第21話 生存者確保大作戦。 《後編》
『きゃああああ!!!』と突然の悲鳴が耳に入って来た。
「リタ!!向かえ!!」
「ハイ。マスター」
命令を聞いたリタが悲鳴がした方に走って行き、俺と祈もその後を追った。そして、現場に着くと―――そこには中学生ぐらいの子供6人がゾンビに襲われていて、リタが間に入って何とか凌いでいた。
だが、リタ一人では6人の子供を守りきるには手が足りない。子供の背後には、さらに4体のゾンビが近づいて来ていたので、すぐさま「バインド」を発動してゾンビを拘束すると、すぐさま祈が矢を放ってゾンビを処理した。
声掛けなしで「完璧な連携」を披露した。その姿は、列記とした「パーティー」であった。
そして、リタの方にいたゾンビにも「バインド」を掛けて拘束し、後は動けなくなったゾンビを処理するだけとなり、この場の危機は去った。
◇
「君達‥‥怪我はない?どこも噛まれてない?」
という祈の言葉に、子供達は泣きながら「うん、大丈夫」と答えると、確認の為か祈がこっちを見て来たので、俺はコクンと頷いて返した。
すると、再び子供達の方を向いて「一旦、ここは危ないから、別の場所に移動出来る?」と尋ねると、子供達は頷いたので、祈に連れられてその場を離れることになった。
避難した場所は拠点ではなく、安全が確保出来ている役所へと戻って来た。
「それで君達は、どうして子供だけで外に出て、あんな場所に居たの?」
「ラ、ラジオから救助が来る場所を聞いて、そこに向かっている途中で‥‥でした。」
と祈の質問に答えたのは、6人のなかではリーダー的な存在で、名前は「池田 竜馬」という子だった。
救助のラジオか?うーーん、かなりきな臭いと思ったので、『そのラジオは今でも聞けるか?』と祈に小声で耳打ちをすると、その言葉を子供達に伝えてくれた。
なぜ、俺が直接会話をしないのかと言うと、「出来るだけ、この世界の人間に関わらない」ためだ。俺という人間の記憶になるものは、一つでもない方がいい。だから、関係を持たないように、生存者と会った時は祈が中心となって話すことを決めていた。
ただ、相手が悪人の場合と、女だとなめられる時は、俺が声を変えて話すと決めてある。今回は、その両方に当てはまらないので、祈が中心となって情報を聞き出すことになっている。
「うん、ラジオは持ってきてるから‥‥聞けると思うよ。」
と池田くんは、友達のリュックからラジオを取り出して「救助ラジオ」を流し始めた。
『こちら、臨時救助放送。繰り返します。こちら、臨時救助放送です。現在、生存者の方は京田総合体育館前広場へ集まってください。自衛隊および協力機関が、安全を確保した上で保護を行っています。
移動の際は、出来るだけ静かに行動し、単独行動は避けてください。負傷者、子供、女性を優先して受け入れます。
この放送は、一日三回、午前九時・午後三時・午後九時に流れます。
繰り返します。生存者の方は――』
と、救助のラジオが聞こえてきた。
「確かに救助のラジオだね。じゃあ、このラジオを聞いて、その場所に向かおうとしてた途中で、襲われたんだね。じゃあ、その前はどうしてたの?流石に、子供だけで生活してたわけじゃないでしょ?」
「うん。最初は学校に避難してて‥‥先生達と協力して机でバリケードとかを置いて、色々やって過ごしていた。体育館には非常食もあったから、何とかやれていたんだけど。見回りをしていた生徒が噛まれたんだけど、そのことを隠して体育館に戻ってきて、そのまま夜になって‥‥その、パニックが起きた。」
池田くんは話し辛そうにしていた。学校には、この5人以外にも友達はいただろうし、本人的には“見殺し”したと思っているのかも知れないが‥‥それは違う。5人の命を救ったんだ。そこを間違ってはいけない。
「それは辛かったね。じゃあ、そこからは、みんなで一緒に何処かに隠れていたの?」
「わ、私の家が近かったから‥‥みんなで隠れていたんだけど‥‥もう、食べる物も水もなくなって‥‥みんなで覚悟を決めて出てきたの。」
「話してくれてありがとう。少し、ここで待っててね。すぐ戻ってくるから。」
と、その場を離れて俺の所に来た。
「どうする?このまま放置は出来ないよね?拠点に連れて行くか、その救助が来る場所まで送るか、どっちかはしないといけないよね?」
「まぁ‥‥そうだけど‥‥救助の方は無理かな。その場所が安全が確保出来ている確証もないし、根本的に嘘を言っている可能性もある。俺は、日本の自衛隊や警察が、このパンデミックを解決出来ると思えない。
だから、拠点に連れて行くかな。そして、準備が整ったらその場所を見に行って、本当だったら、連れて来る形が丸いと思う。」
「そうね。それが安心よね。」
「あと、あの子達の名前と年齢は全員、聞いてね。」
「分かったわ。じゃあ、話してくるわ。」
と祈は戻って行った。
さてと、最初の生存者が子供か‥‥どうするかな?と、拠点に連れて帰った後のことを考えるのであった。




