最終話? 解呪なんて望めるものじゃない
「困りましたね。正之助さんは私たちから選ぶ気がないみたいですよ」
「なに、簡単なこと。男など体で迫れば……ふむ、貴様の普通すぎる体型では勝負にならんのう」
「それ、本人の前でする会話かな」
「親もいるのよねえ」
ミオさんの呪いで人外からしかモテないのはツラい。でも、犬も猫もメスであれば無条件で懐いてくれるのは嬉しい。もう動物大好きキャラで生きていこうかな……。
「ふふふ。いいことを考えましたよ。悪魔の召喚に成功した現代人のサンプルとして、私が天界に連れ帰ればいいのです!」
「馬鹿なことを。他の天使にモテて収拾つかなくなるだけであろうが。ここはやはり、我と家の中でひっそりと暮らすがよかろう」
「マリーさん、この可燃物二人の処理をお願い」
『かしこまりました。これで正之助様は私のもの』
マリーさんを起動させた母さんが無表情で指示を出し、表情のないマリーさんが良くないことを口にする。
それにしてもリエさん、俺への好意を隠さなくなったな。もう今更か。
「やめろ、我はゴミではない! 所構わず毛埃をまき散らすそこの小娘こそゴミなのだ!」
「なにを言うのです! 貴方こそ欲にまみれたゴミではありませんか! あ、ちょっと袋をかぶせないでください!」
「とりあえず、明日は田崎さんのところに行こうかねえ」
「ふふっ。私の仕事っぷりを見たいのなら、いくらでも見せてあげましょう」
袋をかぶせられながらもリエさんは楽しそうだけど、多分そういう用事じゃないと思うんだよな……。
***
放課後、母さんとミオさんを連れてブックセンター田崎へと足を運んだ。母さんがいるから車が使えるのだが、あの店には駐車場がないから徒歩だ。
「いらっしゃ……あ、正之助さん、お母様!」
よしよし、ちゃんと翼を隠して仕事してるな。仕事するのにリュックを背負っているのもどうかと思うけど。
「おー、リエちゃんから話は聞いとる。待っとったぞ」
リエさんが椅子を持ってくると、カウンターの前に並べる。いいのかこれでと思ったが、この時代に個人経営の古本屋に客などほとんど来ないから、問題はないらしい。そうだよな、大手チェーンかネットフリマだよな。
約束だったのでミオさんを呼び出す。影から現れる美女に田崎さんは大興奮だ。
「ほー……これはこれは……良いものを見た。なるほど、やはり天使と悪魔は実在するんじゃな」
次の約束は、どのように召喚したのかだ。ここで買った古本を広げ、その通りにやろうとしたこと。足らない物は別のもので代用したことを告げると、目を丸くして驚いている。
「なんと……悪魔とは適当なものじゃな」
「我が適当なのではない。正之助に才があっただけのこと。そして我は天賦の才の持ち主である正之助の伴侶となり、この世界を楽しむのだ。正之助がおれば、あちらとこちらを行き来できそうだからのう」
「ミオさん、まさかそれが目的で俺の願いを曲解して!」
「だって、地獄つまんないんだもん」
だもんじゃないんだよ。急に口調を変えても無駄だからな。いや、ちょっと照れてる顔は可愛いけど。
「自らの欲望のために人の欲望をかき立てる存在であることが証明されましたね。やはり私の手で正之助さんを救うしかありません」
「お前さん、モテモテじゃな。うらやましい。わしもあと五十歳若ければ……」
「そんなことより田崎さん、正之助に掛けられた呪いを無理矢理解く方法とか、そういう本はありませんか?」
「知らん。腹膜炎になったときに天使を見た。何故かこの店には本物が集まるらしい。それだけでわしはなにも知らん」
クソ、何の役にも立たねえ。田崎さんの目線はミオさんの胸元から離れず、いいものを見たと喜んでるだけだし。
「大体、そんな非現実的な存在をわしにどうしろと?」
なにも言い返せない。呼びだした本人が困ってるのに、古本屋の店主が何か出来るとは思えない。きっと俺に召喚の才能があるらしいというだけで、なにも知らないのと同じだ。
「正之助、やっぱり諦めて人外ハーレムを楽しみなさい」
母さんはなにを言ってるのかな?
そりゃミオさんの柔らかさとかリエさんのちょっと無防備なところとかありがたいけど、俺は人間なんだよ。
マリーさんも元に戻ってほしいし。
***
夜、ベッドにごろ寝して考える。どうしたら元の生活に戻れるのだろうか。
母さんは生活費がほぼかからないと知るや、完全に受け入れる気でいる。
「のう、正之助よ。我の機嫌を取り続けれたらいつかは……」
耳元でそんな色っぽい声で囁かないで。ちょっと興奮しちゃうから。
「貴方、また正之助さんにベタベタと。いい加減に呪いを解いて地獄に帰ったらどうですか?」
「やかましいのう。正之助のことは我がイニシアチブを握っておる。すべては我次第。ふふっ」
「そんなこと言って、人間界を楽しみたいなら一人で行けばいいじゃないですか! あ、もしかして誰かと一緒で無いと行動できないんですか?」
「ぬかせ、貴様のようなボッチとは違うわ。我は正之助と行動したいのだ」
「ボッチと言いましたね!? 私にだって天国に友達はたくさんいます! ほとんど顔は知らないけど、あっちでは頻繁にチャットとかしてました!」
それ、ネット友達かな。天国にもインターネットあるんだ……。
『正之助様、お部屋にゴミを二つ検知しました。ただいまより清掃のため入室いたします』
「誰がゴミですか! 私は天使ですよ!」
「ほう……貴様、まだ我をゴミ扱いするか」
「家事については私が先輩です。敬えないのなら、ゴミとして処理します」
ああうるさい。
もう面倒くさいな。考えるのは明日でもいいか。でもそう言って、ずっと先送りにし続けるんだろうなあ。
もう少し、この非日常の迷い込んだ日常に振り回されるしかなさそうだ。
短い作品ですが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
まだ色々と書きたいネタはあるのですが、この話は一旦ここで終わりです。
キャラが増えると収拾つかなくなるとか、色々考えた上での、この決断です。もしも続きが読みたいという奇特な方がいらっしゃれば……。
それではまた、別の作品でお会いしましょう。




