FAW探検! ワクワク旅行記 ~チー付与?~
「……生命の危機察知?」
「そう。命が歩む未来の内、その生命が脅かされる瞬間を曖昧に掴むことを可能にするのがその右目じゃ」
「説明を婉曲させないでくれ。いまいち理解できない」
「そう簡単に言うな。儂の見えている視界の内、人間の理解できる範疇を探っているんじゃ。ちょっち待っておれ。――えーと……」
小さく唸って考え込むと、絞り出すように言葉を紡ぐ。姿は見えないが、やはりそれは声と同様に子供らしいのだろう。
「……恐らく、生命に危険が迫っている場所を見る時に、おぬしの色覚が異常をきたすようになるとは思うんじゃが……」
「……考えた割には抽象的だな。要は、危険な場所は通常と違って見えるんだろ。赤くなったりとかで」
「おお、それじゃ! 説明が楽で助かるわい!」
確かに他人より察しが良いとは自覚しているが、当てにはして欲しくはない。肝心な時程こいつは作用しない、とんだ欠陥品だ。
「その……危機察知はいつでも発動してるのか?」
「りすくどっじんぐ?」
「この目の能力だよ。名前が無いのもなんか、締まらないだろ?」
「リスクドッジングって、大分シンプルな名付けね。人の事、あんだけ安直ってイジった癖に」
ソフィアが恨み言のように、怨念をぶつけるかの如く、そのまんま怨み言をぶつけてくる。
「仕方ないだろ、能力名は分かりやすい方が丁度いい。『未知行く者よ何を見る』とか名付けても無駄に言いづらいだけだ」
「……全然、私はそっちでも良いと思うんだけど」
「馬鹿、能力名が無骨だからこそ、右目自体の痛々しい名前がカッコよく見えるんだよ」
「右目自体の名前が決まっておらんのにか?」
「今は中二病の魂が疼かないからな。命名は思いついたらにする」
「ちゅうに……もう! 知らん言葉を大量に使うな! 分かりづらい!」
「異世界出身なんだ。許してくれ」
というか、質問に答えてもらっていないことを思い出し、再び問い直す。シンミンは首根っこを掴まれたように急に話す。
「ああ、それはおぬし自身が知らず知らずに、深層心理で管理する事柄じゃな。大体おぬしが生き物だと認識したもの全てに関する危険は予測出来るようにはなっている筈じゃ」
「効果範囲じゃなくて常時発動かどうか聞いたんだが……まあ、その感じだと後方もイエスなんだろうな。おっけ、分かった」
「ん、そうか? なら良いんじゃが……」
半分はこっちで納得したせいでシンミンは釈然としていない。ここまではっきり脳内で思考しなければ、心が読まれていないことは地味に重要だろう(俺のプライバシーの観点におき)。
「……あ、そうだ。一つ聞いても良いか?」
「何じゃ? 教えても良い範囲ならいくらでも享受するぞ?」
「なら、お前以外の神様ってどんな奴なんだ?」
ミシュが見つけた神話の通りなら、シンミンの他にも居るという五柱の神。伝承上での容姿やらなんやらは図書館で知っているが、神様の事は神様が一番馴染み深いだろうということで聞いてみた。
「彼奴らのことか……」
「仲悪いのか?」
「いや、そういう訳じゃないがのう……何せ、直接的会話をしたのは千年ぐらい前。今の彼奴らと同じ印象かどうかは分からんぞ?」
「構わない」
「そうさなあ……ヘネの事だけでも教えておくかの」
「ヘネ……エヘネメキか」
「ああ。ヘネは兎に角、姉御肌な女じゃな。頼られることを生業とし、いや、それは儂や他のも一緒ではあるが、ヘネは特に誰かの為に力を使うことを喜んでやれる奴じゃ。この点において、儂らの中でも特に神様に向いている性格なんじゃろうな」
シンミンは懐古し、記憶特有の寂れた感覚に追われながら、ジャーキーが噛み切れないように口ごもってしまった。そう思った気がした。
「だが、奴が司るは炎。儂とは違って文明が発達した今では直接支援することは難しいじゃろうて。手助けすることに飢えているかもしれんな」
「エヘネメキが俺らを助けてくれるかもしれないってことか」
「断言は出来ぬが、おぬしのような、この世界の者でなく、且つ神が干渉できる目を持っているような人間がおれば、接触はしてくるじゃろう」
「それって、今みたいな感じに脳内に聞こえてくるのか?」
「うむ」
「脳内住人がどんどん増えていく……」
しかも、五人は確定している。
「いや、儂らは入れ替わり式じゃから、頭の中に居るのは合計で二人じゃ」
「ん、そりゃどういうことだ」
もしかして、六柱の神は実は一柱で、解離性同一性障害、多重人格であるとか?
「違う。儂らは儂らじゃ。儂ら神は自らが司るものと一定のエリア内の物体にしか干渉出来ないよう約束している。神の監視を分担することで今の世界を保っているからな。じゃから、おぬしらが向かっている地方、西の地方で儂は命に影響を与えられても、こんな風に、神聖な物だからと直接会話は不可能になるんじゃ」
「成程。……なら、もう少しでお前とのトークが終わっちゃうじゃないか」
「儂との別れを惜しむ必要はない。どうせ中央に寄ればまた繋がるからのう」
「いや、便利なガイドが居なくなると思ったら少し困るなー、と」
「儂神様じゃぞ⁉︎ ちょっとした小道具みたいに扱うんじゃ……」ブチッ。「あ、切れた」
「……」
どうやら電波が届かなくなったようで、シンミンの声は囁きすら聞こえなくなった。電波じゃなくて神波かもしれないが、まあツッコむ奴が居ない今はどうでも良いだろう。
「神様との会話は終わりましたか?」
「首尾よく、完璧にな」
「……そうは聞こえなかったんだけど」




