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安易にモテたいと願った結果、人外にしかモテなくなった俺の日常  作者: ヤマグチケン


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第5話 猫に手を伸ばすものじゃない

「のう、正之助よ」


 草木も眠る丑三つ時。いわゆる幽霊たちの時間に、それに近しい存在に起こされた。


「寝てます。熟睡してます」

「起きておるではないか。まあ聞くのだ」

「起こされたんですよ。で、なんですか? 手短にお願いします」

「うむ……あの天使だが……アレはかなりヤバい気がするのだ」


 ヤバい?

 何がヤバいのだろう。人間にはわからない、何か特別な力を持った大天使だったりするのだろうか。


「あの言動、行動、ネーミングセンス。どれをとってもヤバすぎるとは思わんかの? 一緒にいては正之助まで同類と思われるであろうな」

「そいつは確かにヤバいですね。じゃ、おやすみなさい」


 くだらないことで起こされた。なんなんだよもう……。


「我はそんなの耐えられぬ! こら、寝るでない!」


   ***


『おはようございます。朝食と制服の以下略』

「おはようマリーさん。今日は正常だね」


 部屋の中に踏み込んできて脱がそうとしなかった。そんな当たり前のことで正常と思えるのもどうかしている。よそのお手伝いロボットはどうなっているのだろう。やはりミオさんの影響を受けているのだろうか。

 いや、近づかないのが一番だ。


「おはようございます……」


 リエさんがよそよそしい。それもそうだ。翼で隠していたとは言え、ほぼ全裸を俺に見られたのだ。

 ありがたやありがたや……。


「正之助さん、なんで私に手を合わせてるんですか?」

「なんでもないです。なんでもないですよ」

「それよりも、通学は私が護衛としてご一緒します。さすがに校内に入るのはマズいですからね。中二病という不名誉なイメージが付けられてますし……」


 ごめんなさい。でも、我ながら本当に機転を利かせた良い時間稼ぎだったと思っている。


「不名誉も何も、中二病そのものではないか」

「私のどこが中二病だというんですか! 私は本物の天使なんです! あ、私のゆで卵!」


 一瞬の隙を突いてミオさんがリエさんのゆで卵を取り、口へと運ぶ。


「うむ、やはりからくり人形の味付けは良いのう。ほんのり塩味が付いているのが良い」


 目を閉じ、一人頷くミオさんに当然だと無機質に答えるマリーさん。だが、リエさんだけは違う。


「正之助さん。私も食べたいです。半分でいいので分けてください」

「イヤですけど?」

「だって私のはそこの悪魔が食べたんですよ!? ほら、一口でいいから!」


 テーブルに身を乗り出して、口を開ける。くそ、不覚にも可愛い。これズルくないか?


「待ってください。なんで味付け海苔の袋を開けるんですか」

「ゆで卵は譲れないけど、これなら数があるし……」

「いいですか正之助さん。貴方は昨日の私への罪を償う義務があります。そして私は、ゆで卵で許そうと言っているのです。ほら、早く」


 リエさんの開けた口に、スプーンで納豆が押し込まれた。


『どさくさに紛れて甘えようとしても無駄です。貴方には腐った豆がお似合いです』


 俺はその腐った豆が好きなんだけどな……そうか……腐った豆か……。


「うん、いいですね。納豆もとてもいいです」


 口から伸びる糸を箸で巻き取りご満悦。俺のゆで卵がほしかったはずでは?


   ***


「我は折角影に潜んでおるのに、羽虫が邪魔だのう」

「貴方が悪さしないように見張る必要があるんです。それに、これは虫の羽根じゃありませんから!」

「監視など無駄だ。ほれ、そこにちょうど良いサンプルがおるわ」


 猫だ。紛れもなく猫だ。それがどうしたというのだろう。

 猫は可愛く鳴きながら俺に近づいてくると、頭を擦り付ける。構っていると学校に遅刻してしまいそうだが、誘惑に勝てずに屈んで撫でてしまう。ああ、可愛い。


「私も撫でて大丈夫ですかね?」

「多分大丈夫ですよ。こんなに人慣れしてるし」

「では……さあ来るが良い、我が眷属よ……」


 なんだか痛々しいことを言いながらリエさんが手を伸ばしたその時だった。猫は全身の毛を逆立て、威嚇し始めたのだ。


「なんでですか! まだ何もしてませんよ!?」

「上から手を出すのがいけないんじゃないですかね。横や下から、こう」

「な、なるほど……こうですね?」

「シャーッ!」

「駄目じゃないですか!」


 すんでの所で猫パンチをかわすリエさん。直後、猫は再び俺の手に擦り寄り、ゴロゴロと喉を鳴らしている。


「私はただ、猫ちゃんを撫でたいだけなのに……なんで……」

「ただ、正之助が人間以外のおなごにモテておるだけだ。つまり、今正之助の隣におる貴様は嫉妬の対象ということだ」

「では、私が正之助さんの横にいる限り、可愛い動物をもふもふ出来ないと……?」

「それがメスならそうであろう」


 リエさんが言葉を失い、プルプルと震えている。


「貴方、正之助さんになんて呪いをかけるんですか! それじゃあ私は半分の確率で動物をもふもふ出来ないじゃないですか!」

「え、そこ? 俺の青春は?」

「だが、人間のおなごにまったくモテないことで、正之助は浮気など出来ん。社会の秩序は保てるぞ? まあ、今思いついたのだがな」

「うぐぐぐ……でも、もふもふ……あ、いえ、正之助さんがかわいそう……」


 そっか。俺は猫より優先順位が下なのか。猫は可愛いし、仕方がないか。


「貴様が正之助から遠く離れたらすむ話ではないか」

「で、でもそれじゃ貴方が正之助さんに……」

「ほれほれ、さっさと去ね。正之助は我のものだ。貴様のような者が横に並んで歩くでない」

「戦っても問題のないところでなら、貴方をどうにでも出来るのに……」

「ほーそうかそうか。それは残念だったのう」


 ああ、ミオさん楽しそうだ。

 しかしどうするんだこれ。公園やお寺に行ったら、鳩だらけになるんじゃないかな。イヤだなあ……。

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