繰返性のシュレディンガー『収束』
【廃病院】
「やっぱり何度見ても不気味な所ね。」
「ああ、薄気味悪いのには変わりはないって事だ。」
病院は相変わらず薄暗く、気味が悪い雰囲気を感じ取れる。体感、アイツがいつも通り襲って来るのは1分半以上歩いた所であろう。
「そろそろね.....」
玲は小声でそう囁く。緊張からか、小刻みに身体が震えているのがわかる。
そして、奴が姿を現した。
「来た!?」
フードをかぶり、相変わらず顔は見えない様にしていたが沖橋だった。
そして、隙を作る事なく沖橋が俺たちに襲い掛かる。
「くそッ、どうにでもなれ!」
俺がバッドを振り回して、沖橋に当てた。沖橋はよろつきその隙にハサミを沖橋に投げつけた。しかし、残念な事にそれが当たる事は無かった。
しかし、すかさずささみやがエアガンを撃ちだす。
「あたれぇぇぇ」
しかし、暫くして乱射のせいか、弾がすぐに切れたらしい。
残る武器は、俺のバッドと高見のナイフのみ。俺はチラッと高見の方を見る。高見は汗をかき、緊迫した状態である事が伺える。
そして、また沖橋が動き出した。すると、高見は徐に叫び出す。
「やめてくれ!沖橋!!」
その瞬間、沖橋は少し動きが止まった。
そして、ボソボソと何かを呟いている。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
彼女は永遠とその言葉を呟いていた。まるで、永遠に同じ事しか言えないロボットの様だ。
コイツは一体誰に、一体何を謝っているんだ?
俺には皆目見当がつかん。
そして、沖橋は高見目掛けてタックルをかまし、高見を押し倒す感じになっていた。
そして、沖橋は持っていたナイフを天高く突き上げいつでも振り下ろせる様にしていた。
このままでは高見が刺されてまた悲劇にへと変わってしまう。かと言って俺に打開策など思い浮かびもしないんだ。情け無い。俺は見る事しか出来ないのだ。
「高見っ!!」
俺がそう叫んだ瞬間、彼女はナイフを振り下ろす動作を取った。
俺は思わずその惨劇を目の当たりにしない様に目を閉じてしまった。
迫るナイフは歪な程に鋭く尖っていて、不気味な事に光っていた。しかし、沖橋の顔は苦悶の顔へと変わっていた。まるで、自分自身の何かと戦っている様な。
そして、ナイフが僅かまで迫った所で高見が口を開いた。
「沖橋、すまなかった。」
高見がそう謝ると沖橋は振り下ろす手を直前の所で止めた。
沖橋はかなり動揺している様子であった。目の焦点は定まってなく、瞬きの数があからさまに多い。
「どうして、抵抗しないの?」
「......すまなかった」
高見は沖橋をまっすぐ見てそう言う。
「なんで謝るの?貴方は前世の記憶がないんでしょう?」
「確かに、全ての記憶があるわけでは無い。ただ、前世のバカな俺がしでかした事だ。その事実は明らか例え今世になっても変わらないだろ」
「さあ、怨みが晴れるなら殺せ」
高見は手を挙げて、かなり危ない状況になっていた。
「ま、待て高見ッ!!」
俺はそれを止めようと思ったが、玲に手を掴まれ止められた。
「ダメッ!!このまま見届けるのよ」
玲は冷静な顔で俺の事を止めた。
「だ、だが」
「アイツならうまくやってくれるはずよ」
「.....分かった。俺はお前も、高見も、仲間を、全ての人を信じる」
暫くの沈黙が続く中、動きを見せたのは沖橋であった。
「無理だよ」
「え?」
「私にはできないよぉ」
そう言うと、沖橋は大粒の涙を流した。
「怨みがあっても、前世からの仇である貴方を殺せない!!なぜなの!?」
「それはな、友達だからだ」
「とも、だち?」
「ああ、友だちだからだ」
「私は貴方をこんなにも恨んでいるのに友達だって言ってくれるの?」
「ああ、構わないさ。寧ろこっちが頭下げたい所だ。」
「な、なんで、なんで。私には分からない。私には理解出来ない。でも、なんだろう。積年の怨みが、消えた気がする。」
「......俺がいう様な事じゃ無いかも知れないけどよ、仲直りしてくれないか。俺は俺の罪を受け入れた上でだ。
「......私も本当はこんな事はしたく無かった。最初はまさか貴方が、前世の相手だとは思わなかったから」
「今更ではあるけど、言わせてもらう。」
「!?」
「前世では、すまなかった。俺が酷いことしたんだろ。」
「多分。到底誤ってもすまないだろう。気が晴れるなら殺せば良い」
沖橋は目に涙を浮かべ、首を大きく振った。
「いいわ、許すよ。寧ろ私がいけなかったんだわ。」
「そんな事もないよ。俺が全ての罪を受け入れる。」
「でも、私は周りの人達を傷つけてしまった。」
「じゃあ、君も俺と似たもの同士だ。君は君の罪を受け入れ、俺は俺の罪を受け入れる。もしかしたら、どちらも許されないかもしれない。けれども、俺たちは仲間だ。共に悩み、共に痛みを共有して、共に苦楽を乗り越える。素晴らしいと思わないから?」
高見の言葉を聞くと沖橋は少し笑った。あの時の狂気の笑顔とは違う、彼女自身の純な笑顔な気がする。
「貴方達を傷つけてごめんなさい。いや、私を信じてくれて、ありがとう」
沖橋はそう言うと高見に抱きついて、わんわん泣いている。そんなこんなで、高見と沖橋は仲直りをした。世代を超えた積年の怨念も晴らされた事だ。
そして、俺たちは無事明日を踏み出す事が出来たのだ。シュレディンガーの壁はぶち壊れ、そして二度と現れぬ事を俺は心から願うしか出来なかった。
そして、俺たちは沖橋を受け入れ、またいつも通りの日常に戻る事を誓い各々家へと帰宅した。
【その日の夜】
「なんとか済んで良かった」
「ええ、なんとか」
「それにしても、あのタイムループは積年の怨みにより、時間閉鎖が起きていたのか?」
「......」
「どうした?」
「いや、なんでもないわ。今はお互い祝福しましょう。貴方も疲れているだろうし」
「そうだな。協力してくれてありがとう。柴花」
「うん。じゃあまた明日」
「分かった。じゃあ」
電話が切れる音が私の脳を揺らしていく。それにしても、さっきから頭が痛い。偏頭痛だろうか。でも、何かを思い出しそうな、そんな感じ。脳内の処理に対して、私は何処か気持ちの悪さを感じていた。
そんな時、私は前世を思い出した。
「私を、オイテイカナイデ」
Fin