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安易にモテたいと願った結果、人外にしかモテなくなった俺の日常  作者: ヤマグチケン


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第10話 一方的な契約は悪魔だけがするものじゃない

「うむ、やはり人間の食事は良いのう」


 ファミレスでミックスグリルセットを食べてご満悦の悪魔に、老化も肥満も関係ないと聞いてうらやましがる母さん。なんだろうこの食事会。

 急遽ミオさんも来ることになったことで母さんに遠慮して、俺はミートドリアとドリンクバーだけにしておいたのに、この悪魔め。


「それで、どうやって召喚したの?」

「えーっと、色々揃えないといけなかったんだけど、生け贄の代わりに手羽先を一パック。俺の部屋には鏡もないから、スマホのインカメラにしたな。ロウソクはLEDライトで代用。あとはなんだっけかなあ……」

「そんなので呼び出せるのね……」

「うむ、正之助の用意した手羽先は非常に美味であった。ブラジル産でも悪くなかったのう」


 下味すら付けていなかった生の手羽先。それを思い出してうまかったと感想を述べるあたり、やはり悪魔。カンピロバクターもかなわない上位存在だ。


「さて、ミオさん。貴方私にご飯を奢られたわね?」

「うむ、あのからくり人形の作るメシなんかよりも断然うまかった。さすがはプロよのう」

「じゃあ、貴方は我が家の家事手伝いってことで」

「は……?」

「悪魔というのは厄介よねえ。人の欲望につけ込んで契約して。じゃあ人から理不尽な契約をされても文句言えないわよねえ。それとも、自分たちだけそんなことをしても許されると思っているのかしら」

「そ、そんなことは……」

「撃たれる覚悟がある者だけが撃っていいとか、そんな言葉があったわよねえ」

「なにを……なにをしたらいいのだ?」

「マリーさんと一緒に、常に家を綺麗にしておいてちょうだい。余った時間は好きにするといいわ」


 ミオさんは黙ってフォークで皿をつついていた。納得いかないらしい。


「それと、うちの人が帰ってきた時には肌の露出を控えること。誘惑したら許さないわよ」

「それはせぬ。神に誓って絶対にせぬぞ。我がほしいのは正之助だけだ」


 悪魔が神に誓うんだ……。いや、なにを信仰するのも自由だけど。


「帰ったら正式に契約書を作るからよろしくね、悪魔さん」

「なんだか、急にハンバーグの味がせんのう……」


 言いながら食べ続けるミオさんは、なんだかんだで満足そうだ。最終的には付け合わせまで綺麗に食べて、ブロッコリーの欠片ひとつ残っていない。


「ミオちゃん、デザートはいい?」

「よ、良いのか? ではこのチョコレートケーキを……いや、なにを企んでおるのだ」

「やあねえ、なにも考えてないわよ。ただ無警戒だなーって。ふふふ……」


 母さんはこうやって、なにもないのに含みを持たせて、不安がらせる遊びをする。今まさに、ミオさんは母さんのおもちゃになっている。

 それにしても、ミオさんは思ったよりも純粋だな。今目の前にいる姿を見ると、とても悪魔とは思えない。まあ、助け船は出さないけど。


   ***


 食後、家に帰ると物音がする。マリーさんは充電中なのにだ。

 俺はその物音の犯人を知っている。しかし母さんはその存在自体を知らない。そう、完全に忘れ去られていた彼女だ。


「あらやだ、鍵をかけ忘れたかしら……」

「いや、大丈夫。それに鍵を開けて入っただろ?」

「そういえばそうね。じゃあ、犯人が内側から鍵をかけたってこと?」

「そこはそれ、多分大丈夫だよ」


 知っているから安心して入ることが出来るが、なんでクローゼットから出てるんだ。

 物音は風呂場から聞こえる。不用心にも洗面所のドアは開けっぱなしだ。

 どうする。リエさんだけでも隠し通すか、開き直るか。


 母さんにリビングで待機するように言うと、物音を立てないようにそっと洗面所を覗く。服は脱いでいない。つまり入浴中ではない。それならと風呂場を覗く。

 そこには、クローゼットの中で見つけたのであろう、俺のエアガンを構えて鏡に向かってポーズを決めている中二病の姿があった。


「リエさん……?」

「ひゃっ! み、見ましたか? 見ましたね?」

「いや、いいんですよ。もう今更だし」

「なにが今更なんですか! 私はちょっと、予行演習をしていただけです!」

「翼も広げてノリノリだのう……」


 リエさんの顔がみるみるうちに真っ赤になる。だったら最初からやらなきゃいいのに。いや、俺たちが帰ってくるのに気づかないほど夢中だったのなら仕方がないか。真剣になれるものがあるのは良いことだ。


「リエさん、写真撮ってあげましょうか?」

「待ってください。まだ最もかっこいいポーズが決まらないんです」


 恥ずかしがっていたのはその行為ではなくて、ポーズが決まってなかったからなのか……。


「とりあえず聞きたいのですが、なんでここに?」

「クローゼットに置いてあった箱を開けたら、かっこいいエアガンがあるじゃないですか。それでいても立ってもいられなくて、つい」


 つい、じゃないんだよ。

 それでもなお得意げな顔のリエさんの頭の中には、色んなシチュエーションが浮かんでいるのだろう。だが、そんなことは後回しだ。


「リエさん、隠れ──」

「親のいないうちに、もう一人住み着いていたわけね?」

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