゃないから、もっと楽にしていいのに。リタちゃんみたいに友達の感じで接してきたらいいのに。」
「私とリタではtypeが違います。私は感情の数値が少ない分、知識と戦闘に振られています。逆にリタは感情と戦闘に振っているので私よりも感情表現が得意なんです。ですので、私では祈さんの要望に応えることは出来ません。」
「ふふ‥‥そんなことないんじゃないかな。戦闘と知識がメインになっているとしても、感情はゼロじゃないでしょ?つまりリルちゃんは感情がないんじゃなくて、感情を理解するのが遅いだけだと思うの。
だから、出来ないなんて言わないで、きっといつか理解できるようになるから。で、その時が来たらもっと軽い感じで来てくれると嬉しい。」
「は、はい‥‥分かりました。」
「なら、掃除を始めよっか?」
「了解です。」
リルと祈はテキパキとした動きと完璧な連携で部屋の物資をどんどん運んで行った。




