第30話 新たな出会い。《中編》
病院へとやって来た俺とリタは、堂島さんの軽い案内を受けたあと、亡くなった二人のことと俺達のことを報告する為に拠点のリーダーの所へとやってきた。
「すまん。俺の判断ミスで井上と石上を死なせてしまった。」
「いえ、気にしないでください。そういう責任は、この場所の管理をしている私の責任です。お二方の家族には私から伝えます。すいません、堂島さんには迷惑を掛けっぱなしですね。」
「いや、そんなことはない。そもそも探索に行こうと言い出したのは俺からだ。あんたのせいじゃない。」
堂島さんが謝罪した人物が、この場所のリーダーである”神崎 真澄”さんだ。
この病院の女性医師として働いており、その技術は世界規模で見ても折り紙付きだったらしく、雑誌などで「天才美人医師」として取り上げられるほどだったらしい。
まぁ、俺は見たことも聞いたこともないので、そんなことを言われても”ほぅ”程度ではあったが、こんな世界で優秀な医者が残っているという事実はかなり大きい収穫であった。
そして、この場所には神崎さん以外にも”もう一人”我が物顔で踏ん反っている人物がいる。
「そうですよ。神崎さんが謝ることは一切ないですよ。全て”堂島さんが”勝手にしたことなんですから、私達が気にすることはないですよ。そうですよね?堂島さん?」
この場所のことも人間関係も何も知らない俺からでも”クズ”だと言うことが分かった。こんなクズが上に立っているなんてあり得ないだろと思ってしまうが、そこにも色々と面倒くさい人のしがらみがあるのだ。
このクズの名前は”田中 修逸”。この病院の院長の息子だ。
この世の中で院長の息子が何だと思うかもしれないが、それだけ上下関係や立場関係という名の序列が人の中に刻み込まれている証拠であり、簡単に捨てることが出来ない状態になっているのだ。だから神崎さんも強く言うことが出来ない。
本当に無意味な関係だよ。俺がリーダーなら即刻”打ち首”してるよ‥‥マジでね。
そんなわけで堂島さんも強く言うことが出来ず、この報告も報告などではなく”小言を言われるだけ”の嫌味会になってしまい、その矛先は堂島さんを飛び越えて俺達の方にまで飛んできた。
「でだ。君たちは何者なんだ?その気色の悪い仮面は何だ?人と話すんだ、その仮面を取りなさいよ。どんな教育を受けてきたら、そんな無礼なことが出来るのか信じられないよ。全く、これだから一般市民は嫌いなんだ。」
とまぁ、言いたい放題だった。
隣のリタは俺に対しての暴言を聞いて、「私の‥‥マスター」と俺にしか聞こえないぐらいの声量で怒りを言葉にしており、いつ飛びかかってもおかしくない状態だった。
「‥‥すいませんが仮面は取れません。人に自分の情報を渡す危険性をまるで理解出来ていないあなたとは違って、自分たちは思考を持った人間として生きているんです。
逆にあなたは、こんな世界になっているというのに、まるで変化がないようですね。生まれてからは父が築いた名誉と権力と金で悠々自適なニート生活を送り、秩序が崩壊した世界になっても未だにその生活を止められずにいる。
そんな人間ではなく‥‥ただの寄生虫です。」
「なっ!!何だと貴様!!お、俺にそんな口を効いてタダで済むと思っているのか!?俺が、俺が命令すればお前なんて‥‥簡単に殺せるんだぞ!?」
「ハハハハ!!ほら、また他人頼りだ!!命令??出来るものならすればいいんじゃないですか?でも、命令を出している暇はありますかね?仲間がここに到着している頃には‥‥死体になっていると思いますよ。」
「何だと‥‥お前、分かっているのか!?俺にそんな態度を取ったら”軍の救助”が来た時に、後悔する羽目になるぞ。俺がこの病院の息子だから!!国から救助が来るんだぞ!!」
「ふーーん。なるほどね。なら、一個聞いていいか?その救助は本当に来るのか?」
俺はバッサリと、その質問を投げるのだった。




