第20話 生存者確保大作戦。 《中編》
「さてと‥‥行くか。」
「うん!!」
「はい。マスター」
拠点から駅まで安全に行けるルートを構築したことで、目標であった役所に行けるようになった。本来なら、事前に中の状況や生存者が残っているのかを確認したかったが、周りにそこそこのゾンビが居たので諦めた。
それなりの数のゾンビが外にいるということは、人が残っている可能性を示すので、確認する価値は全然あるだろう。それに、祈の友達もいるんだから、契約者としては救ってあげたい。
そして拠点を出発し、構築したルートを使って駅を無事に抜け、役所の近くまでやってきた。
「数は‥‥見える限りでは10体か。祈のクロスボウで遠距離から処理して、中に入ろう。」
「了解。じゃあ、リタちゃん、フォローを頼んでもいい?」
「もちろんです。」
二人はクロスボウの射程まで近づいて行った。
あの二人‥‥いつの間にあんなに仲良くなったんだ?いや?思い返してみれば、最初からそこそこ仲は良かったか。お風呂も毎日一緒に入っているし、寝る時は3人一緒だし、常に一緒にいるから、そりゃ~~仲も深まるか。
などと考えていると、祈が手で〇を作って合図を出していたので、二人に合流した。
◇
役所の入口はシャッターで守られていて、隣の管理用の扉には暗証番号と鍵の二重ロック付きで、扉自体も鉄で出来ているので、これをゾンビで突破するのは難しいだろう。
「入口は安全そうだね。じゃあ、こっから入るか。」
俺は管理用の扉に手を当てて錬金術を発動すると、固い鉄の扉が、いとも簡単にグニャンと変形し、人が余裕で通れるぐらいの大きな穴を開けた。
それを目にした祈が、「相変わらず無茶苦茶ですね。」と呟いた。
「もう見慣れたでしょ?」
「そうですね。慣れ過ぎて、驚きもなくなってきました。」
「それは残念だね。俺は祈が驚いた顔は好きだったから、それが見れなくなるのは悲しいよ。」
「なっ!!バカなことを言ってないで、さっさと進んでください!!」
「はいはい。」
祈って、からかうと面白い反応を見せてくれるから、凄くからかいがいがあって楽しんだよね。まぁ、やり過ぎると怒って口をきいてくれなくなるから、注意が必要なんだけどね。
とまぁ、緊張感などは全くない状態で、役所の中に入って行く。
◇
「‥‥静かだね。もし人がいるなら、少しの物音ぐらい聞こえてもいいのに、何も聞こえない。」
「‥‥‥‥」
祈は何も答えなかったが、顔からは不安が見て取れた。
友達の安否が気になり、この状況じゃなければ『今すぐにでも走り出して友達を探しに行きたい』気持ちを、全力で抑え込んでいる。
そんな祈を見て、早くしてやらないと、と思い、二人に先に進むよと合図を出した。
役所は地下を含めて5階まであり、現在は1階なので、あと4階で最上階になる。もし生存者がいるとするなら、地下よりは上の方にいる可能性があるので、俺達は階段で上へと向かった。
結論から言うと『役所には生存者はいなかった』が、ゾンビもいなかった。仮に、この役所がゾンビに襲われて崩壊したなら、役所の中にはゾンビがいるはずだし、死体もないとおかしい。
役所の中には、新しい死体は一つもなかった。それは、つまり『役所の生存者は拠点を移動した』ことになる。そして地下を探索しているときに、そこから脱出したのであろう外に繋がる扉を見つけたので、俺の予想は確定となった。
この事実を祈に伝えると、祈は泣いて喜んでいた。友達が死んでいないことが分かって、とても安心していた。
だが、俺としてはとても残念ではあった。ここまで時間と労力を掛けたのだから、生存者を確保したかった。また、これで一からやり直しとなった。しかも、役所の中には碌な物資は残っておらず、完全に無駄足になってしまった。
「せめて何か残っていて欲しかったんだけど‥‥まぁ、ないよな。しゃーない。拠点に戻るか。また、一から作戦の練り直しだ。」
と、役所を出てすぐのことだった。
「きゃあああ!!!」
という、人の叫び声が飛び込んできた。




