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安易にモテたいと願った結果、人外にしかモテなくなった俺の日常  作者: ヤマグチケン


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第6話 一般人と人外を会わせるものじゃない

「よう、駅まで一緒に歩いてきた子、誰だ?」


 駅で一緒になった同級生の大林は、リエさんのことを言っているのだろう。どう説明したらいいのか。

 ちなみにリエさんはお金を持っていないため、電車に乗れなかった。人目に付かなければ飛べるのにね……。


「うーん……なんだろ。どう説明したらいい?」

「いや、俺が聞いてるんだけど。あ、まさか付き合ってないけど、そういう関係とか?」

「安心してくれ、それはない」

「大人しそうな子だし、いいよなあ。俺にも紹介してくれよ。お前の彼女じゃないなら、な?」


 紹介したところで人間ではないが、悩むな。すでに先生には目撃されていると言えば、そうなんだけど。


「じゃあ、帰りに駅近くの適当なカフェにでも寄るか」


 電子マネーがいくら残っていたかを確認しつつ、提案した。大林は大喜びだ。

 うん、まあ、がんばってくれ……。


   ***


「あんな約束してしまっていいのかの?」

「そう言いながらミオさんも楽しそうじゃないですか」

「いい機会だから我もおめかしして出たくなったからの。なに、口調も合わせる。心配などいらぬ」


 学校に着くと、トイレでコソコソと話をする。本当にミオさんが楽しそうなので、だんだん俺も気が楽になってきた。

 まあ、バレたらバレたでなんとかなる。


   ***


「なあなあ、あの子と仲良くなれるかな。何が好きとかわかるか?」

「いやー、どうなんだろ。俺も知り合ってからそんなに」

「そうか、じゃあお前にアドバンテージはないんだな」

「アドバンテージもなにも、俺にそういうつもりはないし。あ、一人増えるからよろしく」

「それは女子か!? 女子なのか!?」


 女子ではある。そう伝えると、まるで思春期の高校生のように喜んでいる。あ、思春期の高校生だった。落ち着け、もうすぐ担任が来るぞ。


   ***


 大林が常にそわそわしている他に取り立てて面白いこともなく、時間は過ぎて放課後。

 電車で三駅、地元に到着した俺を見つけたリエさんはとととっと走って来る。ちくしょう、これが人間の彼女だったらなあ……。


「正之助さん、この方は?」

「あ、は、はじま、初めまして。大林利明といいますっ!」


 声うわずってるぞ。さては俺よりも女子に耐性がないな?


「大林さんですね。初めまして。リエです」


 これからの予定など知らないリエさんが伊達眼鏡越しににこりと微笑むと、大林はあっさり陥落した。

 そしてもう一人、遅れて現れる長身の美女。だぼっとしたシャツにダメージジーンズのミオさんだ。


「ごめんねー、リエ。一人で先に行かせちゃって。あー、この子が例の? あたしはリエの姉のミオっていいます。よろしくねー」


 リエさんは即座にミオさんの手を引いて離れていく。どうせ状況説明をさせているのだろう。連絡手段がないから仕方がない。


「おいおい、ミオさんもすげえ綺麗な人だな。あの銀髪なんか、手入れに手間かかってんだろうなあ」


 なんかもう、大林の満面の笑みに俺の良心の呵責が。帰りたい……。

 助けてほしいけど、あの二人は離れたところで何か言い合いしてるし。


   ***


 適当なカフェに入った。並んで座る人間の男子二人の向かいには、天使と悪魔だ。

 大林は笑顔だが、リエさんは若干ふくれっ面だ。ミオさんはというと、メニューから目を離さない。


「なんですかこれ。私はただ迎えに来ただけなのに……」

「まあまあ、リエさんの分はおごるから」

「いいんですか!? あ、でも正之助さんのお財布の事情もありますし……でも、うーん……」


 ミオさんと二人で真剣にメニューを覗く。ずっとこうやって仲良くしてくれるといいんだけどなあ。


「ちょっとお姉ちゃん、ページ戻して!」

「優先権はあたしにあるんだから、先に見せなさいよ」

「もしもページを戻さないのなら、その水の中にタバスコを投入しますよ」

「ほう? 我がそんなことで怯むと思うてか。ならば貴様の水にはスティックシュガーを大量に入れてやろうぞ」


 二人とも素が出てる。

 それぞれのつま先をコツンと蹴って注意する。どうやら伝わったようで演技に戻ったようだ。


「正之助、あたしはこのシンプルなブレンドコーヒーでいいよ。なんのブレンドか知らないけど」

「こ、このバナナパフェを食べてもいいんでしょうか!」

「お二人とも、ここは俺が出しますよ」

「なんで初対面の貴方に奢られなければならないのですか? 正之助さんならまだしも」


 リエさんは険しい目で大林を見ると、バッサリ切り捨てた。可哀想に、大林は下を向いて黙ってしまった。


「まあまあ、折角だからご馳走になればいいじゃない。そうだ、ここはあたしがご馳走になろうかな」


 なんで悪魔の方が穏便に済ませようとしてるんだよ。おかしいだろこの二人。


「えっと、じゃあリエさんはそのバナナパフェですね。俺はクリームソーダにしよう」

「正之助さん、子どもみたいなもの頼むんですね」


 そう言ってくすくすと笑うリエさん。その笑顔を大林にも向けてあげた方がいい。


 各々注文したものが運ばれてくると、味わいながら話し始める。ミオさんはこの暑いのにホットコーヒーなのかと思ったが、カップを口にする姿がすごく様になっている。うーむ、これが大人の女か。

 対してリエさんは満面の笑みだ。わかりやすい。


「お二人は、こいつとどんな関係なんですか?」

「あたしたちはこいつの従姉妹。と言っても、正之助の叔父とあたしたちのお母さんはとっくに離婚してるけどね。この前初めて会ったんだよ」


 すらすらと当たり前のように嘘をつく。しかも変にリアリティがあり、生々しい。これにはさすが悪魔だと感心せざるを得ない。嘘をつくことに感心してはいけない気がするが。


「いやー、こんな美人姉妹と親戚なんて、田中がうらやましいなあ」

「私が可愛いのは当然なのですが、ちょっと褒めるのは後にしてください。今パフェと真剣に向き合ってるので」

「リエさん、お腹が冷えちゃうから少しゆっくり食べましょうか……」

「それもそうですね。失礼しました」


 聞き分けが良くてよろしい。実際、食いしん坊かと言うとそうでもないし、食べることを大事なことと重んじているのかもしれない。食事の仕方も綺麗だし。

 甘味には目がないようだが。


   ***


 その後、何事もなく談笑して無事に解散したのだが、帰宅後に大林からメッセージが来た。


「リエさんに冷たい目をされたとき、たまらなかった。ミオさんにもされたい。また会わせてくれないか?」


 一人の思春期が新たな扉を開いてしまったようだ。

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