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チャイナスワンの正義

街のネオンが怪しく輝く夜の路地裏。ヒーロー界の新星、アルナは息を切らして走っていた。彼女は、赤いマントを翻し、胸に輝く正義のエンブレムを誇らしげに掲げている。

アルナは幼馴染の裏切り者、リュウを追っていた。かつては一緒に悪を倒す正義のヒーローだったリュウが、悪の組織に寝返り、街を混乱させている。

アルナの心は、怒りと懐かしさで揺れていた。ついに、廃墟のような倉庫街で、リュウの姿を捉えた。


「ついに見つけたわ! 今日こそあなたを捕まえる!」


リュウは振り返り、ニヤリと笑った。彼は、かつての爽やかなヒーロー姿とは打って変わり、ピッタリのチャイナドレスを纏っていた。黒地に金糸の刺繍が、怪しく輝く。股間部分が妙に膨らんでいるのは、気のせいか……いや、気のせいじゃない。


「アルナか……もう昔の僕とは違うんだ!」


アルナの目が見開かれた。チャイナドレス姿の幼馴染が、ポーズを決めてくる。その光景に、彼女の正義の拳が少し緩む。


「その姿、何よ!? ねぇ? もう戻れないの? 私達...」


リュウは大仰に腕を広げ、決め台詞を吐く。だが、その瞬間、彼の股間から、大きな白鳥の頭がニョキッと飛び出した。羽をバサバサと羽ばたかせ、クックーと鳴く。まるでスワンがチャイナ服の下から脱走したような、神秘的な光景。


「あぁ、もう戻る事は出来ない」


アルナは驚きのあまり後ずさり、尻餅をつきそうになる。白鳥の頭が、彼女の方をジッと見つめ、首を傾げる。


「な、何よそれ! でも...昔のあなたの方が素敵だったのに...」


リュウは胸を張り、白鳥の頭を撫でながら、真剣な顔で宣言した。白鳥も満足げに目を細める。


「今の僕はチャイナスワンだ」


アルナの頰が、ぷくっと膨らむ。怒りと恥ずかしさが混じり、彼女は腰から変身アイテムを取り出した。それはキラキラと光る小さなペンダントで、幼い頃の思い出の品。リュウの弱点を知り尽くした、究極の武器だ。


「ば、馬鹿にしないで! あなたの本当の姿を思い出させてあげる!」


リュウの目が、ペンダントを見てサッと曇る。顔色が変わり、チャイナドレスの裾を翻して飛びかかろうとする。


「……そ、それは!?」


アルナはペンダントを高く掲げ、優しい笑みを浮かべた。懐かしい記憶が、彼女の心を温かくする。


「ふふ...懐かしいでしょ? 昔よく一緒に遊んだ、あの思い出の品よ...」


リュウの顔が青ざめ、慌てて手を伸ばす。白鳥の頭も、ビビッと反応して羽をバタつかせる。


「やめろ!! それだけは使うんじゃない!!」


アルナはアイテムを胸元で握りしめ、リュウの突進をかわす。彼女の目は、決意に満ちている。


「触らないで! このアイテムで、あなたの心を取り戻してみせるわ!」


リュウは必死に飛びつき、アイテムを使わせまいと足を絡めてくる。倉庫の床に転がり、ドタバタと格闘だ。白鳥の頭が、間違ってアルナのマントに突っ込み、クックーと抗議の鳴き声を上げる。


「やめろぉぉ!! やめるんだぁぁ!!」


アルナはリュウの腕を払い、アイテムを構える。幼馴染の弱点を、誰より知っている自信があった。


「あなたの弱点、私が一番知ってるのよ! 昔みたいに素直になって!」


リュウの目が、恐怖で潤む。チャイナドレスの肩紐がずれる。


「やめてくれぇぇ」


アルナは優しく、だが確実にアイテムを起動させた。ペンダントが光り輝き、リュウの体を包み込む。


「ごめんね...でも、これが私達の思い出の始まりなの!」

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