第11話 運命とは残酷な物。
そういえば「集まっているとこに居た」って言っていたよな?だったら、もしかしたら俺の家族と会っている可能性もあるか?会ったことは無くても、他の生存者がいる場所を知っているかも知れないな。
無駄かも知れないが、一応聞いておくか。
「ねぇ、宮坂さんが居た場所に”この写真の子”っていた?」
「えっーーーと、この子はいなかったと思います。それより、その写真の子の制服って桜ノ宮高校の制服ですよね?」
「え、うん‥‥そうだけど。もしかして何か知ってる?」
「いや、知ってるも何も、私、桜ノ宮高校の生徒です。」
「え?それ本当?今、何年生?」
「高2です。」
その言葉を聞いて、後ろによろけてしまった。彼女が俺と同じ学校で、しかも同学年。いや、そんなわけない。彼女ほど可愛い人がいれば、絶対に知らないわけがない。でも、彼女が嘘を吐いている風には見えない。
なら、起こっている可能性は一つだ。俺はその事実を確定させる為に、宮坂に「今って令和何年の何月ですか?」と尋ねた。
「え?れ、令和?えっーーと、今は、天章8年の5月です。」
「そ、そうか‥‥やっぱり‥‥そうか。そうじゃないかと思った。俺は――失敗したんだ。いや、正確には成功はしてるが、この世界は俺が暮らしていた地球じゃあないんだ。」
多次元宇宙論。
俺が勉強中にふと目にした理論で、その内容は、宇宙は一つではなく複数存在するというものだった。それなりの理論とロジックを持っていて面白い内容だったが、結局のところ証明のしようがなかった。
別の次元を確認する方法がない以上、その説はそれ以上の域を出なかった。だから俺も気にしていなかったが、今日、まさか自分がその説を立証することになるなんて思ってもいなかった。
俺が召喚される前に暮らしていた宇宙をα宇宙、今いるこの宇宙をβ宇宙とすると。俺は異世界にα宇宙から召喚に遭った。そして何十年という時間を経て、地球へと帰還する方法を見つけた。
帰還する為に必要だったのは、魔力・知識・召喚前の場所の三つだ。だから俺はスマホを使って”緯度と経度”を合わせたが、宇宙軸は未設定だった。
その結果‥‥俺はβ宇宙の「召喚前の場所」へと戻って来てしまった。
‥‥最悪だ。また帰還石を作るのに、何十年とかかる。しかも、今回はいる世界が地球だから、魔石を購入することも出来ない。もっと時間が掛かるだろう。
いや、諦める訳にはいかない!!俺は絶対に家に帰ると決めた!!宮坂さんには悪いけど、ここでお別れをしよう。
「もう体の調子はいいよね。俺、ちょっと用事が出来たから‥‥その、この辺でお別れでいいかな。ごめんね。こんな最悪な場所で別れる形になっちゃうけど‥‥これから、頑張って。」
俺は彼女の顔を見ずに、その場を離れようとした。だが、彼女がそれを許すわけもなく‥‥俺の腕をガチッと両手で掴んできた。
「ダ、ダメです!!い、嫌です!!お願いです‥‥見捨てないでください。助けてください!!」
正直、心苦しい。でも、助けてはいけない。それは彼女だけじゃない。この世界に、俺が関与してはいけない。だって俺は、この次元の人間じゃないからだ。
別の次元の人間が、この次元に関与すれば、どんなことが起きるか分からない。そんなことは出来ない!!
「本当にごめん。俺だって助けてあげたい。さっきまでは助ける気満々だったけど、事情が変わったんだ。本当にごめん。」
「いやです!!助けたいと思ったなら助けてください!!お願い‥‥します。」
「無理だね。さっき、俺『異世界から帰ってきた』って言ったでしょ?あれ、間違ってた。宇宙には別次元の宇宙があって、俺が暮らしていた地球はここじゃない。
別次元の人間が、他の次元に直接手を出して、その運命を変えてしまったら、何が起きるか分からない。
だから、この地球は君達の手でどうにかするしかない。今、起きているパンデミックは、時間と人の選択によって起きた物なんだから、君達の手で運命を突破するなり、飲み込まれるのかを受け入れなきゃいけない。」
「そ、そんなってないですよ‥‥」
彼女は手を離した。俺は去り際に「本当に、ごめん。」と言い残して歩き出そうとするが、彼女の「待って!!」という言葉で、足が止まった。




