表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

真実性のメンタリズム4

 とてつもなく長く、いつまで経っても終わる気のしないこの世で最も憂鬱な授業も、先程少し空気を読んで、ようやく終わってくれた。

 実はさっき高見が言っていたその噂とやらの事をクラスメイトに聞いて回ったのだが、皆々が口を揃えこう、言う。


「あの噂?結構有名だね。僕は信じてないけど」


「私はあんまり信じないけどー。やばいらしいね」


「ああ、聞いた事がある。どうやら、そこに行ったものは皆サンダルを落として帰って行くとか」


 そんな感じの多種多様な意見や思考を聞き出す事ができた。

 まあただ、「サンダルに関しては心霊スポットとか関係なく、お前のせいだろ。」とみんな思ったであろう。

 俺も同感だ。

 まあ、多分これだけ皆んなが高確率で知ってるって事はこの噂自体、高見が言っていた通りに、かなりこの辺りの地域の間では有名な事案んなんだろうな。謂わば、都市伝説というよりも、伝承に近しいものとなっている。

 ちなみにその幽霊の詳細についての事にも少し周りに聞いてみたが、どうやらその話によると、今からだいぶ昔昭和の末期頃に、まだその廃病院があってバリバリ現役だった頃に、ある時にある女の患者が盲腸の病気の為手術をその病院で受けていたそうだ。

 症状も軽くすぐに手術をすれば治ると医師に言われていて実際に簡単な手術であった。本来であればすぐに手術が終わる筈だった。しかし、その手術は本来なら成功するはずだったが何かの手違いか、その手術は失敗してしまったらしい。

 この話についての詳細を語ろう。


『1979年3月3日、その事件が起きた日』


 まず、その医療事故の原因の一つは担当した医師がヤブだった。

 そこでは、地域有数の名医だと謳われていた医師がなんと、ブラックジャク形式の無免許で会った事がのちに発覚する。

 しかし、その無免許医師は別にブラックジャックのようにオペが上手いわけでもなく、その知識は一般人と同等らしい。

 なぜ、そんなヤブ医者が名医だといわれたのかと言うとだな、彼は本物の医師と入れ替わったのだ。本物の医師が亡くなった頃、詐欺師であったヤブ医者がしめしめと言わんばかりに目をつけ、金欲しさに名医を偽って仕事に携わってしまった。

 衝撃だったと思うが、この事故にはもうひとつ理由があってだな、そもそもその病院自体の機械がかなりの年季もので、もういつ壊れてもおかしくない状態だったらしい。完全メンテナンス不足で、働いていた看護婦たちも薄々その事には気づいていたらしい。

 そう、聞いてわかる通り、この事故は病院による完全な管理不足であり、最早必然的な事故であったそうだ。病院側の怠惰が招いた結果だ。

 当時この事件が起きたのち、この事が世間に明るみになることにはまったくならなかった。

 何故かこの事件については地方のローカル局でしか報道されなかったそうだ。

 そして、信じられない事に、そのあとあの病院はいつも通りに運営を再開した。普通は何かしら処罰ぐらいあっても良さそうなのに何も無かった。

 しかしその後、病院のいろいろなところで、治療ミスで死んだ女の霊が化けて出るらしい。病院内を徘徊し、ベッドの下から関係者を憎む様な形相で見つめていたらしい。

 そして、その事件から暫くが経った1980年3月3日の春、そこで担当していた詐欺医師が原因不明の病で急に亡くなった。

 その詐欺医師が亡くなる前日まではなんとも無く、いつも通りだった。

 そのあとさらにそのような心霊現象が相次いで起きたため、病院は閉鎖にまで追い込まれたというわけだ。

 まあこの話、正直に言えばそれが本当ならかなり嫌な話な訳で、怖い話であるのは間違いないであろう。

 正直言って胸糞だ。

 しかし、現状の結論ではかなり聞いただけだからもはや胡散臭いとしか言えないんだけどね。

 まず、死んだのと霊が出るのとはそれはそれでまったく違う問題だ。

 化けるとしても何のためにお化けになるんだ?ずっと暇で、退屈で、誰とも話せない触ることもできない。

 どんな思いがあったとしても伝わらせることはできない。

 それって、わざわざ幽霊になる意味ないよね。

 それなら俺は天国でぬくぬくポカポカ日向ぼっこしてた方が断然良いぜ。

 これ考えたやつ小説家にでもなれるんじゃね?アイディアとしては悪くない発想だとは思う。

 推理小説とか書けると思うな。


 学校が終わった後の帰り道の途中、俺はいつもの自販機でジュースを買った。

 当たり付きのワンコイン自販機なんだけど、今まで当たったことなどは一度も無かった。

 それどころか他人が出しているところも見たこともなかった。

 しかし何と今日、今、この瞬間、ジュースが一本貰える抽選に当たった。

 当たったんだよ!!いやぁ、本当についてるぜ。

 しかもなんとな、噂によるとこの自販機当たる確率は99分の1らしい。

 いやぁ、このまましばらく何か良いこと立て続けに起こりそうだなぁ、なんて思っていた。

 さて、長いながーい帰り道を通って無事お家に帰ってきた。

 母さんに作って貰った愛たっぷりの夜飯食べて、1番にお風呂に入ってホカホカしていた所だ。

 通称バスルームin真ポカポカタイムっ!! . . . . . これが俺の家に帰ってからの、いつもとなんだ変わりのないただのルーティーン的な事だ。

 そして突然、俺は何かの拍子に、明日から始まる新放送のアニメの事を思い出した。どうやら今期の覇権候補らしいのでとても楽しみにしている。面白そうだから是非みてみたい。だからちゃんと、予約しなきゃ、という謎の使命感を持ちながら俺はテレビを速攻でつけた。

 するとこんな時間にニュースがやっていた。ニュースでは何やら物騒なことを言っていた。見るからに、どうやらこらは俺の地元の事件らしい。この航空写真はかなり見覚えのある場所だ。

 まったく、最近ここも治安がどんどん悪くなっていくぜ。割れた車でもあったのかよ。


「臨時ニュースです。高田市馬場町で今日午後6時半頃、廃墟になっていた、旧馬場病院の敷地内で、間律中央高等学校の生徒3人の遺体が見つかりました。遺体の内1人は高見さんのものと見られていますが他2人は全くの原型をとどめておらず、警察は二人の身元確認を急いでいます。現場には凶器と見られる物が次々と発見され操作は難航しているそうです。以上でニュース速報をを終わります。」


「嘘...だろ。はっ?えっ、あいつらが...そんな、なんで...」


 思わず声が出てしまう。その遺体は俺の友達。身近な奴だ。

 少し前まで会っていた友達の死を今ここでニュースで知ってしまった。

 俺はこんな事、信じたくなかった。

 これはなにかの嘘だと思いたい。

 或いは、


ーこれはきっと悪い夢だ。


 しかし、そのニュースはあまりにもそれに当てはまりすぎた。

 紛れもない完全なる事実だ。覆りようのない事実だ。

 俺は泣いた。

 久しぶりに声を上げて泣いた。もう訳わかんなかった。数時間前まで話していた友が死んだ。遺体となり、この世から去った。もう二度と戻らないと思うと悲しかった。

 それと同時に怖かった。恐ろしかった。混乱し、絶望し、悲しみ、ぐちゃぐちゃ俺は現実を忘れるためそのまま泣きながらベッドで寝た。

 現実から目を背けるにはもうそれしかない。

 もう枕は涙と鼻水でベチョベチョだ。


 日常とかって意外とふとした隙に急に壊れるものだ。それは物と一緒だ。どんだけ大切にしていてもキッカケさえあれば、すぐに粉々になってしまう。

 そして、それは2度と戻って来ない。割れた皿は2度とは元に戻らない。

 ほんと、人生で最悪な夜だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ