第3話 一人で名前を考えるものじゃない
「ひどいじゃないですか! なんで私を中二病扱いするんですか!」
「まあまあ、追いかけられなかったんだからいいじゃないですか。ね?」
夜、ミオさんの気配を追って我が家にやって来た天使は、アリエルと名乗った。
そのアリエルさんのことをどのようにごまかしたのかと説明したところ、頬を膨らせて怒っている。俺は逃がしてやったのだが?
「しかしあの流れ、傍目にはどう見ても中二病だがのう」
「こそこそと影から出てこない臆病者に言われたくはありません!」
「貴様、ここで我とやろうというのか?」
ミオさんが影から現れた。マズい。誰もその存在を信じない二人に家が破壊されかねない。そんな力があるのか知らないけど。
もしそうなれば、マリーさんが暴走して家を破壊したということにして、メーカー送りにしよう。うん、それがいい。
『お二人とも、お客様ならお客様らしくしていただけませんか? 正之助様のご飯にほこりが入ります』
「いいえ、私を侮辱した罪、許してはおけません。今すぐ拘束……いえ、浄化してやります!」
アリエルさんがリュックを降ろすと、隠していた純白の翼を広げる。美しい。
「ピーピーうるさいひよっこ天使は物理的に隠すしか出来ないのか。稚拙だのう」
ミオさんはどこに隠していたのか、コウモリのような翼を広げる。こっちはかっこいい。
くそう、二人ともいいな。なくしていた俺の中二心がくすぐられる。
『お二人ともズルいです。こうなれば、私も製造元に交渉してジェットパックを』
「うん、それはやめておこうか。ていうかマリーさん、二人にもご飯を用意してくれる? みんなで食べようよ」
そう、みんなでご飯を食べれば仲良くなれる。マリーさんはロボットだから食べられないけど。
『科学的に説明できない存在に……?』
「悪くない提案ですね。いいでしょう、ここは一時休戦としましょうか。マリーさん、よろしくお願いしますね」
『正之助様の分しか用意していないので……』
「融通の利かないからくり人形が……」
『黒オカルト様、何か言いましたか? 私はまだ貴方の滞在を認めておりません。当然、白オカルト様も同じです』
「マリーさん、その呼び方やめてもらえませんか?」
『ではお二人を派手オカルト、地味オカルトとお呼びしますね』
「正之助さん! このポンコツ人形なんなんですか!」
俺に聞かないでほしい。
ミオさんに俺がモテるようにお願いしたらこうなっただけだし、多分天使だろうとお構いなく敵認定されてる。
あ、全部俺が原因か。
「ていうか、日本人の振りしてるのにアリエルさんって呼ぶのもアレだし、ミオさんみたいに呼びやすい名前で呼びたいんですけど」
「それはとても良い提案ですね。紙とペンはありますか? 候補を書き出していきましょう」
元々考えていたのか、すらすらとボールペンを走らせる。そして出てきたのがこれだ。
・曜湖 (ようこ)
・麗姫 (れいき)
・楼華 (ろうか)
・永遠寧 (とわね)
「……」
「……」
『……』
「どうです! 私のセンスにみなさん言葉も出ないようですね!」
こいつはヤバいぜ。ホンマモンが来たぜ。
「かなり早いが、我はもう寝る。正之助よ、寂しいであろうが、今宵は影を貸してもらおう」
『私も地味オカルト様の食事の支度を致しますので』
あ、こいつら。
「えっと、アリエルさん。どれも素晴らしいとは思うんですけど」
「ですよね! いやー、正之助さんはわかってくれると信じてました! 新しさと美しさを備えた完璧な日本人女性の名前ですよ! 正之助さんはどれがいいですか? 私としては永遠寧なんか良いと思うんですよ! いや、最後は音と書くのも悪くないですね。永遠に続く美しい音色が(以下数分)」
めちゃくちゃ早口でまくし立ててくる。ヤバいよ、この人。
「──というわけで、どうですか?」
「リエさんで」
「は?」
「アリエルから取って、リエさんと呼びます」
「嘘……ですよね……」




