第31話 新たな出会い。《後編》
「な、何を言っている?来るに決まっているだろ。」
あれだけ偉そうに喋っていた奴が、俺の言葉一つでしどろもどろになっている。なんて分かりやすい奴だ。こんなアホが上に立っているなんて、終わっている。
「‥‥そうか。なら、なぜ堂島さんたちは探索をしてるのですか?軍が来ることが決まっているなら、わざわざ探索をする必要もないでしょ。迎えに来るまでの間の物資は軍の人が渡してくれたはずです。それに、引っ越しをする必要もない。
なのに、引っ越しをして。探索までしている。これは自分の予想ですけど‥‥軍とはもう連絡は取れていないと考えています。だから、軍が迎えに来るまでの物資は自分たちで見つける必要があるし、拠点だって体育館より病院の方が部屋数も多いですし、長期の滞在なら病院の方が絶対に良いですよね。
どうなんですか?神崎さん。」
俺の問いかけに神崎は何も答えることは出来ずに下を向いてしまう。そして、隣にいるクズは堂島さんのことを睨んでいた。恐らく、堂島さんが話したと考えているのだろう。
――本当にバカな奴だ。
「‥‥神崎さん、沈黙は肯定と同じですよ。そこで1つ‥‥自分と取り引きをしませんか?」
さて、大事なのはここからだ。
「取り引きですか?」
「そうです。自分たちの目的は”人手”です。自分の拠点には生活を行う為の最低限のインフラは整っているのですが、働き手の数が圧倒的に足りていないんです。ですから、この拠点にいる人を自分たちの拠点に移っていただきたいと思っています。
ただ、拠点の確認もなしで、初対面の自分の言葉を信用することは難しいでしょ?そこで、拠点を確認させることは出来ないですが、自分の言葉を信用してもらうことは出来ます。」
俺はポケットから大きめの地図を取り出してテーブルに広げた。
「まず、現在地がここです。軍のキャンプはどの辺りですか?堂島さん。」
「え、あぁ‥‥この辺りだな。」
堂島さんが指したところを◯で囲んだ。その道のりは何もなければ2時間ぐらいで着くが、道路には捨てられた車が残っているだろうから、その倍以上は掛かる。
そうすると移動は、ここに来た時と同じで”徒歩”になる。で、その後の諸々のことを考慮して、一日もあれば行って戻ってくることは出来るだろう。
「この場所であれば問題ない。俺が本当に軍が残っているのか、その状況を確認しに行って”映像”を撮ってこよう。で、向こうの状況が崩壊状態で助けに来ることが出来ない場合は、もうこの場所に残る必要はないだろ?
と、なれば考えるべきは”今後の生活”だな。もう、ここからは言わなくても分かるでしょ?」
「あなたの拠点に行くということですね。」
「‥‥そうだ。どっちに転んでも損はない。軍が残っていればこのまま救助を待っていればいいし、軍が無理であれば俺達の拠点で生活を続ければいい。まぁ、働いてはもらうけどな。」
「それは‥‥そうですね‥‥。」
と俺の提案にすぐさま答えを出せないでいると、隣のクズが急に立ち上がって「それはダメだ!!」と大声を出した。
「お前のような自分の顔も晒さず隠れているような奴の言葉を信じられるはずがないだろ!!拠点に着いた途端に酷い仕打ちをして無理やり労働させるつもりだろ!!だ、騙されてはいけませんよ!!神崎さん!!堂島!!お前からも何とか言え!!」
こいつは‥‥本当に‥‥ウザイ奴だな。そろそろ痛い目に合ってもらわないといけないか。と思念伝達でリタに『軽くだ。』と命令を出した。
すると、隣にいたリタがそのクズに飛びかかって、その首にタガーを掛けた。
「ぐぇ!!」
「マスターへの侮辱は万死に値しますよ。あなたには喋る権利はありません。虫は虫らしく口を閉じていなさい。」
やっと虫の口が閉じた。ようやく人同士で話すことが出来る。
「‥‥神崎さん。どうしますか?決断の時間を差し上げたいのですが、自分も時間がないもので、今、この場で決断してもらってもいいですか。」
「‥‥分かりました。あなたの取り引きをお受けします。ただ、あなたの拠点に行った時の私達の待遇についてはこの場ではなく別の場で、お話をさせてください。これを受けてくださるなら、取り引きはお受けします。」
「もちろんいいですよ。なら、明日出発しますので、今日は一泊出来るように一部屋もらってもいいですか?」
「分かりました。」
「なら、交渉成立ということで。自分の名前は――リーヴァです。そっちは妹のリタです。もちろん偽名ですが、よろしくお願いします――神崎さん。」
と俺は手を差し出すと神崎さんは、その手を握り返して取り引きは成立となった。




