6話 とんだ茶番
「陛下、ダイナゴク伯爵令嬢が起こした事件についてはご存じでしょうか?」
「確かメアリー=アールルード伯爵令嬢を誘拐拉致・暴行指示容疑だったか?」
「それでダイナゴク令嬢であるエリス嬢がベリアル修道院に行くこととなったわけですが、彼女の髪の色はハニーブロンド。瞳の色は金色。まるで伝説の聖女のようです。ここ数日彼女と過ごしたのですが、彼女の罪は冤罪であったという証拠が次々と上がっています」
「まことか?彼女が聖女なのだとしたらなんとも許しがたいことだ」
「その首謀者が被害者のはずのメアリー=アールルード伯爵令嬢。メアリー嬢は個人的にエリス嬢が嫌いなようで」
「だからといってそのような事件を?」
「メアリー嬢は聖女に強く固執しているようで、容姿が伝説の聖女のようなエリス嬢に嫉妬したのでは?と。最近エリス嬢と過ごしたと申しましたが、エリス嬢が治癒をするのを目撃しました。瞳が光り、かざした手から暖かい光が出ているようで。転んだ幼子を助けるために行ったことですが、本人は全くの無自覚で。修道院に行ったことで才能が開花するというメアリー嬢の望みとは逆の結果となったのでは?と思っています」
「ふむ。それは慈悲の心だな。ただ容姿ゆえに嫌いだったが、皮肉にも修道院へと送ったせいで聖女の能力まで開花させてしまったのか」
「私はそのように思います。メアリー嬢の聖女の目的は王太子妃となる事のようですけど。私はこのような謀をするような伴侶を得たいとは思いません!」
「私も義理の娘にそのような人間は持ちたくない。というよりも王家に相応しくない。エリス嬢にはお前の本名を告げているのか?」
「まさか!偽名ですよ。職業は便利屋です」
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なんとも答えに困る物証を手に入れたので、訴訟を起こすことにした。『エリス=ダイナゴクの冤罪による名誉棄損』。
ルイが物証を集めてくれたので、かなりこちらに有利になるはず。
「開廷する」
「エリス=ダイナゴクの冤罪による名誉棄損であるが、冤罪であるという証拠はもちろんあるんだろうな?」
なぜ、アールルード伯爵が威圧的なんでしょうか?
冤罪が明らかになると娘の立場がなくなるからでしょうか?
それはこちらも同じです。
冤罪で現在、立場がないのですから。……髪も切られたし?
「証人をお呼びしてもいいでしょうか?10名ほど。予め申請していたはずです」
「却下します」
はぁ?
「では、物証をあげたいと思います。と、その前に。私が罪を犯したという証拠を見せていただきたい」
「証人をお呼びしてもいいでしょうか?」
「許可します」
なんでアールルード伯爵の言いなりなの?
「あの女からあんたの娘を襲うように指示されたんだよ」
「貴方は私の証人だったはずじゃ……また、お金渡されたの?」
アールルード伯爵は口角を挙げ、不敵な笑みを湛えた。
「物証は?物証もなく私は修道院へ護送されたのですか?」
「原告は許可なく発言しないように」
最初の方はルイ(?)が陛下に告発してるのかな?
裁判、ひどいなぁ。エリスちゃん側に発言権ないじゃん!