第2話 一年が経った。
王様から援助が決まった俺は「目標」を決めることにした。
やっぱり何事もゴールを決めてから走り出した方が、やるべきことも明確化出来て効率が良いと俺は思う。例えば”受験”だ。
あの高校に合格することを目標にすれば、その高校の入試問題の傾向を見て「絶対にやるべき勉強」と「ここはそんなにだなという勉強」と「要らない勉強」の三つに分けることが出来る。
だからこそ目標となるゴールを決めたいのだが――その目標がない。
王様には異世界の物を再現すると言ったのはいいが、ぶっちゃけ‥‥再現する気は全くないというのが本音だった。
だって、そうだろ?仮にこの世界の文明レベルを上げたとしよう。
間違いなく戦争に使われて、今度は武器を作れと言われるに決まってる。種族の違いで戦争をするなんて、あり得ないことだと――俺は思う。
まぁ、歴史を辿れば‥‥地球でも同じことはあったんだと思う。
だから、この世界は昔の地球と同じ歴史を辿っている最中なんだ。だから‥‥武器を渡すことなんて出来ないし、ましてや文明レベルを上げるなんてもってのほかだ。
なら、どうするか。とりあえずの途中の目標として――スマホの充電にするか。こんな娯楽の無い世界で漫画や音楽が聴けないなんて、マジで死ぬからな。
◇
そんな下らない目標を掲げたのが‥‥一年前か。
この一年で錬金術師の金ぐらいの技術を学ぶことが出来た。俺に錬金術を教えてくれている人は帝都でも指折りの錬金術師で、名前は「サミール」さんだ。
サミールさんは人に物を伝えるのが凄く上手い。俺が、うーーんと分からない感じを出すと、すぐに内容を噛み砕いて猿にでも分かるように説明をしてくれる。
こんな先生が担任であれば‥‥俺の成績もうなぎ登りになっていただろうな。
いや、それは‥‥ないな。
ってな感じで、俺はサミールさんから錬金術を学んだことで、当初決めた目標の「スマホの充電」を行うだけの準備が整った。
「よし、出来た。頼むぞーー充電してくれよ。」
俺の目の前にあるのは、カタツムリの甲羅のような形をしている、これが電気を生み出す機械で、その名も「電気マイマイくん」という。
あ、因みに命名は俺だ。どうだ?可愛い名前だろ?なに、ダサいだって?センスのない奴らだ。まぁ、確かにカタツムリの甲羅の形なだけで、そのデカさは成人男性ぐらいデカいからな。
サイズ感はちょっと待ってくれ。これが限界だったんだ。
まず最初に「電気マイマイくん」に雷の魔石を入れて、遠心力を使って雷の魔石を「魔力」と「雷」に分離する。分離された魔力は、このただの石に吸収させて魔鉱石へと変える。
そして残った雷は「マイマイくん」で雷を電気へと変換し、この甲羅のケツの部分にあるコンセントから電気が出るという仕組みになっている。
ウィン!!ウィン!!とマイマイくんの中で雷が高速回転して、バチン!!という小さな爆発が起きると、横に置いてあったタダの石が魔鉱石へと変わっていた。
よし!!第一段階は突破だ。次は――発電だ!!
発電の完了を示す合図は、マイマイくんの甲羅に刻まれたメモリが全部点灯することで完了を知らせてくれる。
1つ‥‥また1つ‥‥とマイマイくんの甲羅が赤く点灯して、最後のメモリも点灯した。
「よっしゃ!!完璧だ!!急いで充電だ!!」
と、甲羅のケツについてあったコンセントにアダプターを刺した瞬間‥‥かつて召喚された時に見た光と同じぐらいの光が目の前に現れると、ピカピカと点滅し、「ドカーーン」と大爆発を起こした。
原因は分かっている。
俺は電気を生み出すことばかりに気が行ってしまい――電力の調整を忘れていたのだ。マイマイくんによって圧縮された電気が全てコンセントに集約されて、そこにアダプターを刺したことで解放され、流れる電圧が光を生み出し爆発を起こした。
「ごほっ‥‥ごほっ‥‥勇者じゃなかったら‥‥間違いなく死んでたぞ。あぁーーあ、俺のマイマイくんがぁぁぁ」
と、解放された電力が強すぎて、マイマイくんの甲羅は何かが飛び出たようにパックリと割れていた。
「はぁ‥‥失敗か。まぁいい。失敗の理由は分かってる。次は必ず‥‥成功させる。だが、まずは家の修理からだな。」
次の週に改良版マイマイ2号で同じ実験をして、無事にスマホの充電に成功するのであった。




