第4話 召喚された他の勇者達 《前編》
みんなも知っていると思うが、俺は王様と取り引きをして戦争から逃げた。ぶっちゃけこの取り引きは王様側も嬉しいものだったと思う。
だって国として勇者召喚を行った理由は”戦況を好転させる”ためであった。だが、召喚された勇者が戦闘能力が低い錬金術師なんて笑えないし、必要としていない。
だからこその、あの取り引きだった。だが、これは俺と王様側の目線であって、他の勇者達は「あいつだけ逃げやがった。」と考えるのが筋だ。
これによって俺と他の勇者の間に確実な亀裂が生じた。城ですれ違っても互いに目が合うことはなく、俺達は完全に二分化した。
まぁ、他の勇者が俺にどんな感情を持とうと、ぶっちゃけ興味はなく、俺は俺の道を歩んでいた。
そんなある日だった。いよいよ他の勇者が実戦投入されることを耳にした。時期で言えば‥‥確か、召喚されて一年が経った頃だったと思う‥‥多分ね。
まぁ、時期はどうでもいいな。大事なことは‥‥結果だ。
勇者が投入された戦場で負けることなどあってはいけない。もし負けてしまえば、勇者の力に疑いを持たれ、俺のこの優雅な錬金術師ライフも危うくなってしまう。
だから、何が何でも勝ってくれと!!この日だけは初めて他の勇者を応援した‥‥心の底からな。
そして運命の戦況は‥‥圧倒的な勝利で幕を閉じたと知らされた。
俺は「流石は勇者だ!!」と戦場から帰って来た勇者に全力の拍手を送った。
そして、この勝利を機に戦況は人族が有利なものへと好転した。民、騎士、貴族、平民は皆、勇者達に拍手と感謝の言葉を送っていたが‥‥その中に俺は含まれていない。
すこしモヤモヤする。俺だって色々と頑張っているのにと思わなくもないが‥‥戦場で頑張ったのは勇者達で俺じゃない。だから、嫉妬はしないが、愚痴ぐらいは許して欲しい。
◇
そして召喚されて三年の月日が経った。
俺が空間の錬金の実験をしている時のことだった。
ある悲報が耳に届いた。その内容は、勇者の一人である「闘聖」の名を持つ勇者が殺されたというものだった。
「闘聖」は他の勇者と同じSランクで、普通なら負けるはずがなかったのに、「闘聖」は負けた。その理由は一つだった。魔族は人族と同じように「魔王召喚」を行ったのだ。
「魔王召喚」とは勇者召喚とは異なり、異世界から召喚するのではなく、魔族の命を代償にして強大な力を持つ魔族を召喚するものであった。
そして召喚された魔王は、この三年という月日で成長し、勇者すら圧倒してしまう力を持って戦場に投入され、勇者を打ち取ったのだ。
そこからの戦況はさらに悪化することになった。
あれだけ歓喜で溢れていた声もなくなり、民は魔王という存在に怯えた生活をするようになった。そして勇者達も戦場を拒むようになり、戦況はますます魔族側が有利になった。
そんなある日だった。俺の部屋に「勇者」と「聖女」の力を与えられた二人がやってきたのだ。他の勇者が俺の部屋にやってくることなど一度たりともなかったのに、二人はやってきて「話がある」と言ってきた。
話の内容は至ってシンプルで、「魔王を倒すのに何かいい案はないか?」というものだった。その場では無いと言って二人を帰したが、俺は魔王を倒す為にある作戦を考えていた。
その作戦とは、魔族が大量の犠牲を出して魔王を召喚したように、勇者達も他の者を犠牲に力を得ることが出来るのではないかというものだった。
あ、因みにこの犠牲っていうのは命そのものじゃない。ここで言う犠牲というのは魔力のことで、全人類から少しずつ魔力を貰い、それを集約したものを勇者へと譲渡し、更なる覚醒をさせることであった。
だが、これにはすべての魔力を受け取る器と、それを力へと変換する機械が必要だったが、それらは全て俺が作った物を改良すれば可能であった。
だから、俺はこの案を王様に提案すると王は「よかろう。やってみるといい」と了承してくださった。
錬金術師として、そして勇者としても絶対に失敗が許されない作戦が始まった。




