第27話 遠征。《中編》
京田総合体育館までは電車でも一時間半は掛かるほどの距離がある。
普通であれば、絶対に交通機関を使うのだが、当然、そんなものは動いているわけがない。せめて少しでも速く着けるように屋上から屋上へと飛びながら向かっていた。
『リタ!!屋上にゾンビだ!!その数‥‥6体。俺が右側の3体をやるから、リタは左をやれ。』
『了解です、マスター』
思念伝達でやり取りを済ませた。
そして屋上に降り立つのと同時に、右のゾンビに向かって走り出した。
こういった戦闘はリタや祈に任せていた。決して俺が戦えないから任せていたわけではなく、戦う必要がなかったからだ。だが、今は戦う必要がある。
俺は空間から、本格的な戦闘の為に作っておいた俺の専用武器「魔銃」を取り出した。
魔銃のモードを拳銃に設定して、一番近いゾンビの頭に照準を向けて引き金を引くのと同時に、腕を右側へとスライドさせて二体目のゾンビ、三体目のゾンビにも発砲する。
放たれた弾丸は見事ゾンビの頭をブシュ!!と撃ち抜き、ほぼ同じタイミングで三体のゾンビが倒れた。
う~~ん♪やっぱり銃は良い。モードの設定も完璧だったし、これを向こうの世界でも使えていたら、もっと良かっただろうな。
この「魔銃」はマンションの探索中にサバゲーマニアの部屋から見つけた銃をモチーフにして作ったものだ。銃の知識がない俺が一から本物の銃を作れるはずがないが、見本があれば話は別だ。例え見本がおもちゃであっても本物をベースに作られているなら面のコピーは可能だ。
そして形が出来たなら、後は”火薬の所を魔力へ”と変えるだけで魔銃の完成だ。
ただ、それだけでは面白くないから色々といじらせてもらったよ。祈のクロスボウと同じでホーミング機能、早撃ちとか、モードの切り替えとかね。いずれその機能すべてを知る機会は来るでしょ。
戦闘を終えた俺はリタの方を見ると、リタも丁度戦闘を終わらせていた。
「マスター、お待たせしました。」
近寄ってくるリタの姿はメイド服に身を包み、両手にはその服には似合わないダガーを握っている。
そう、リタにも俺と同じように専用の武器と防具を渡していた。
持っている武器はダガーと変わっていないが、中身はまるで違う。何しろ、その武器をリタが装備すると自身の「攻撃力とクリティカル率を+50%」という効果が付き、防具には「防御力と速度を+50%」する効果が付くのだ。
これら全ての装備はリタが装備しないと効果を発揮されないので、まさしく「リタ専用の装備」だと言える。
「どうだ?その専用の装備は?」
「最高です!!どれだけ激しく動いても着崩れしないですし、武器も前の武器だったら骨の所が斬りづらかったんですけど、これは‥‥豆腐のように簡単に斬れるので――最高です!!」
子供のように喜ぶリタを見て、作った側として嬉しくなった。
「そうか、それは良かった。作った甲斐があった。さて――もう少し進めば目的地の京田総合体育館に着くわけだが、ここまで来て何か気付いたことはあるか?」
「はい、マスター。そうですね、ゾンビの数がどんどん多くなっているのと、道中では駅みたいな大群を発見したことから、人がいる可能性が高いですね。」
「その通りだ。あの大群が居た場所は駅でもなければ、大型施設がある場所でもなかった。つまり、あそこに大量のゾンビがいる理由は”体育館へと続く道”だからで、ゾンビの中に大きいリュックを背負った奴もいたことから、襲われて喰われたのだろう。
だから、この先からはゾンビだけでなく人の存在にも注意する。些細な異常も見逃さないで行くぞ。」
「はい!!マスター」
時間で言うと、あと20分ぐらいで目的地へと着くだろう。この周辺のゾンビの数を見るに、もしかしたら既に全滅している可能性もあるし、あのラジオを信じて避難したのかも知れない。
それも、あと20分で全て分かるだろう。




