第28話 遠征。《後編》
目的地まで残り数キロとなり、この辺りからはいつ生存者と出会ってもおかしくないので、細目に立ち止まって辺りを確認しながら進んでいると――男6人で構成された一団を発見した。
相手の善悪の判断が付かないので、バレないように一定の距離を保って静観することにした。
静観をして分かったが、一団の目的は”物資の回収”だった。
コンビニや小さいスーパーに入っては物資を調達しているようだったが、あまり残ってはいないのだろう。調達に戻って来た者が首を振っていた。
そうして行動していると、ゾンビとの接敵は当然に起こるものだ。一団は手に持っていた武器でそれぞれ応戦を始めるが、やはり戦闘は素人で内容は良いものではなかった。それでも戦えてはいたし、ゾンビもちゃんと倒せていたので”悪くない”というのが総評であった。
そして一団の探索は続いて行き、道路に放置された食品会社のロゴが入った食品輸送のトラックを探索するようだった。
トラックの大きさはそこそこの大きさがあり、あの中に食料品がパンパンに詰まっているなら、かなりの量が期待できるが‥‥その分、リスクもある。あの中は完全密閉状態なので、ゾンビが大量にいると開けた瞬間に戦闘になり”噛まれる”可能性が倍増する。
どっちを取るかだな。ハイリスクハイリターンを取るか、危険は避けて別のところに行くか。
一団が取った選択は「ハイリスクハイリターン」だった。入口に二人を配置して、少し離れたところに四人を配置して入口を囲むような陣形を取って全ての準備が整った。
そして――トラックの扉を開けた。
「「ウ"ァァァァ」」
――ゾンビが出て来た。
その数は数体ではなく数十体で、絶対に6人では捌ききれない数だった。現に入口にいた二人は既にゾンビに掴まれており、噛まれるのは時間の問題であった。
このまま静観を続ければ確実に全滅するだろう。相手の善悪は分からないが、助けることで相手の信用と貸しは作れるし、ここで無視をするのは勿体ないと判断した。
「リタ。助けに行くぞ。」
「はい、マスター」
――と、一団の助けに入るのだった。
◇
「クッ‥‥クソ!!お前ら距離を空けて一体ずつ処理するんだ!!近づかせるな!!」
「ど、堂島さん。こっちも限界です!!井上と石上を助けないと!!」
「分かっている!!だが、数が多すぎる!!」
堂島は入口の方を確認すると、既に井上と石上はゾンビに覆いかぶされていて「うあぁぁぁ!!」と悲鳴を上げていた。既に噛まれたことは間違いないだろうが、それでも待っている者の為にも遺品を持って帰りたいと思った。だが、現実は残酷だった。
「堂島さん!!横ッ!!」
二人に気を取られていて、横から来ていたゾンビに気付かなかった。そして肩を掴まれてゾンビに噛まれる――その瞬間。
ブスッ!!とゾンビの頭にナイフが刺さった。
動かなくなったゾンビを退かしてナイフが飛んできた方向を見ると、仮面を付けた二人組がこっちへ走ってきていた。
「お前たち誰かが助けに来てくれた!!何とかなるぞ!!」
助けられた命に感謝して、再び堂島は武器を手に取ってゾンビの排除を再開した。
◇
『リタ。生きている人間の援護をしてやれ。』
『はい。』
リタを援護に向かわせ、俺はこの一団のリーダーらしい男に近づいた。男は周りから堂島と呼ばれていて、その体も名前から感じる通りの大男だった。
「噛まれたか?」
とゾンビの頭に刺さったナイフを抜いて声を掛けた。
「いや、あんたのそのナイフのお陰で助かった。ありがとよ。」
「ならいいが。そろそろ撤退をしないとヤバいぞ?」
「いや、せめて井上と石上の遺品を拾ってやらないと。あいつらは今日が初めての探索班に入ったばっかなんだ。俺が連れて来たんだ‥‥せめて戦った雄姿だけは持って帰ってやらないと。」
「ダメだ。周りを見ろ。このまま戦闘を続けたら二人だけじゃなく他の奴らも死ぬぞ。遺品の為に仲間を死なせるつもりか?リーダーなら良く考えろ。」
堂島は周りを見渡すと、トラックから出て来たゾンビだけじゃなく周りからもぞろぞろと出て来ていた。このまま戦闘を続ければ‥‥全滅は必至であった。
「‥‥グッ‥‥二人ともすまねぇ。お前ら撤退だ!!今すぐ、後退しろ!!」
――と苦渋の決断をするのだった。




